尾川永次のブログ -36ページ目

尾川永次のブログ

小説、ポエム、旅日記などなど徒然なるままに行きたいと思っています

近年墓石の不法投棄が問題になってますが考えたら

何故墓は石なのか疑問が湧いてきました。

 

確かに先祖代々の墓ともなれば何百年も使用する

可能性があり、耐久性能を考慮すれば石なのだと

思います。

 

ですがリサイクルやエコを視点に考えたら別の素材が

ある気がします。

 

一昔前に金属製の墓石が出たそうですが、今は

無いみたいですね。

 

木やガラス、アクリルなど素材はいくらでもあります。

だいたい、石でなければいけない理由がどこにも無い。

しかも気が遠くなるほど高額。

有るとすれば石屋さんの要望ですかね。

 

5万~10万程度であれば交換してもいいかなと

思いますよね。

 

少子化、核家族などで墓所や苗字の存続さえも難しい

時代に簡単に変えられない石を使う理由が失われつつ

あるように思うのですがどうでしょう。

 

 

 

       春の轍⑦ 3 

                    尾川永児

 

午後八時五十分。

 井の頭公園の駅舎ドアが開き中年の駅員、皆藤が入って来た。

「ご苦労さん。今日は少し冷えるな」そう言いながらタイムカードを

レコーダーに入れた。


「ご苦労様です。昨日が暖かかったから余計感じますね。それに

 しても皆藤さんが夜勤とは珍しいですね」中井が答えた。
「来月娘の結婚式でね。休暇を申請したらこの有様だよ」と苦笑い

しながら着替える為に皆藤はロッカールームへ入った。


 五分ほどで出て来た皆藤は自分のデスクに座りながら言った。
「そういえば中村君の姿が見えないな」
「中村さんなら皆藤さんと入れ違いで休憩室で食事です」
「そうか。そう言えば券売機の横に屋台のラーメン屋が出てたな。

 今日からだったか」
「そうみたいですね。先週、定時連絡で聞いてはいたんですがすっ

 かり忘れてまして、さっき挨拶に来てやっと思い出しました」
「今時、屋台のラーメン屋とは珍しいな。俺のガキの頃は流しの

 屋台でよく食ったもんだがなー。それにしても夜の乗降客が少な

 いこの駅でラーメン屋なんてやっていけるのかな」

 皆藤が右肘をデスクに置きあごをさすりながら言うと、中井は腕

を組みのけぞりぎみに答えた。
「厳しいんじゃないですか。今はラーメン戦国時代ですからね。そこ

 いら中に美味いラーメン屋がゴロゴロありますよ。自分は吉祥寺

 なら武蔵屋か竜王かな。ま、値段にもよるんだろうけどそう長くは

 続かないんじゃないですか」
「だろうなー。インスタントでも下手なラーメン屋より美味いご時世

 だからな。ま、気が向いたら食ってやるか」
「そん時はゴチしてくださいよ」
「しっかり働いたらな。ほら、下りが来る時間だぞ」
「お、やばいやばい。じゃ、行ってきます」
 慌てて駅帽をかぶりながら立ち上がり小走りでドアに向かった

中井に皆藤が声を掛けた。
「慌てるなよ。慌てるとミスがでるぞ」
「はい。了解です」
返事をすると中井は駅舎を出て行った。

 

 

             春の轍 ⑦の2

                            尾川永児
 謙三の屋台が大通りから井の頭公園駅へと続く道へ入ると辺りは

閑静な住宅街へ様相を変えた。
 一歩一歩進むごとに車の音が遠くなり、ひんやりとした静けさの中、

カチャカチャと丼のこすれる音だけが聞こえて来る。


 京王井の頭線、井の頭公園駅。最初に屋台を置く場所はここと決

めていた。謙三の家からは中央線を挟んで反対側になるが春子の

提案だった。
 勿論、客足を考えたら吉祥寺駅に近い方がいいに決まっている。

もしくは住宅街を流すのもあるのだろう。だが、とにかく老齢の上に

素人商売だ。竜王のしげさんからも最初は赤字覚悟で少ない客数

から始めた方がいいと言われていたことも要因の一つだった。

 

 吉祥寺駅を出て三十分、漸く井の頭公園駅へ着いた。時刻は七時

半を過ぎようとしていたが既に駅前は閑散としていて終電が過ぎたか

のようである。元々狭い駅前に、辺り一帯を含めても数えられるほど

の店数。吉祥寺側の賑わいとは対照的にこの時間ともなればほとん

どの商店は店仕舞いを始めていて、駅前には数件の店とコンビニだ

けが夜の駅を彩るだけだった。


 謙三は営業申請で許可された場所へ屋台を進めた。駅の改札を右

に出てすぐ、公園入り口前のスペースが設置場所だ。


「何とかたどり着いたな」謙三はうっすら滲んだ額の汗を手の甲で拭う

と、道とスペースを隔てていたカラーコーンをどけ所定の場所に屋台を

停めた。そして腰にぶらさげた大き目のウエストポーチからメモ帳を取

り出して開いた。そこには春子が作った作業手順が事細かに書き込ま

れている。


「まずはブレーキをロックして輪留めを噛まし屋台を固定したら屋台の

 側板を持上げて庇を作り、灯りを点ける」
 謙三は不慣れな手つきで作業を始めた。
「次は…折りたたみの椅子を並べ、コンロに火を点けて茹でる為の水

 とスープを温めておく。温度は七十度に保つ…おっと、その前に水だ

 な」
 設置許可と一緒に公園内の水道使用許可も得ていた謙三は空のポ

リタンクを二つ取り出すと、公園内に在る蛇口からタンクに水を入れ屋

台に運んだ。
 そして一通り準備が出来ると駅に出向き駅員室のドアを叩いた。
 直ぐに中井という若い駅員がドアを開け顔を出した。
「どうなさいました?」
「こんばんは。今日から公園入り口横ででラーメン屋をやります鬼島と

  いいます。宜しくお願い致します」
中井は一瞬戸惑った表情を見せたが直ぐに納得した顔で答えた。
「ああ、話は聞いてます。どうも…」と中井は軽く会釈するとドアを閉

めた。
 あまり歓迎はされてないようだが、こんなものかと思いながら謙三は

屋台に戻り寸胴に水を入れ火を点けた。


(いよいよ始まるのか…)
そんな感慨深げな表情とは裏腹に緊張と不安でいっぱいだった謙三の

眼にプロパンの青い炎が揺れていた…。