1970年代末期というと、パンク/ポスト・パンクが席捲していた頃で、
バート・ヤンシュとマーティン・ジェンキンスのこのレコードが話題に上ること
なんてなかったように思います。

ただ、私はいくらパンクな時代になろうがそれ以前から好きだった人や音楽を忘れ
られない執拗な性格でして、いわば音楽ストーカーみたいもんでしたね(笑)

バート・ヤンシュのレコードも知りうる限りはフォローしていまして、
このレコードなどもそんな中の1枚です。

元々、デンマークのみでリリースされたコペンハーゲン録音のアルバムです。
尤も、翌年の’79年にはプログレ・ファンにはお馴染みのカリスマ・レコードから
ジャケ違いでリリースされていました。

ダンドゥ・シャフトでマンドラ/フィドル/フルートを操っていたマルチ・プレイヤーマーティン・ジェンキンスとのコラボレーション・アルバムでして、あと一人、
ペンタングルの僚友、ダニー・トンプソンが参加したトリオ編成でのインスト・アルバムです。
ダンドゥ・シャフトは、英国トラッド/フォーク系に明るい方ならご存知かと思いますが、70年代初頭に活動していたコヴェントリーのバンドで、ポリー・ボルトンをフィーチャーしたキーフの朽ちたメリーゴーランド・ジャケの傑作セカンドでお馴染み(?)ではないかと。
英国3大ナンチャラとかには入れてもらえませんでしたけど、サンディー・デニーに匹敵する魅力を持ったポリー・ボルトンのヴォーカルとバンド・アンサンブルは相当なもんだと言えます。

そんなダンドゥ・シャフトの核とも言えるマーティン・ジェンキンスの演奏能力の高さは、このバート・ヤンシュとのコラボでも遺憾なく発揮されていまして、ペンタングル時代のインストパートでのインプロとはまた違った魅力があります。
ヤンシュの魅力というのは、俺が俺がと前にしゃしゃり出てギター弾きまくり等という下品なことを演らないとこが、私的には好きなところなんですけど、このアルバムでも伴奏に回ったときの彼の上手さというもんが出ていて堪んないところです。

インストだから退屈・・・なんてところは、これっぽちもなく、長尺(A面1曲)な
タイトル・トラックにしても、ついつい引き込まれてしまう魅力があります。
もちろんヤンシュの音楽ですから火花を散らすインプロビゼーションなんてもんではないですが、温か身と適度な緊張感のバランスが素晴らしいです。
バランスといえば、この三者のバランスも絶妙ですし、緊張感というのもペンタングル的な緊張感とは違います。
さしずめ小作品群といった感じのB面も、A面をコンパクトにして主張してみました
的なところがまた、よりこのアルバムの充実度を上げているようにも思います。
殊更、トラッド色を全面に出しているワケでもありませんが、
さり気に漂うトラッド感が良い味出してます。

パンクな時代に隅っこ追いやられてしまったこのレコードですが、
私的にはヤンシュのレコードの中でも屈指のアルバムだと思いますし、
また大好きな1枚でもあります。

この後この2人、80年にそろって来日し、ラフォーレでの実況盤を残してくれています。
残念ながら、私は地方に居るもんで観ることはできませんでしたけど、
この実況盤で擬似体験させてもらっています。温かさの伝わってくる良いライヴ盤です。聞くとこによると、集客はた惨憺たるものだったようですが内容は素晴らしかったそうです。
一方、その後に来日したジョン・レンボーンの方は満席、しかし内容の方は退屈だったそうです。(笑)


最後に・・・
この背高鴫を使ったジャケで思いましたけど、
ヤンシュって鳥が好だったんでしょうか?
ラストとなってしまったアルバムのジャケも黒鳥でしたし。。。



Bert Jansch & Martin Jenkins / Avocet (1978)

01. Avocet
02. Lapwing
03. Bittern
04.Kingfisher
05. Ospray
06. Kittiwake