ステロイド外用剤の副作用 | 皮膚科医が放射能やアトピーについて考える

皮膚科医が放射能やアトピーについて考える

金沢市の野町広小路医院で皮膚科医をしています。
何を信じればいいのかわからないこの時代に、
医師の視点から放射能汚染や皮膚科医療の問題点について考えます。

放射能の記事ばかりなので、今回は皮膚科の記事です。

1月27日の記事の中で、ステロイド外用剤について
「長期に使用すれば副作用(薬の悪い面)が主作用(薬の良い面)を上回る場合がある」
と記しました。

私は以下のケースではステロイド剤の副作用について、できるかぎり詳しく説明をします。


・ 他院でもらったステロイド剤を長期間使用した状態で、当院を初めて受診した場合
・ 当院通院中であるが、慢性的な皮膚病があり将来的にステロイド剤を長期に使用する
  可能性がある場合


多くは口頭で説明しますが、私が自作したプリントを渡して読んでもらうこともあります。
以下はプリントの一部を抜粋(一部変更)したものです。



「ステロイドホルモンは、私たちの体内にある副腎(ふくじん)という臓器で分泌されて
いて代謝や免疫を制御することにより生命の維持に重要な役割を果たしています。
ステロイド外用薬は、このステロイドホルモンを人工的に合成して塗り薬にしたもので
皮膚の炎症を強力に抑えるため様々な皮膚病の治療に使われています。

しかし、ステロイド外用薬は非常に有効な薬である反面、長期にわたり使用すると色々な
副作用をおこすことがわかっています。


ステロイド外用薬の主な副作用には
1. 皮膚が薄くなる 
2. 皮膚のバリア機能が低下し乾燥しやすくなる
3. 毛が濃くなる
4. 皮膚の下の毛細血管が目立ってきて赤みが強くなる
5. ニキビができやすくなる
6. 塗っていた場所が白く抜けたようになる
7. ステロイド外用薬にたいしてアレルギー(かぶれ)を起こす
などがあります。

これらの副作用はステロイド外用薬を中止することによって元に戻りますが、このほかに
最も注意すべき副作用はステロイド依存症や跳ね返り現象(リバウンド現象)と呼ばれる
ものです。

 この状態になった患者さんはステロイドを塗っている間は調子が良いのですが、次第に
ステロイドが止めにくくなります。そしてステロイドを中止すると数日ですぐに症状が
ぶり返し、そのまま薬を塗らないでいると今までにないような激しいかゆみや発赤、腫れ、
ジクジクとした発疹が数か月以上続くことがあります。とくに症状が強い場合は、日常
生活を送る
ことすら困難となります。

この副作用は顔面、首、わきの下、陰部、頭部で起こりやすく、特に顔面でよくみられ
ます。また、ステロイドを長期に外用していれば体のどの部位でも
起こります。

ではステロイド外用薬を使っていれば誰でも依存症やリバウンドを起こすかというと、そう
ではありません。ステロイド外用薬を使用している患者さんの多くは、自然と薬をやめる
ことができます。それゆえにステロイド外用薬は安全であると考える医師も多く、皮膚科
専門医の間でもステロイド外用薬の危険性に対する認識には大きな違いがあります。

当院皮膚科では今までの診療経験から「ステロイド外用薬には依存性があり、使用が長期
に及ぶほど副作用の危険性が高まる」と考えているため、ステロイド外用薬をできるかぎ
り短期間に限定して使うように心がけています。

ただしアトピー性皮膚炎などの慢性病では繰り返し症状が出現するため、短期間にステロ
イドをぬるだけではかゆみや見た目が十分に良くならないことがあります。また、既にス
テロイド依存症になっていればステロイドを中止することは困難です。そのような場合、
当院ではステロイドを長期に継続して使用するかどうかは患者さん本人の意向を優先して
います。

患者さんにとって非常にむずかしい判断になると思いますが依存症やリバウンドのような
副作用の可能性があることを理解した上でステロイドを継続して使用するかを決めてくだ
さい。当院ではステロイドを使いたくないという方には漢方薬も処方していますので、い
つでもご相談下さい。

ステロイド依存やリバウンドについての認識は、あくまで当院皮膚科の考えであり全国の
皮膚科医に共通したものではないことをご了承ください。なお日本皮膚科学会はステロイ
ド外用薬に依存性やリバウンド現象があることを認めていません。」



ステロイド外用剤の長期使用とは、どれくらいの期間であるのか明確な判断基準はありま
せん。私は連続塗布か間欠塗布にかかわらず、顔面では2週間、それ以外の部位では3か月
程度だと考えています。(あくまで個人的な意見です。ただし、例えば陰嚢に1か月ステロ
イドを外用しても大丈夫だ、と言っているわけではありません。)





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