漢方薬と放射能 | 皮膚科医が放射能やアトピーについて考える

皮膚科医が放射能やアトピーについて考える

金沢市の野町広小路医院で皮膚科医をしています。
何を信じればいいのかわからないこの時代に、
医師の視点から放射能汚染や皮膚科医療の問題点について考えます。

3月の原発事故のあと、私には気にかかることがあった。

それは漢方薬のことだ。

漢方薬は複数の生薬の組み合わせからなる薬剤で、さまざまな薬効をもち皮膚科ではニキビなどによく使われる。

生薬というのは天然に存在する茎、根、葉、果実、樹皮、鉱物などが原料となっており、ヨーロッパでいうハーブに相当するものだ。

多くは中国で自生、もしくは栽培されたものを使用しているが一部の生薬は日本でも栽培されている。

チェルノブイリ事故の際には日本に輸入されるハーブティーが放射能汚染されていた。



「漢方薬の放射能汚染は大丈夫なのだろうか?」

事故後すぐに私は漢方薬の大手メーカーに確認した。

当初は、「国内で生産している生薬に関しては、放射性物質の検査をして安全を確認している」との回答しか得られなかったので、

「検査をしているなら、その結果を見せてほしい」としつこく催促した。

そのせいかどうかはわからないが「現在使用している生薬は震災前のストックを使用している」と回答を得ることができた。



実際、昨年10月に日本製薬団体連合会は生薬9種類23検体で放射性セシウムが検出されたことを厚労省に報告しており、新聞やインターネット等での報道 をご存知のかたも多いだろう。

これらの報道を受け大手メーカーは現在流通しているエキス製剤が安全であること(ツムラなどの大手については、福島事故後に17都県※から産出された原料生薬は一切使用していない)を全国の医療機関に通達したのだが、どうも対応が後手に回っている。

漢方薬は乳児や妊婦にも処方するのだから、事故後すみやかに「流通している漢方薬に汚染がないこと」をはっきりとアナウンスすべきであったように思う。

漢方薬については重金属や残留農薬について厳しいチェックがなされていると聞く。放射能に関しても過去の核実験の影響も含め、検査の徹底と情報公開をメーカーには求めていきたい。


ところで、メーカーに聞くところによれば福島事故後に漢方薬の安全性に疑問をもった医師は全国でも数人しかいなかったらしい・・・

医師でもこの有様なのだから、食品メーカーや外食産業にたいして「放射能汚染に気をつけて食材を選ぶこと」を期待しても到底無理な話なのかもしれない、と感じた。

※ 17都県
原子力災害対策本部「検査計画、出荷制限等の品目・区域の設定・解除の考え方」
対象自治体
福島県、茨城県、栃木県、群馬県、千葉県、神奈川県、宮城県、岩手県、青森県、秋田県
山形県、新潟県、長野県、埼玉県、東京都、山梨県、静岡県


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