PCゲーム「沙耶の唄」(R-18) | 通りすがりのブルジョワ

通りすがりのブルジョワ

グロテスク・スプラッター作品が好きでよく観ます。最近は育児について書いてます。

 
 ・・・コゥジ、グン?

 ──イタ、イノ──クルシ、ィノ──ゴノ、ガラダ、ズッド・・・

 ・・・ダズゲデ・・・





 ~沙耶の唄とは~

 悲運な交通事故で 生死の境をさまようほどの大怪我を負った
 男子大学生の匂坂郁紀(さきさか・ふみのり)。
 最先端の医療技術で 彼はかろうじて一命を取り留めたものの、
 目に映る世界のすべてが グロテスクな肉塊に見えてしまう
 おぞましい後遺症に犯されていた・・・。

 ※本記事にグロテスクな画像は載せてありませんので、ご安心ください。




<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<

●感想

※がっつりネタバレしている箇所はオッパッピー←このように見にくくしてあるので目をこらさないでください。

はじめての18禁エ/ロゲ。デビューにこれを選んだのは間違いだったと今なら思う。
ゲームを開始するとまず「グロ表現をソフトにするかどうか」を問われた。
私はグロ耐性があるほう(だと思っている)ので勿論そんな事はしない。
すると、そんなお前には容赦しないぜとでも言うように開始早々にグロテスクだった。
表示されたのは気持ち悪いよく分からないバケモノらしきスチル。
生き物の内臓っぽいもので辺り一面が埋め尽くされた背景。
不快なノイズが混じった金切り声のような人々の話し声。
・・・ここは地獄か・・・。
開始1分で「これに耐えられない奴は今すぐゲームを閉じな」と言われたような気分。
「うっ・・・予想よりずっとヘビーだ・・・」と思って後悔しかける自分。
が、慣れるとどうって事はないです。
初見はかなり精神をやられたけれど、1時間もプレイすればだいぶ慣れてきた。

登場人物を簡単に整理すると、
フミノリ・・・・主人公。医大生。一人称「僕」で落ち着いた性格。
コウジ・・・・・同大学。フミノリの友達。良い奴。
青海(オウミ)・同大学。コウジの彼女。気が強い。
瑶(ヨウ)・・・同大学。青海の友達。おっとりした女子。フミノリに告白済み。
丹波涼子・・・・事故後のフミノリの主治医。結構、物語に関わってくる人物。

上記5名と、ゲームタイトルにある沙耶という少女と、
沙耶の父親であるという奥涯雅彦(おうがい・まさひこ)が中心人物。
他に出てくるのは、フミノリ家の隣に住む仲良し親子♡3人組かな。

で、まず、すべての始まりである交通事故について・・・・。
主人公のフミノリは、数か月前に遭った交通事故(横転したタンクローリーに車ごと潰され、同乗していた両親は原形を留めない程グチャグチャになって死亡)の後遺症によって、目に映るものすべて(植物、動物(※人間含む)、建物、車、壁床などありとあらゆるもの)がまるで豚の内臓をぶちまけたような、赤黒くておどろおどろしいグロテスクな肉塊に見えてしまう知覚障害を負う。
(※人間の姿はバケモノ(内臓をたくさん巻き付けた塊のようなもの)にフミノリには見える。気になる方は勇気を出して「沙耶の唄」で画像検索してみると、すぐにヒットすると思います)
ちなみにその障害は視覚のみに留まらず、聴覚(人の話し声はおぞましいノイズに聞こえ)、嗅覚(辺りには常に腐敗臭が充満し)、味覚(とにかく何を食べてもまずい)など五感すべてに侵食しているほど重篤。
そんなフミノリは、どう考えても日常生活を送ることはできそうにない。だが、ここで本当の事(知覚障害が発症した事)を伝えれば、たちまち狂人扱いされて檻付きの病院に閉じ込められてしまうだろう。精神的に追い込まれ、何度も自害しようと考えるフミノリ・・・。

そんなフミノリの前に突如現れたのは、沙耶(さや)と名乗る少女。
その何が驚きかって、肉塊だらけの世界に生きるフミノリの前に現れた
普通の人間の姿をした少女」だったから。
なぜ、この少女は、他の人々と違って肉塊のバケモノではないのだ?
なぜ、ごく普通の「少女」として、フミノリの目には見えるのだ?
少女から腐敗臭はしないどころか良い匂いがする・・・
それに少女の声にノイズはかかっておらず、とてもクリアにフミノリの耳に届く。
グロテスクな臓物だらけの世界で出会った普通の少女。
フミノリの目には彼女はとても美しく映り、フミノリは次第に沙耶に惹かれていく。

そうだよね。私もフミノリの立場だったら沙耶を好きなると思う。
フミノリの理性を保つ最後の光って感じだもの・・・。
で、なぜフミノリの目には、沙耶が美しい少女に見えるのだろうか?
何となく分かるとは思いますが、以下盛大なネタバレ。

それは、沙耶の本当の姿がとてもグロテスクで腐敗臭漂う肉塊だから。
事故の後遺症で、フミノリの感覚は反転しちゃったような感じなのかなあと。
美しいものは醜く見え、醜いものは美しく見えると。
だから沙耶の腐敗臭=フミノリにとってはかぐわしい香りに感じられる。
よって、恐ろしくグロテスクでくっさい肉塊のバケモノの沙耶は、
フミノリからして見たら、美しくて良い匂いのする少女というわけなのだ。
(ただ残念な事に沙耶の真の姿はゲーム中に描写されない。びちゃびちゃと床を這う・・・そんな感じのバケモノらしい)

知覚障害のない、ごくごく普通の人間には、沙耶はバケモノにしか見えないわけです。
周りの人々も沙耶自身もまったく正常で、フミノリただ一人がおかしいという事。

ちなみにバケモノ沙耶は幽霊とかではなく、普通に誰の目にも認識できる(存在してる)。
だけど自分が醜いがゆえに迫害されてるのをわかってるから基本人前には出てこない。
たまたまバケモノ沙耶を見ちゃった人は大騒ぎってわけです。
それと沙耶の主食はネコとかの小動物らしい。

冷蔵庫のチルド室がトラウマ~と以前そんな噂を聞いた事があったが、
思っていたほどひどくはなかった。
チルド室より、フミノリが普段見ている世界のほうがよっぽどグロテスクで怖い。
でも、まさか人肉を食べる描写があるとは思わなかった。

「これこそ真の純愛物語」みたいな評判が一方であると聞いた。
それはそうだと思うんだけれど、フミノリも沙耶も結構自分勝手と言うか。
「僕たちの愛のために邪魔者は消す」という感じでした。
自分たち以外見えていないと言うか、僕と沙耶が幸せならそれで良いみたいな。
恋に盲目になって周りが見えなくなって暴走している感じがした。

僕と沙耶はひそかに愛し合う。それがたとえ許されない恋であっても・・・
自身の身に起きた異常を隠しながら、沙耶の存在を隠しながら、
ひそやかに愛を育み、こんなおかしな世界でも君とならば生きていける・・・
みたいな、もっと控えめなゲームかと思っていた。
しかし何と、めちゃくちゃ周りを巻き込んでいくスタイル!!
「俺たちの愛の前に立ちはだかる奴は例外なく全員コロス」くらいの意気で。
沙耶のためなら、愛のためなら、ってフミノリ。
はじめて彼女ができて舞い上がってる童t(略)みたいだな。

お友達が全員死ぬなんて思ってもいなかった。というか殺してるわけです。
そのお友達の死肉を沙耶とフミノリは食べるってそれ何てエ/ロゲ・・・?
エ/ロゲなのか? グロゲーというか、猟奇ゲーだよ。想像してたエ/ロゲと違う。
それにしてもフミノリは証拠を残しすぎ。まったく後先を考えてない。

勿論、そういうゲームなので卑猥シーンもありました・・・。
エ/ロゲをよくプレイする人に言わせれば、このゲームの卑猥シーンは少ない上に
あまり興奮するような代物ではないらしいです。
性/的/欲求を満たすためにプレイするものでは断じてないと。
卑猥な単語とか出てきたらどうしよう、と思っていたけれど大丈夫だった。
「出/して」とか「気持ち良い」とかはあるけれど、
もっと直接的な、そういうモノの名称を言うとかはなかったです。
下/半身にモザイクあり。お胸や白/い/液体は普通に描写されている。
行/為シーンは4回くらいかなあ。それらが官能的か、と言われると・・・。
全体的に、グロ>>>>越えられない壁>>>>エ/ロですよね。


<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<

●エンディング

全部で3種類。バッドエンド2つ、トゥルーエンド1つという感じ。
選択肢は2箇所しかないので簡単にすべてのエンディングを回収できた。
バリバリのネタバレを含みつつ、ざっくり(?)説明すると、

END1
沙耶の力でフミノリの脳ミソが正常に戻り、肉塊だらけの世界から脱却。
けれど自宅から大量の死体が発見されたため逮捕→精神病院に永久入院。
病院に現れた沙耶は、携帯を使って扉越しにフミノリと最後の会話をする。
(知覚障害が治った今のフミノリの目には沙耶はバケモノにしか見えない為、
「あなたの記憶の中の綺麗な沙耶のままでいさせて」的な事を言い、姿は見せない)
『わたしはパパを探しに行く。きっとパパなら沙耶を還す方法を知ってるはず』
フミノリは沙耶に『愛してる』と文字で告げ、沙耶は姿を消す。

このエンドの死亡者は青海、隣人一家くらいだったかな?
※青海&隣人一家はどのエンドでも必ず死亡しますorz

END2
フミノリと沙耶vsコウジと丹波涼子の戦い。
色々あってコウジは、フミノリ共々「沙耶」というモノを殺す事を決意する。
もはや人ではなくなった瑶を見つけ、コウジは錯乱しながら瑶を殺害。
そして対峙の末、丹波涼子は自身の命と引き換えに沙耶を葬る事に成功。
フミノリは沙耶の死に絶望し自害。
コウジの目の前に転がるのは2つの人間の死体と、2つのバケモノの死骸。
その後コウジは日常生活に戻るものの、幻聴と幻覚に苛まれていた。
生前の丹波涼子から譲り受けた一丁の拳銃だけを心の支えに、コウジは生きていく。
大切な人たちを失ってしまったこの世界で・・・。

死亡順は青海、隣人一家、瑶、沙耶、フミノリ、丹波涼子。

END3
フミノリと沙耶vsコウジの戦い。
この分岐ではコウジは丹波涼子を応援に呼ばず、単独で戦う事になるが、
不意を突かれたコウジは沙耶に殺されて喰われてしまう。
しかし、コウジを喰っていた沙耶の様子が次第におかしくなっていく。
『徴(しるし)が来たみたい。産まれるよ。沙耶とフミノリの子供が』
しばらくすると沙耶の背中からたくさんの羽のようなものが生え、
鱗粉のような細かな粒子が 世界中に散らばるように飛んでいく・・・。
『フミノリに、この惑星(ほし)を、あげます』・・・

山の上のひっそりとした隠れ家で沙耶の秘密を探っていた丹波涼子は、
久々に見晴らしの良い場所に出て、変わり果てた下の街を見下ろしていた。
人間の手として機能しなくなった右手は、3日前に切り落としたばかり。
最近彼女は、背中にむず痒いような感覚を覚えていた。
そのうち彼女もバケモノになるだろう。下の街に蠢くかつては人間だった奴らのように。
丹波涼子は孤独に街を見下ろしながら、
「バケモノになっても酒の味が分かると良いな」と考えていた。

死亡順は青海、隣人一家、瑶、コウジ、沙耶(?行方不明)
このエンドは、沙耶の鱗粉によって世界中の人々がバケモノ化してしまう。
フミノリの目には普通の人間に見えるので結構嬉しいと思う。

どなたかも言っていましたが、すべてのエンディングにおける共通項が
沙耶とフミノリの別れになっているんですよね。
死別だったり離別だったり。ずっとふたりで幸せに、とはなれないのね。
そのあたりは悲しいなあと思う。そして沙耶は一途だなあと。


<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<

●沙耶の正体は結局のところ何なのか議論

※私の妄想や憶測や勘違いを含みます。

広い宇宙のどこか(あるいは別の次元)から地球にやって来た超知的生命体。
沙耶がパパと呼ぶ奥涯雅彦は、実父という意味ではなく、
沙耶を育ててくれた・沙耶に色々な知識を教えてくれた人=パパという事。

奥涯雅彦と沙耶が、どのようにして出会ったのかは不明。
黒魔術で召喚したとか、そういう事ではないと思う。
どこかで何かのタイミングで沙耶と出会い、もともと研究者だった奥涯雅彦は
そのグロテスクなバケモノに興味を持ち・・・という感じなのかなと。

沙耶に人間の言葉や常識など、諸々の知識を教えたのは奥涯雅彦。
沙耶の学習能力や応用力、知識を求める貪欲さは凄まじいものだったらしい。
やがて奥涯雅彦は、沙耶についての研究をするうちに以下のような結論に達する。
「沙耶が属する種族の主目的は繁殖・増殖」
「好ましい生物を見つけ、そこで繁殖をしてその惑星を乗っ取る事が目的」
しかし、だとすると疑問が残る。奥涯雅彦が沙耶と共に過ごした1年あまりの間に、
目的とされるはずの「繁殖行動」を沙耶は起こさなかったのだ。その理由はいったい?
適当な人間をパートナーに選び、すぐにでも繁殖し、地球を乗っ取る事も出来ただろう。

これは奥涯雅彦の考えた仮説に過ぎないが、沙耶は人間の事を学ぶうちに
人間の「繁殖」という行動の前に起きる「恋心」という感情を知った。
まずはじめに人間は恋をし、その相手と繁殖行動を起こす。
「恋」をしなければ「繁殖」は成立しないという事。
吸収されたその知識は、いつしか沙耶の行動にまで影響を及ぼした。
沙耶が繁殖をしなかった理由は、地球で「恋をしなかった」からではないか。
まるで人間の真似事をするかのように、沙耶は誰かに「恋」をして、
そしてはじめて「繁殖」をしようと決めていたのかもしれない──。

↑こんなような憶測が奥涯雅彦の手記に書いてあったような気がする。
優しくしてくれた挙げ句「綺麗だよ」なんて言ってくれたフミノリ。
バケモノの姿をした沙耶は、みんなに気味悪がられてばかりだったから。
そんなフミノリに当たり前のように恋をして、彼との子供を産んだ。

「沙耶の唄」が流れるEND3がトゥルーエンドかなと思っているけれど、
次々とバケモノに変身する人類=沙耶とフミノリの子供、なのか?
バケモノになる胞子を撒き散らす=みんなバケモノになる=実質沙耶の子供(?)
その辺りよくわからないので各自お調べになってください。

エンディング曲も良いですよねー。
正直この作品を知ったきっかけであり、プレイしてみたいなーと思ったきっかけは歌です。
いとうかなこ氏が歌う「ガラスのくつ」「沙耶の唄」という2曲。
どちらもしっとりしたバラードという感じ。悲しい感じの。
ゲームクリア後に聴くと、歌詞がまた違ったふうに聴こえるのが良いですよね。
ゲームにおけるボーカル曲の醍醐味ですよ!
しかし「沙耶の唄」の歌詞を改めて見てみると、沙耶はただ「愛されたい」っていう、それだけな気がする・・・。


<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<

はいそんな感じで。
・約5時間で全エンディング回収できるストーリーの短さ
・視覚的にも聴覚的にも、まあまあグロテスク
それらを短所と取るか長所と取るかは、プレイヤー次第であります。
万人向けでは決してないと言える。エ/ロゲデビューには向いてないと言える。

もう1度プレイして、奥涯雅彦の手記のあたりをちゃんとじっくり読みたいな。
よく理解してないまま読み進めてしまったので(だって難しかった)。
総評は 面白く、グロく、楽しめました。
中古で1千円くらいで買えたので安いしおすすめです。18歳以上の方はぜひどうぞ。




雑な感想おしまい星