じっと見つめ思案していた。
「八十八・・」と言う事は・・。
「八十八と書いて米と読む」
これは絶対に違う気がする。
「もしや、夏も近付く八十八夜。それは茶摘だ!」
などと一人ぼけ突っ込みは寒空の下、空しくなるだけなのを悟った男は
呆けるのを止め真剣に考え出した。
山内八十八ヶ所、巡拝入り口・・。
これはもしかしてかの有名なあれの事なのか。
真言密教で八十八箇所と言えばあれしかない。
そう、お遍路さんだ。
誰もが一度は考えるであろう、富士登山に四国巡礼。
「まさかそれがここに在るのか・・?」
男は半信半疑で細い道を登り始めた。
すると赤い布をまとったお地蔵さんが一体ぽつんと鎮座されている。
そして横の立札には”山内第一番、本四国札所”と書かれているではないか。
男は手を合わせると”オンかカ カビサンマエイ ソワカ”を三回繰り返して
写真を撮った。
「一番在ると言う事は二番が在るのか?」
男は半信半疑のまま誘われるように歩き出す。
すると少し離れた場所にも赤い布をまとったお地蔵さんが・・。
そこには”山内第二番”と書かれている。
「まさか、この小高い丘に八十八体のお地蔵さんが・・」
その男は見えない力に引き寄せられる様に
細い山道を登って行く。
それが自分に課せられた修行が始まったことさえ気付かぬまま。