セックスワーカーとして活動していた期間、メディアに何度か取材されました。時事ネタを扱う月刊誌だったり、女性向け風俗を卒論のテーマにしているので参考にさせてほしいという大学院生からの依頼だったり、想定外のものばかりでしたがその中でも特に印象に残っているのがレディコミ誌の潜入取材です。
ある日、普通に予約が入り指定されたホテルの部屋に着いて依頼主の方に挨拶した後、しばらく会話する時間が続きました。なぜ女性向け風俗をやる事になったのかとか、LGBTに関する事、エロの世界観、レズビアン的アプローチの事など私のパーソナリティに関するありとあらゆる細かい所まで深掘りされるインタビューみたいな感じになってそれにまず圧倒されました。
プレイに入ってからもその調子でずっとインタビューが続きました。しかし、途中で席を外される頻度が極端に多くて「もしかして取材の類かな?」とはうっすら思いました。
当時はガラケーの時代で、スマホで手軽に録音するような習慣は無くいま思えば会話の内容や見た光景を洗面所でその都度メモしていたのかもしれません。
プレイが終わって、会話の流れで実は潜入取材だったという事が発覚してしまったような感じになり、うっかり口を滑らせたライターさんはかなり狼狽していたのですが、私自身はそういうのを面白い体験として歓迎しているスタンスだと伝えると「よかったー!」とホッとされてその後はめちゃめちゃリラックスモードになり今度はライターさんの方が色んな話を聴かせてくれる事になりました。
そのライターさんは、色々な雑誌に漫画の連載をしていて主にエロ系のテーマを描いている、との事でした。
女性向け風俗ネタを扱い始めた当初は、事前に取材だという事を伝えてアポを取っていたそうなのですが場慣れしてゆくにつれて
相手の「取材対応ではない本来の姿」に出会えるのではないかと考えた末、潜入取材というスタイルになったそうです。
他で取材した時の漫画の原稿を見せてくれたり、ライター業界の厳しい事情や裏話みたいなものも聴かせてくれました。印象的だったのは、「いま描いているような作品は切り花みたいなもの。残らない」という言葉でした。いつかは後世に残るような作品を描きたい、と遠くを見つめるような表情で話していました。
私はそれ以降、そのライターさんの作品が掲載されている雑誌を時々買って読んだりしていましたが、どの作品もジャーナリズム精神に溢れた濃い内容でした。
この潜入取材は私にとって、当時の活動の様子がカタチとして残った唯一の記録でもあるので、とても大切にしています。
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