内臓を揺さぶる太鼓の音が薄暗い不動堂に響き渡ると
奥から袈裟を着た僧侶が数人現れた。
そのうちの一人が中央に座し残りの僧侶が取り囲み
護摩修行が始まった。
真言密教の祈祷は一種独特の雰囲気がある。
他の仏教とは違い、火を囲み般若心経を合唱する辺りが
どこか呪術めいていてそれが霊験さに繋がっているように思える。
やがて祈祷も終わりに近付いて来た。
男の足が限界に来る前にどうやら終わりそうだ。
残り数分となったところでお不動様に近付き拝礼したら
もう一度座って残りのお経を聞いたら正味20分ほどの
短い修行が終わりを告げた。
男はお札所に行きお札を受け取ると曇天の外へ出た。
見上げた空からはほんの僅かだが小雨がぱらついていたが
少し寒いが傘は差さずに済みそうだ。
奥には千体地蔵や大日堂もある。
「散策するか」
男はそう呟くと地蔵尊の奥へと歩き出した。
だが、この事が更なる修行への旅路になるとは
今のこの男には知る由も無かった・・。