錆びついた門扉を閉め、歩き出した処を小雨交じりの凍てつく風に
呼びとめられ男は思わず垂れ込めた灰色の空に毒づいた。
だが男は目的の地へ行かなくてはならない
一つ息を吐き出すと重たい足取りで歩き出した。
10分後、表通りに出ると寒さのせいだろうか
人影もまばらな通りは何もかもが灰色で
走り去る車の音もどこか寂しげに見える。
男は駅前のキャッシュディスペンサーでなけなしの現金を引き出し
駅のホームへと降りたがどうやら走り去った後だったようだ。
1本、2本、3本と冷たい風を引き連れて電車が通りすぎて行く度に
男は孤独感にささいなまれた。
各駅しか止まらないと分かっていても、忘れ去られた存在に感じるのだ。
やがて男の乗った電車は30分ほどで目的地の高幡不動駅に着いた。
人の往来が多いからだろう、思ったより駅前は整備されている。
そして不動尊参道と書かれた通りをすれ違う人に眼を合わる事も無く
目的地に向って男は黙々と歩いた。