ローリング・サンダー・レビュー -7ページ目

ローリング・サンダー・レビュー

映画・音楽・小説・マンガのレビューブログ。

日本経済の底力 - 臥龍が目覚めるとき (中公新書)/戸堂 康之
¥777
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平易に書かれた産業成長論。著者の主張は実にシンプルで、「日本はすごいんだから、もっとつながったほうがいいよ。国内でも、海外とでも。」というもの。その前提から、グローバル化の進展や特区構想などが出てきている。

日本はおそらくグローバル化するだろう。しなければやっていけないという実感をたぶん我々は強く持っている。こんなにも子供の英会話スクールが流行っているのは、十数年後には相当程度英語を必要とする社会になっているに違いないという親達の実感で、この感覚が正しいか否かというよりも、こういう感覚下で育った子供達が日本をグローバル化せずにはおかないだろう。

著者の視点には常に若者があって、若者を信じている。ダメだダメだと文句ばっかり言っているオヤジどもが多い中、著者は日本の将来にまず希望を持っている。希望の持てる国にするためにはどうすればよいかを考えている。この視座こそがこの本のもっとも魅力的な部分でもある。

この本はTPP反対論者に対する反論も書かれていて、わずか数ページでズバズバ斬り捨ててしまう。紙面を割くのがもったいないというくらいの勢いで。「TPP亡国論」を間違って読んでしまった人に特にオススメ。
TPP亡国論 (集英社新書)/中野 剛志
¥798
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TPP反対論者の新書。僕はTPP賛成派だが、だからこの本を酷評するというわけではない。賛成派であるがゆえにまともな反対派の本も読んでおかねばと思って購入したのだが、こんな本ではまったく逆効果で終わってしまった。

著者はとにかく何にでも反対したいらしい。しかもその反対の仕方が基本的に「偉い経済学者もこう言っている!」というもので、きわめて幼稚。偉い経済学者の多くはTPP賛成派なんですけど・・。あと、こういう類の人がよく言うのが「本質がまったくわかっていない」。著者も頻繁に使っていますが、技術的・実務的な議論から逃げるときによく使われます。

きわめつけは文章の下手さ。アジテートするだけの品のない文章。エマニュエル・トッドとかカール・ポランニーとかが引用されていて、経済学だけをバックボーンとしていないことはよく頑張っているなあと思えるが、そんだけ本読んでてこんな文章よう書くねえ。TPP反対論に対する嫌悪感を抱かせる一冊。
動物化するポストモダン オタクから見た日本社会 (講談社現代新書)/東 浩紀
¥735
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「一般意思2.0」が面白かったので有名作も読んでおこうと思って読んでみて初めて、これを大学のときに読んでいたことに気づいた。こういうことってたまにあるよね。確かそのときは大塚英志からこっちに来たような気がするが、要は僕はわりとオタク気味で哲学にもちょっと興味アリというオタク文学青年だったので自然とその隙間を埋めるところに行き着いたという、ただそれだけのことです。

さて、本書の内容は10年前ならば新鮮だったかもしれないが、今となってはみんなが感覚として理解している話で新しさは無い。だが逆に言えば、10年前にこの感覚を的確に掴み取っていたという点であらためて哲学者としての感性の鋭さを思い知った。しかし、いくらなんでもエロゲーを哲学的に説明するのはちょっとロックすぎやしませんかねえ。
血統ビーム 名種牡馬読本 (競馬王新書 22)/亀谷 敬正
¥945
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これでレビューも400回目。
記念に血統のバイブルをレビューしよう。

この「血統ビーム名種牡馬読本」は著者が亀谷敬正氏となっているが、この本を我ら血統ファンのバイブルたらしめているのは亀谷氏の対談相手である血統研究家、栗山求氏の膨大な知識とその血統理論の語り口である。ダビスタの理論のレベルで止まっていた私は、例えば「4分の3きょうだい」などのきわめて理の適った理論に衝撃を受け、その虜になってしまった。人の目を開かせる類の、この上ない啓蒙書である。

競馬は血統のスポーツと呼ばれるが、それは競馬ファンでなければ実感として理解しえない。サラブレッドは才能だけで走るという事実に面したときに我々が感じるあの快感を。そしてその才能のうちの多くは「血」が与えるものなのだ。父が、母が、祖父が、祖母が、そしてそれらの系譜と組合せが。血統ファンは一頭の馬を見るとき、少なくともその五代前まで遡る。一代前には2頭、二代前には4頭、三代前には8頭と見ていくと数学的には五代前までには62頭の馬がいる。しかし現実にはそこには62頭の馬がいる可能性は少ない。なぜなら、サラブレッドは近親交配により進化した生き物だからだ。近親交配によって遺伝子を固めてきた歴史が、1頭の馬に凝縮されている。これがロマンでなくて何か。サラブレッドという存在そのものが、馬と人の生きた証なのだ。
ヒトはどうして死ぬのか―死の遺伝子の謎 (幻冬舎新書)/田沼 靖一
¥756
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ヒトはどうして死ぬのかを科学的に説明した本。科学的とは言いつつテーマがテーマだけにどうしても哲学的にならざるをえないはずだと思いつつ読んでいたのだが、なかなかそっちの話にならない。著者の専門分野のゲノムの話がえんえんと続く中盤はつまんないのですっ飛ばして読んでしまった。ただ、発見はある。生き物が死ぬようになったのは25億年前からの話で、生物は進化の過程で種を存続させるために「個として死ぬ」ことを選択したらしい。私達の体の細胞は老化して死んでいるのではなく、自ら死んでいる。細胞の自死。そしてそれは私達が生まれたときからすでにプログラムされている。細胞が死ぬことで私達の体は分化しているし、紫外線などで傷ついた細胞を消去している。つまるところ私たちが死ぬのは、外部環境によって傷ついた個を消去することが種にとって望ましいからに他ならない。こういう知識は面白いんだけど、一般向けにそういう要素をもっと凝縮できたように思う。
ファイブスター物語 リブート (1) LACHESIS (ニュータイプ100%コミックス)/永野 護
¥840
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1986年から始まって連載開始からもう25年経っているが、まだ12巻までしか出ていないという驚異的な遅筆を誇る漫画。この「リブート」は25周年に出された改訂版みたいなもので、僕はこっちで初めて読んだのだが、なんともまあすごい妄想力。1万年間くらいの年表がくっついていて、物語はその年表にあるイベントを追っていくのだが、物語は単純に時系列では進まず、数千年単位の時間を飛ばしてまた違う話が突然始まったり、そもそも年表の中の一イベントに1冊まるごと使ったりする。そんなとんでもない情報量の中で結局やるのはロボットバトル。ここまでやったら天晴れ。参りました。
ヒストリエ(1) (アフタヌーンKC)/岩明 均
¥560
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史実がほとんど残っていない古代ギリシアを、史実が残っていないがゆえに細部を想像力で詰めていく。ただ、それがいかにも本当らしく見えるためにはリアリティが必要で、この漫画を描くためにどれだけの資料が必要であったかを考えると気が遠くなる。1年にコミックスが1冊出され、現時点では7巻まで出ているのだが、まだ物語は始まったばかり。これをライフワークにするのだという著者の覚悟が感じられる。
ブレードランナー ファイナル・カット 製作25周年記念エディション [Blu-ray]/ハリソン・フォード,ルドガー・ハウアー,ショーン・ヤング
¥2,500
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リドリー・スコットの傑作SF。これを観てしまうと、どれこれもがブレードランナーのパクリに見えてしまう。「混沌とした汚い未来」という表現のパイオニアであるようだが、そのクオリティは半端ではない。東洋と欧米が入り混じりネオンと屋台と幾重にも折り重なる高層ビルが立ち並ぶ風景は、わかりやすい例えでは攻殻機動隊とかファイナルファンタジー7とかでも引用されているが、このオリジナルの映画ではそれを実写でかつきわめて精緻に作り上げてしまった。街に雑然と動き回るひとりひとりの服装や渋滞している一台一台の車など、その一瞬のために恐ろしい手間暇かけて舞台を作ったことが伺える。話が面白いというよりもやはりセンスが良いのだ、リドリー・スコットは。この舞台のデザインをしたのは、工業デザイナー、シド・ミード。ガンダム史上最高に格好良いヒゲのガンダム、ターンエーガンダムのデザインは彼の手によるものである。
ステキな金縛り スタンダード・エディション [DVD]/深津絵里,西田敏行,阿部寛
¥3,990
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三谷幸喜のあかんところが全開の映画。
三谷幸喜はどうやっても舞台演劇の人で、
上手く撮れれば舞台っぽさが面白い映画になるし、
下手に撮ると完全に映画ではなくなってしまう。
この映画は役者が揃ってなければまったく見所のない映画。
得意のユーモアも炸裂せず、凡庸で退屈。
ゲット・ラウド ジ・エッジ、ジミー・ペイジ、ジャック・ホワイト×ライフ×ギター [Blu-ray]/ジ・エッジ,ジミー・ペイジ,ジャック・ホワイト
¥4,980
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まったくタイプの違う3人のギタリスト、ジ・エッジ(U2)、ジミー・ペイジ(ヤードバーズ、レッド・ツェッペリン)、ジャック・ホワイト(ホワイト・ストライプス)の対談を映画にしたものだが、ドキュメンタリーを交えながらそれぞれの過去や主義に触れていることで映画として成り立っている。ジ・エッジは音をクリアにしようとし、ジミー・ペイジは音を歪ませようとし、ジャック・ホワイトは音に生々しさをのっけようとする。ジ・エッジはいかにもテクニカルなギタリストで、ジミー・ペイジはまるでバイオリン弾きで、ジャック・ホワイトは自分をギタリストだと思っていない。音の違いは態度の違いだ。しかしまあ、この映画の見所はやっぱりそんなに多くないジャック・ホワイトのギターシーンだろうと思う。すごすぎ。