そんな気がした男はその得体のしれない何かに引き寄せられるように
不動尊参道をもくもくと歩いた。
俺の意思じゃない、そんな気さえした。
やがて大きな木造の門が見えてきた。
力強く威風堂々とした造りは近付く者を押しつぶしそうなほどだ。
これが仁王門か・・。
男は点滅を始めた横断歩道を急ぎ足で渡るとその勢いのまま
仁王門をくぐり抜け不動尊の境内に入った。
目の前には不動堂が建っている。
関東の三大不動と言われるほどのきらびやかさは無いが
むしろそれが弘法大師空海なのかもしれない・・。
そんなことを考えていた男ははたと気付いた。
今はそんなことを思案している時ではない。
男は自分の目的を思い出すと早速右手に在るお札所へ入った。
「家内安全と厄除けをお願いします」
すると愛想の無い五十前後の男が無表情に二枚の紙切れを出した。
もっともここで営業スマイルはいただけないが・・・。
「こちらに名前と金額、祈祷名を」
そこには家内安全、健康祈願、厄災除去など二十にも及ぶ項目が並んでいる。
弘法大師様が金額で差をつけるはずは無いと
男はそう自分に言い聞かせ金額と名前を書いた。
そして一枚は家内安全にチェックを入れ、
もう一枚には厄除けのチェックを入れようとした・・その時だった!
―こ、これは・・・-。
男の目がある一点に止まった。