たんと 5 | 尾川永次のブログ

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小説、ポエム、旅日記などなど徒然なるままに行きたいと思っています

スコットタント 5  

朝靄と静寂の中、館の扉が静かに開いた。
スコットタントはジョゼフに告げられた森へと旅をしなければならなかった。
生まれた家を、満ち足りた時を過ごした庭を、喜びに溢れた森を、
そして自分を作ってくれた博士と育ててくれたジョゼフの墓を残して。

スコットタントは澄み切った朝焼けの空を仰ぎ見た。
「この空は今日で最後になるんですね」そう呟いて顔を戻すと目の前に
半眼で口をへの字に曲げたメイルが飛んでいた。
そして見つめ合ったまま五秒後、メイルは腰に手を当てどなった。
「ボーイじゃなくて、スコットタント!。何処に行くの!?」
スコットタントは困った顔で答えた。
「メイル。怒ってる?」
「当たり前でしょ!皆に内緒でこの森を出て行こうとしてるんだから」
 
「ごめん、遠い森に行かなくちゃいけないんだ」
「遠くって何処?」
「火の山を越えた西の森だよ」
「火の山ってここからうんと、うんと、うんと遠いよ。途中には怖いドラゴンや
 悪魔もいるから行っちゃだめだよ!」
メイルの顔がだんだんと悲しみに溢れて行く。
「でもその森でしか僕は暮らせないってジョゼフさんが」
「もう戻って来ないの?」
「うん・・」
スコットタントには嘘をつく機能が無い。
聞かれたら正直に話す事しか出来なかった。
「黙って行くなんて酷いよ・・」
「ごめん」
「メイルも行く!タントと一緒に行く!」
「でもメイルは森から出たら生きてはいけないし」
「・・・・」
我慢していたメイルのつぶらな瞳から大粒の涙がこぼれ落ちていく・・。
「もう、いい!!」
メイルはやり場の無い怒りと悲しみに溢れた顔のままスコットタントの前から
消えた。
「ほんとにごめんねメイル」

酒本幸平のブログ  本文とは関係ありません。

そう呟くとスコットタントは歩き出した。
刹那さを抱えたまま西の森に向って歩き出した。

二度と戻る事の無い旅路へと・・。