出逢い1はコチラ
出逢い2はコチラ
![カクテルグラス](https://stat.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/069.gif)
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出逢い 3
あんな感じの人、素敵だな。
最初の印象は それだけ。
私は早めの生成りのワンピース。
哲生さんは 紺色のバンダナを頭に蒔いて、紺色のシャツ、シルバーのアクセサリー、細身のジーンズ。
お洒落な人で落ち着いていてクールな印象だった。
俺様で無愛想な青ちゃんが、コドモのような笑顔で哲生さんには 話しかける。
カウンターに 同じ頃合いの年齢の 一人連れの男女が座っていて マスターの青ちゃんが紹介しないのは、訳があるんだろう。
その時はそう思っていた。
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カシスウーロンを飲みながら、ビーリバーのカウンター席で常連さんと喋っていると、また哲生さんが
戻ってきた。
今度は けんちゃんと一緒だ。
けんちゃんは
八王子ラーメンの有名店の オーナー店長。何度か 話したことがある優しい人だ。
今度は隣に座った哲生さんに、私は頃合いを見て
「はい、乾杯」
とグラスを合わせた。
「あ、愛里、お前音楽関係の仕事してた事あるんだよな。藤本さんも 音楽の仕事して、バンドでデビューしてるんだよ」と青ちゃん。
「そうなの?」と話を合わせながら実は興味ない私。
私がした音楽関係の仕事はレコード会社の演歌部門の宣伝で。
演歌歌手の方とはよくご一緒させていただいたのだが、バンド関係はあまり関係ない。
「藤本さんはさ、ビジュアル系のバンドでデビューして イカ天にも出ているんだぜ。
あ、イカ天映像みちゃう?」
ごきげんな青ちゃんが、
「いいよ、そんなの」と照れる藤本さんにかまわずに モニターに映像を映す。
『イカす!バンド天国
![!!](https://stat.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/176.gif)
なつかし過ぎる映像だ。
私が二十歳のころ。
イカ天バンドがたくさん、ヒットチャートを賑わせた。
たま、クスクス、カステラ。カステラはちがったかなぁ?
その頃は イカ天バンドか ホコ天バンド、ビジュアル系が人気だったんだよね。
「私は、KATZEが好きだったよ」と言うと、「KATZEかぁ、ライブハウスで一緒だったことあるよ」
無口な印象だった藤本さんも 音楽の話だと 少し話してくれる。
少し笑顔も見れた。
今 思うと私が覚えている哲生さんの 数少ない笑顔だ。
その日、私達は ささやかな幸せに酔いしれていた。
思い出話と 懐かしい音楽。
夜更けまで わいわいと カウンターバーで みんなで おしゃべり。
初めて出逢うひとに 気をつかいながらも 感じよく お互いの共通点を探し話題を選び
すこしずつ うちとける。
週末のビーリバー。
八王子南口の 小さな レストランバー。
無愛想なマスターの青ちゃん。
もうこの世にいない哲生さんが 一番愛した店。