ローリング・サンダー・レビュー

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「騎士団長殺し」という新作のタイトルを初めて聞いたときに思ったのは、村上春樹はカラマーゾフの兄弟の「続編」(ドストエフスキーの死により結局書かれなかったもの)を書こうとしているのではないか、これはエッジのきいた新作が期待できるのでは、と思ったけど、結局読んでみたらいつもの謎をばらまくエンタメ純文学の村上春樹でした。 

カラマーゾフの兄弟の続編を書こうとしたのではないかという推測はたぶん当たっていたと思っていて、カラマーゾフの兄弟の続編はアリョーシャが皇帝暗殺未遂事件(=父殺しは皇帝暗殺のメタファー)を起こすことになっていたというのが通説ですが、本作「騎士団長殺し」では皇帝暗殺未遂というテーマがそのまま出てくるし、騎士団長は殺されるときになぜか急にこんなことを言います。 

「諸君は今ここで邪悪なる父を殺すのだ。邪悪なる父を殺し、その血を大地に吸わせるのだ」 

それまで父というワードは一切出ていなかったにもかかわらず、急に「邪悪なる父」、さらに「その血を大地に吸わせるのだ」。なんかここだけ妙にロシア文学風になるのです。(ロシア文学は「大地」とか好きですよね) 

といっても、作品全体からはカラマーゾフの兄弟のにおいはせず、「1Q84」に「1984年」のにおいがしなかったのと同じで、キーワードを拝借して独自にイメージを膨らませて作品を書いたのだろうと勝手に思ってます。

 

 

世の中の見えないところで世の中に出て来ない人たちが何をやっているのかをえぐりながらエンターテイメントにしてしまうすごさがあって、出てくる地名のマイナーさがその固有名詞ひとつでもってリアリティを演出するとともに世の中の裏側感をかもしだすそのセンスが抜群。ほんまにこんなやつらおんのかいという話はどうでもよくて、誰も見ようとしないものを切り取ってかつそれを面白おかしい読み物に仕立て上げる著者の取材力と構成力に脱帽。

 

小説なのだと思い込んでいてずっと敬遠していたのですが、実際には数学の歴史ドキュメンタリーで事実は小説よりも面白いもので、数学者たちが人生を投げ打って何をしようとしてきたかをざあっと書いてくれていて大変面白かった。ただこれを読んで何か残るかというと心に槍が刺さるような衝撃もなかったので星4とした。

 

 

良書。福島をめぐるデマ瞬殺。一瞬で読めるしみんな読むべきだと思ったけど、問題はほとんどの人はこの本を読まないだろうということ。特に福島原発事故の問題に興味のない人は。この本をできるだけ多くの人が読むためには何が必要なのか、誰がどうすればいいのか。とりあえず、星5つでオススメすることにした。

 

 

細々した文章を集めた本だけど、読んでみたらやっぱり村上春樹はいちいちおもしろいなあと。たとえば黒川博行みたいな生々しくてデコボコでざらりとした文体と真逆の、いかにも生々しくない宙に浮いたような文体で、その皮膚感覚のなさは読みやすさを生むけど、語られていることの深さが文体を支えるというか、難しいことをさらりと語って結局わからんけどなんか残る、というかんじは小説でもエッセイでも同じ。この本を読むとアンダーグラウンドを読まずにはおれなくなって、重そうだから今まで避けてたけどいま読んでます。

 

 

アメリカの狗、竹中平蔵の暗躍を描くノンフィクションで、とにかく著者の広範かつ緻密な取材力に舌を巻く。大宅壮一ノンフィクション賞と新潮ドキュメント賞をダブル受賞したのは伊達ではない。私はこの本を読んで自分の無知を恥じた。本書にあるように、竹中平蔵のデビュー論文は剽窃論文である。彼は「経済学者」でもなんでもなかったのだ。現在もパソナ会長として非正規雇用を日本中に広める活動を継続中。そんな奴が経済学者を名乗ってもらっては困る。

 

 

東芝の「底なしの闇」を引きずり出してくれるわけではなく、 
「ほんま底なしでなんにも見えねえ」と書いてるだけ。 
東芝事件の経緯を詳しくまとめてくれてはいるけど。 
文藝春秋がリークしたような、トーマツコンサルと東芝との泥々の関係や、 
そのお仲間のトーマツが第三者委員会の調査補助者になっていることなど、 
今まさに闇が少しずつ引きずり出されている今となってはあまり読む価値はない。 
ただ、タイトルを「不適切会計」ではなく「不正会計」としたのは評価できる。

 

 

その方面でのベストセラーとのことで読んでみた。なぜ私たちは「終戦」と言い「敗戦」と言わないのかは私が高校生の頃からのひとつの疑問であったが、その疑問の周辺を議論がグルグルと怒り狂いながら回ってくれるので、好きな人は好きだろう。とにかく悪口の勢いがすごすぎて、かなり笑えた。 

『実に、この国の経済界を代表する人物は、建屋が吹き飛ぶ爆発が次々と生じているのを目にしながら、「千年に一度の津波に耐えているのは素晴らしいこと。原子力行政はもっと胸を張るべきだ」と言ったのである。それはあたかも、「愚かさ」という観念が物資に結晶し生命を得て物を言っているかのごとき光景であっ

 

 

会社を辞めて何しよっかなーと少し不安に思っていたときに読んだ本で、僕は別に独立する気はさらさらなかったんだけど、この本には頭をガツンとやられた。リスクを分散して、コンサルを入れて標準化して、新規分野に追随して、というのはアホがやることだとピーターティールは言っている。あ、それオレのことだ、と思わないうぬぼれ家にはこの本は必要無い。平均的、分散的、追随的な今までの仕事人生を完全否定されてショックを受けることにこそ、この本の価値がある。

 

 

3年くらい前に読んだものだけど、一応。最近、イアン・ブレマーがますますよく出てくるようになったし・・。米中が強いか弱いか、対立するか強調するかの四象限でこの先の世界の予測をざくっとやってしまったあたりが面白く、頭いい人ってこういうシンプルな切り方するよねーとあらためて思った記憶がある。