ローリング・サンダー・レビュー -5ページ目

ローリング・サンダー・レビュー

映画・音楽・小説・マンガのレビューブログ。

宇宙は本当にひとつなのか―最新宇宙論入門 (ブルーバックス)/講談社
¥861
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宇宙の姿を観測していくと、宇宙がたくさんあるか、次元がたくさんあるか、どちらかでないとうまく説明できないらしい。超ひも理論が正しいとすれば10次元ないとあかんとか、現実はほっといて理論が疾走してしまうかんじがかっちょいい。ここまでくるともう哲学、と著者本人も言っているが、哲学は常に科学に影響されている。えらい先生がわからないことをわからない、謎だ、と言い切ってしまうのは読んでいてすがすがしい。
天地明察(上) (角川文庫)/角川書店(角川グループパブリッシング)
¥580
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久しぶりにあらゆる時間を削って一気読みした。面白い。

主人公は渋川春海という江戸時代の碁打ち。だが彼がやるのは碁ではなく、数学と天文学を駆使して暦をつくるという仕事。史実である。面白そうな設定だなと思って本を手にとったが、設定以上に物語のちからに吸い込まれてしまった。

著者はライトノベル出身らしく、江戸時代の話だが時代劇らしい様子はなく、登場人物たちがわかりやすい現代語を話していたりする。このあたりの読みやすさはさすが。ただ時代背景などが軽んじられているわけでは決してない。重いものをポップにするのはライトノベルのひとつの機能だ。

のめりこむ青春。負ける青春。悔やむ青春。夢みる青春。暗く、情けなく、そして栄光に満ちた青春を描く、きわめてポップな傑作。
ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学 (中公新書)/中央公論社
¥714
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『ゾウもネズミもネコも、心臓は20億回打って止まる。』

一生で心臓が打つ回数は同じだが、打つリズムが違うから寿命が違う。小さい動物はリズムが速く、大きい動物はリズムが遅い。心臓の鼓動のリズムが違うということは、その動物にとっての時間が違うということだ、と著者はまえがきでこう述べる。こういう新書で面白い本はまえがきで大体わかってしまう。

この本では、生物がなぜそのサイズを(あるいはそのかたちを)とったのか、という根源を問う。たとえば、著者は「なぜ車輪動物がいないのか?」というすさまじい問いを行ったりする。生物の設計の理由を突き詰める著者の姿勢はまるで、自然のデザイナーである神の頭の中をのぞきこむようだ。科学者とはみなそうなのかもしれない。

さよなら、愛しい人 (ハヤカワ・ミステリ文庫)/早川書房
¥1,000
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信頼の村上春樹訳。文章が読みやすいし、何より良い原著を選んでいる。売れっ子作家の特権か。

まず初めに言ってしまうと、『さよなら、愛しい人』は『ロング・グッドバイ』にはるかに及ばない。若干中だるみがあったりして、傑作だけが持ちえる緊張感はない。それでもまあ、面白い。マーロウがかっちょいいですよね。かっこつけなのに情けないというのはロックンローラーの姿に近いものがある。挑発してボコボコに殴られたり、敵地に乗り込むときにビビってたり、それでいてタフな男がどうだのと説教してみたり、なんとも情けない。これが共感せずにいられるか。男が見たいのは、ダメな男の情けない姿なのだ。
ブランダーバス/SMJ
¥2,520
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待ちに待ったジャック・ホワイトの初ソロアルバム。

ソロになって自由にギターをギャリギャリ鳴らしてるのかと思えば、ジャック・ホワイトが全然ギターを弾いてない。あ、そっち行っちゃったかー、そりゃそうだよなあ、と後で納得。もともとジャック・ホワイトはギターに対する執着が弱く、たくさんある楽器のひとつくらいにしか考えていないと言えば言い過ぎだが、バンドのギタリストほどギターにアイデンティティを託していない。The Dead Weatherではドラマーとして参加しているし、ホワイト・ストライプスでも後期はマリンバを演奏したりギターから離れていった。

ソロだとバンド形式にこだわらなくてよいから、曲によって自由にやってしまえる。確かにジャックほど引き出しの多い音楽家がソロでギターにこだわるわけがない。だから、今回のアルバムはかなりとっちらかっている。もちろん全編ブルーズであることに変わりないが、古い曲もあるし実験的な曲もポップな曲もあって一概に言えない。統一感はないが、一曲一曲のレベルは高い。少なくともラカンターズのファーストやGet Behind Me Satan より良い出来。ありがたい。

アーティスト コレクターズ・エディション [DVD]/ジャン・デュジャルダン,ベレニス・ベジョ,ジョン・グッドマン
¥4,935
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話題の無声映画。アカデミー賞作品賞受賞作品。

サイレントの良さを再認識したなどという広告宣伝がうたれているが、僕は逆に映画はやっぱり音があったほうが良いと痛感した。この映画のうまいところはこの時代にサイレントであることを売りにしたことで、はっきり言ってこの映画、サイレントでなければごくごく普通のメロドラマにすぎない。★3つをつけたのは、犬の演技のうまさに対してである。

ヒューゴもそうだったが映画の意味を問い直す作品が多い。問い直してくれて構わないが、一般人は映画人ほど映画の意味には興味がないという事実を作り手はわきまえておくべきだろう。
夜間飛行 (光文社古典新訳文庫)/光文社
¥560
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光文社古典新訳文庫にはかなりお世話になっています。もうなんでも新訳しちゃってほしい。この『夜間飛行』なんて新潮文庫版だといまだに堀口大學訳という古典っぷり(ちなみにカバー絵は確か宮崎駿)。あれはあれでいいのかもしれないけど、僕は素直に最近の文章のほうが読み易くて良いです。

『夜間飛行』はこの歳になって初めて読みましたが、凄いっすわ。この心細さ。この不安感。この人間くささ。この美しさ。僕の上司はこう言っていました。「僕は『夜間飛行』とジョン・レノンの詩だけはあかんねん。あまりにも自分の中に入ってきすぎて、もう読んでられなくなんねん」。言っている意味、僕もわかりましたわ。
ペーパー・ムーン スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]/ライアン・オニール,テイタム・オニール,マデリン・カーン
¥1,500
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名作。8年ぶりくらいに見る。

この映画の素晴らしいところは、いったい何が良いのかをうまく説明できないところだと思う。良い映画ってのはそういうもんだと、僕はむかし大学の芸術学の先生から学んだ。

この映画では登場人物はよくしゃべる。が、本当のことは言わない。たとえばラブストーリーを撮るにしても「愛してる」というセリフを登場人物に言わせてしまったらその映画はもうほとんど終わりで、思いは画面に映っていないからこそ映画を見た者の心に響く。本心は絶対に言っちゃだめという映画の基本は、この映画を見ればその効果が実によくわかる。うーん、なんだかまた話がそれてきた。

わかりあうことの喜び。やっぱり一言で言うならこれかなあ。
生命保険の「罠」 (講談社+α新書)/後田 亨
¥840
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いかに我々が生保にぼったくられているか。
それをやや感情的に、そして生々しく告発した本。
月々1万円以上の保険料を払っている人や、
自分が入っている保険を自分で説明できない人は、
過剰な保険が入っていないかをまず確認したほうがいい。
保険屋は平気で我々をだましてくる。
この本は保険屋にまずこう問うことを薦める。
「で、あなたは何の保険に入っているんですか?」
かいしんのいちげき。
新装版 茄子 下 (アフタヌーンKC)/黒田 硫黄
¥700
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黒田硫黄の『茄子』を今更初めて読む。面白いですねえ。漫画好き以外にはまったく薦めないけど。しかしまた漫画オタクにはこのわかりにくさがいいんでしょうな。この漫画で初めて黒田硫黄を読んだので作家がどうだということは言えないけど、なんともパーソナルで良い意味でベタッとした漫画だと思った。言葉がいちいち実感を伴っているのだ。ロックで言うとアメリカ南部のブルースというか。わかんないか。特に「ランチボックス」という短編はそのベタッとしたブルース感覚とくるりがよくテーマにするような人間関係の淡白さの現代感覚が見事にマッチした稀に見る傑作。