どんなに美人で気立てが良くても彼女の中身はけっこう普通

旧友から電話が来た。暗黒学生時代の友人でも前職の同僚でもなく、なんの利害関係もない大人になってからの友人である。

彼女とはとあるバーで知り合った。頭の回転が速く話も面白い美人なので、そういう女性が好きなわたしとは、ごく自然な流れで意気投合し、数年前には３日いっぺんくらいのイキオイで一緒に飲みに行っていたものだが、彼女の結婚を機にそれもなくなった。そして世間の一般的な主婦がそうであるように、彼女もまた、独身時代に近しかったわたしを含む友人たちと疎遠になり、家事に育児に忙殺されたのである。

そんな彼女は半年に一度くらい電話をかけてくる。

まぁ、主にダンナのグチだ。

出だしは大体、「ダンナが臭い」とかから始まる。「ダンナの歯にゴマが挟まってた、さっきのランチでゴマあったっけ何日前のゴマだよ」から始まる場合もあるが大抵の場合、ファースト・テーマは「ダンナが臭い」だ。

年上のダンナさんだ。わたしも一度お目にかかったことがあるが、加齢臭だって仕方ないだろって年齢で、彼女もそれを承知で結婚したはずなのだが、どうにも文字通りそれが『鼻についてきた』らしい。彼女の表現を借りると「なんか臭い」。どう臭いとかそうではなく「なんか臭い」。しかも不思議なことに彼が家から出かけた途端にその匂いも消えるらしいのだ。普通はこう、残り香とかありそうなもんであるが、ダンナが家を出ていくと同時にその匂いは０．１マイクロ秒くらいのスピードで消滅して、フローラルかなんかのかほりが漂い始めるらしい。

「アンタそれ霊的ななんかじゃないの？落ち武者の霊の腐敗臭みたいな」、と、わたしが指摘すると、彼女は同意し、最近ダンナの頭頂部がヤバイのも落ち武者の霊のシワザかもしれない。と謂う。とりあえずなんか臭い問題ならびに抜け毛問題は『落ち武者の霊のシワザ』で決着し、対策は『ファブリーズで除霊』でカタがついた。ハゲに関してはわたしはアドヴァイスできないから会話を濁しておいた。いや～よかったよかった(いいのかよ)。

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ダンナさんはとにかく小食で、彼女は人並み外れた食いしん坊なので食事の量も全然違う。彼女は料理上手で、よく自分で焼いたキッシュやアップルパイをわたしにご馳走してくれていた。わたしが男性なら跪いて求婚するくらいの女子力なのだ。しかし、その調子で料理をたくさん作ってダンナさんに食べさせたいのだが、ダンナさんは兎に角食べてくれない。折角腕によりをかけて作ってもちょっと食べてゴチソウサマ、らしい。これが彼女の一番のフラストレーションだ。

彼女の勢いは止まらない。わたしも彼女もワインを飲みながら電話口で話しているので、みるみるうちに話はエスカレートし、ダンナの下半身の愚痴にまでおよぶ。

どうも子供が産まれてからセックスが４か月に一回になって、彼女はそれを『衣替えセックス』って呼んでるらしい。その『衣替えセックス』の概念が彼女のなかで芽生えてからというものの、ダンナに抱かれるのが可笑しく可笑しくてたまらなくなって、「もう半袖ともお別れ、そして俺の愚息のふるさとサヨウナラ」みたいなダンナのセリフが脳内に沸き起こり、笑いを堪えるのに必死で快楽どころではないそうである。まぁ早漏だから吹きだす暇はないらしいが。

彼女の結論：『小食で早漏なダンナがウラヤマシイ。わたしもそうなりたい。』ま、まぁ、女的にはウラヤマシイよね。ダンナさんのソレ(笑)

まぁ、最終的にはノロケである。ったくもお。ウン。幸せそーでなにより。わたしは彼女の守護者としてそれを見届けよう。

さて、石フリマの商品を今月末につぐこんとこに送らなければならなかったので必死で作業してましたが、やっと目標金額の在庫を達成。つーかーれーたーーーーー。