ローリング・サンダー・レビュー -6ページ目

ローリング・サンダー・レビュー

映画・音楽・小説・マンガのレビューブログ。

世界史をつくった海賊 (ちくま新書)/竹田 いさみ
¥798
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16世紀イギリスの海賊達は一体何者だったのかを著者の興味の赴くままに説明する、リアル『ONE PIECE』。海賊は英雄であり略奪者であり軍隊であり商人でありスパイであり、貧しい国であったイギリスに産業革命が起こる土台を作った立役者であったという。彼らは当時の先進国であったポルトガルやスペインの船を襲い、金銀財宝奴隷を略奪し本国に持ち帰り、いわばそれを元手にしてスパイスや砂糖や茶やコーヒーの貿易を拡大させていくのだから、海賊はハイリスクハイリターンの商売をやっていた商人というイメージでよいのだろう。
たとえば、マゼランの次に世界一周をしたのは誰か?実はイギリスの海賊、フランシス・ドレークだった。しかもマゼラン自身は途中のフィリピンで死んでいるから、リーダーとして初めて世界一周から帰ってきたのはドレークが初めてで、そうなれば海賊だろうと簡単に英雄になってしまう。なんかゴールド・ロジャーみたいなかんじだけど・・。
このイギリスの海賊たちをヴェネツィアの商人たちとの比較で見るとわかりやすい。見たことのない場所に商機を求めたイギリスの海賊たちと、よく見知った地中海の間で外交能力を発揮し組織的に貿易を行ったヴェネツィア商人。逆に言えば、地中海ではヴェネツィアに勝ちようがなかったから、スペインやイギリスは新しい土地を求めざるをえなかったのだ。そして彼らはその賭けに勝った。世の中を動かすのはいつも、勇気ある者の思い切った一歩なのだろう。
海辺の光景 (新潮文庫)/安岡 章太郎
¥500
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うみべの、ではなく、かいへんの、と読む。
安岡章太郎の有名な小説。

50年くらい前の小説だが古臭さはない。
だが、泥臭さはものすごくある。
ひとつひとつの言葉がべっとりと質量をもっていて、
いまの小説と違って言葉が浮き足立っていない。

いまと過去を行ったり来たりしながら狂っていく構成は、
逆に現代風のよく出来た映画のようでもある。
狂い崩壊していく過程がどこか喜劇的なところも映画っぽい。

久しぶりにちゃんとした文学を読んだなあ。
ヒューゴの不思議な発明 [Blu-ray]/出演者不明
¥1,980
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スコセッシがはじめて作ったポピュラー映画、なのかな。まさか子供が主役の映画を撮るとは思ってもなかったが、どこか変で奇妙な作風はやはりところどころで垣間見られる。かなり抑えられてはいるが、ポピュラー映画にはなりきれない。ストーリーはとにかくとっ散らっている。焦点があっちからこっちへ次々に移っていって追いつきにくい。だがこれも、この監督の作風といえば作風。ニューシネマ・パラダイスやエド・ウッドと同じで、映画に対する愛に満ち溢れた映画。世界で初めての映画で、電車を避ける観客たち。3Dという最新の技術で古い映画を見せることは、映画そのものが驚きであることを思い起こさせる。
J・エドガー Blu-ray & DVDセット(初回限定生産)/レオナルド・ディカプリオ,ナオミ・ワッツ,アーミー・ハマー
¥3,980
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クリント・イーストウッドの最新作はかなり力が入っている。FBI初代長官J・エドガー・フーバーという日本人には馴染みのない人物を主人公にしてアメリカの歴史を裏側から眺める映画かと思って観てみると違う。もちろんその要素もあるのだがむしろ、J・エドガー・フーバー自身にアメリカの闇を詰め込んでいる。マザコンかつゲイかつ吃音症かつ窃視症かつ極右かつ嘘つきのJ・エドガーは声の大きさで歴代の大統領たちを脅してきた。自由で平和な社会を守るという大義名分のもとで盗聴もするし無許可で銃も持つ。クリント・イーストウッドはいかにもアメリカ人らしいアメリカ人として、このJ・エドガー・フーバーを主役にしたのだろう。毒はたっぷり入っている。それにしても、クリント・イーストウッドの映画はいつも、どうやって面白さを語ればよいかがわからない。映画でしか説明できないことを撮っているのだ。だから観たあとにズッシリ腹に残る。こういうのを良い映画というんだろう。
ドリフターズ 1巻 (ヤングキングコミックス)/平野 耕太
¥590
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描きたくてしょうがないという思いが画面からほとばしる。非常に熱い漫画である。実在の歴史上の人物とエルフなどのファンタジーがごちゃ混ぜになる感覚は確かに新しい。これは意外に誰もやっていなかった気がする。めちゃめちゃ売れてるみたいで本屋でよく平積みされているが、僕はエルフだのドワーフだののファンタジーが苦手でそこのところでどうしても引っかかる。レベルの高い漫画だとは思うので★4でも良かったが、個人的な好みで★3としている。僕が好きなファンタジーはこういうファイナルファンタジーの型どおりのもんではなく、もっと日常的な不思議さだ。

森薫拾遺集 (ビームコミックス)/森薫
¥651
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森薫の絵の素晴らしさは洗練されて出来たものだということがわかる一冊。描いた時代によって画はどんどん立体感をもっていくし、目はより強い眼光を宿していく。方向性は「もやしもん」の石川雅之に似ている。いま、一番魅力的な画を描く漫画家のひとりだろう。

このコミックスはおまけをまとめたような本でファン以外は買ってはならない。そもそもこういう本が出てしまうこと自体が森薫の画の魅力を実証している。メガネの短編は出色の出来だが全体的にはあくまでおまけなので、★2つとした。
ジョージ・ハリスン/リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド [DVD]/ジョージ・ハリスン,エリック・クラプトン,ポール・マッカートニー
¥4,935
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マーティン・スコセッシ(スコーセージが実は正しい発音)監督のロック・ドキュメンタリー。ボブ・ディランの「ノー・ディレクション・ホーム」に次ぐ2作目、かな。

さーて、ジョージ・ハリスン。僕がビートルズの中で人間として一番好きなのは断然ジョージです。縁の下の力持ちというか。目立たないところで良い仕事する人、あこがれますよねえ。ジョージのソロアルバムはジョンとポールのソロよりも好きで、「オールシング・マスト・パス」なんかは好きすぎて自分の結婚式でもかけたし、「クラウド・ナイン」も思い出があって好き、トラヴェリング・ウィルベリーズはディランと一緒にやっててたまらん、というふうにソロになってから地味だけど良いものを作っていたのです。音楽ファン以外にはあんまり知られていない気がするけど。

このリヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールドは、スコセッシの巧さと映像のレアさで、ドキュメンタリーというかやはり映画になってしまっている。面白いです。正確にはビートルズ時代をテーマにしたパート1は非常に面白い。ソロ時代のパート2はほとんど宗教の話になってきてあれあれあれどこいっちゃうのってかんじでなんだか眠くなる。

ディランの「ノー・ディレクション・ホーム」に比べると劣るが、それでもビートルズファンなら観る価値は充分にある。ポップミュージックの歴史にまた良い映画が1作。
TPP参加という決断/渡邊 頼純
¥1,000
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実務家が書くTPP論。
著者は日本・メキシコEPAで主席交渉官を務めた人らしい。
この本を読めばそれも納得で、筆致は実務家のそれである。
要は観念論ではないのだ。妄想ではなく現実がある。

はじめに、には下記のように書かれている。
「さて、TPPに関する本を世に問いたいと思ったのは、TPPについてあまりにも誤解や間違った情報が多いと思ったからである。TPPがデフレを加速するとか、低賃金の労働者が押し寄せてくるとか、果てはTPPがアメリカの謀略であるといった類の根も葉もない言説が飛び交っている。」

何もわかっとらん奴がキャンキャンアホなことわめくな!
と言わんばかりの著者の説明にはヒリヒリする現実感がある。
本の冒頭に「TPPについてよく尋ねられる22の質問」があり、
この50ページを読めば、この本はもう充分と言ってよい。
残りはもっと知りたい人だけ読めばいい。

TPPについては上記のほかに農業問題などがよく取り沙汰される。
あのねえ、日本の農業の危なさはそこにはないんじゃないの。
放っておいても衰退していってるんじゃないか。
米の関税は777%らしい。何やってんだか。

日本の米が最強だということを僕は中国に行って学んだ。
白ご飯がまずくて食べられないという経験ははじめてだった。
絶対、これから中国人は日本の米を欲しがる。
それだけの人と金が奴らにはある。

TPPの議論を読んでいて思うのは、
賛成派の筋道は一貫しているのに対して、
反対派の人たちが言ってることはバラバラだということ。
大勢は決した。あとはちゃんと交渉することですね。
ブラック・ジャック創作秘話~手塚治虫の仕事場から~ (少年チャンピオン・コミックス・エクストラ)/著者不明
¥680
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「この漫画がすごい」の1位の漫画。
秋田書店はいつまでブラックジャックにすがるのか。

漫画家手塚治虫の仕事っぷりのドキュメンタリーで、
今まであまり語られてこなかった部分が描かれている。
こんな汗だくの手塚治虫は確かにイメージにない。
まあ面白いんだけど、これがそんなにすごいかあ?
だが「この漫画がすごい」で選ばれる漫画には、
ぼくは大抵そういう感想を抱くのである意味一貫している。
ヒア アフター ブルーレイ&DVDセット(2枚組)【初回限定生産】 [Blu-ray]/マット・デイモン,セシル・ド・フランス,ブライス・ダラス・ハワード
¥3,980
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はっはっは、なんだこりゃ。
クリント・イーストウッドが、そういえばたまに
ちょっとアホっぽい映画を撮ることを思い出した。

この映画は公開された直後に上映自粛した。
映画の冒頭には津波のシーンがあり、
妙なことに公開直後に東日本大震災が起きたからだ。
そんな自粛するほどのことかいな、と思っていたら違った。
この津波のシーンは確かに自粛ものだ。リアルすぎる。
ニュースのあの凄まじい映像を観たあとで、
冷静にこのあまりにもリアルな津波シーンを見ることはできない。

まあ、津波のはなしは初めだけなので置いておいて。
そんなことよりも問題は、この映画の奇妙なユーモア。
主人公の内気なマット・デイモンが出会いを求めて
料理教室に行っちゃったりしていちゃいちゃしちゃったりして
ここだけ観れば爆笑モノなのだが、
全体としては人が死んだりするシリアスな話なので、
このギャグシーンがかなり浮いてしまっている。

まあ、クリント・イーストウッドとしては失敗作だろう。