いや、正確に言えばその言葉が男の心を捉えたのだ。
”心願成就”
男は心が打ち震えるのを感じた。
灼熱の砂漠でギンギンに冷えたスーパードライと枝豆を見つけた様にだ!
男にためらいは無かった。
次の瞬間、厄災除去にチェックを入れようとしていた男の指は
心願成就をチェックしていた。
厄除けなどネガティブ思考の何者でもない。
前に進むことが人生なのだ!
心で叫ぶと同時に頭の中でクイーンのウィ・ウィル・ロック・ユーが流れた。
男が金を払うと無愛想な受付の男が言った。
「これから本堂で護摩修行ですのでお入り下さい」
受付の男に促されるまま男はお札所を出て本堂に入った。
薄暗い本堂には巨大な不動明王像が鎮座されていてその迫力に
嫌がおうにも厳粛な気持ちになるが―それにしても寒い―。
しかも床は薄っぺらいカーペット一枚ときている。
ここに正座は正直きついが、これが修行なのだと
男は自分に言い聞かせ直ぐに始まるであろうその時をじっと待った。