ローリング・サンダー・レビュー -2ページ目

ローリング・サンダー・レビュー

映画・音楽・小説・マンガのレビューブログ。

 

死んでいない者死んでいない者
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日経新聞の批評文があまりにも秀逸だったので、買って読んでみた。 

・日経新聞の批評のリンク先 
http://style.nikkei.com/article/DGXKZO98084730V00C16A3MY6001

最近はビジネス書ばかりを読んでいるサラリーマンにとって芥川賞作品を読むのは本当に久々で、もう「なつかしいー」に尽きる。視点をグラグラと揺らしコロコロと変えていくことで、話している言葉なのか誰かの頭の中の考えなのか会話文なのか地の文なのかもわからなくなって、その言葉から属性がどんどん消えていって、単純な「言葉だけ」を蒸留して最後に残ったその「言葉」がどんなものかを味わうといういかにも文學的な実験に、久々に文学少年の心が少しウキウキしました。 
タイトルは秀逸で、日経の批評にあるように、みんな実は「ただ死んでないだけ」なのだという解釈をするのが適切だろう。ジャック・クリスピンいわく、「死んでるみたいに生きたくない」。村上春樹いわく、「死は生の対極としてではなく、その一部として存在している」。ああ、なつかしい。

 

 

神山健治監督作品。一般的にウケが悪いというか、酷評とまではいかないが低く評価されることが多いんだけど、僕はけっこう好きだった。3Dっぽいアニメなので気持ち悪かったのもあるかしれないけど、僕は3Dはたいていなんでも好きなので飛行機から飛び降りるシーンの出来の良さだけでも嬉しくなってしまう。ストーリーも神山健治のいつもの小難しいやつでちょっと鬱陶しいと思った人も多かったのかもしれないけど、石ノ森章太郎の009の原作自体がけっこう小難しいですから。わりと原作の小難しさに忠実やと思いますよ。そういう意味で、相性よかったと思うんだけどなあ。

 

 

2回見ましたが、2回とも面白かった。これは傑作。 
フランス映画ってつまらん映画のときは1回目を見切ることも難しいけど、面白い映画の場合は何度見ても面白いものが多い。この映画もふたりのやりとりを見てるだけで幸せになれる。そこに映っていないものを映すのが映画の醍醐味だとよく言われるけど、これはまさにそういう映画。

 

 

映画館で観てよかった映画。DVDだと価値半減。完全に「2001年宇宙の旅」のオマージュなのだが、その宇宙描写の出来は凄まじかった。誰か忘れたけど超有名な宇宙物理学者が監修してたはずで、ブラックホールの描写だけでもうおおおとまさに引き込まれてしまう。クリストファー・ノーランはまったく意識していないと思うけど、重力で浦島太郎現象が起きてしまって自分が世界に置いていかれるストーリーは日本のアニメファンからすれば完全に「トップをねらえ!」と同じテーマであって、ああ、やっぱ日本のアニメってすげえわとしみじみ思いました。

 

 

時をかける少女以前からの細田守ファンだったので、ものすごく貴重な休日の時間を使って映画館で観てガッカリしたのを覚えている。前作のおおかみこどもの頃からジブリ化が目立ち始めていて、個人的には前作のジブリっぽさは悪くないジブリっぽさだと思ったが、こっちのは明らかに悪いほうのジブリだった。厳しい言い方をすれば千と千尋の出来損ない。

 

 

これは「エピソード7」ではなくて、「エピソード4s」と言ったほうがいい。 
旧3部作への愛はわかるが、スターウォーズなら何か新しいものを見せてほしかった。 
全体的にエッジが欠けてて、やっぱディズニー映画やなあ、というかんじ。 
主演のデイジー・リドリーは雰囲気があってすごく良かったけど。

 

 

経済学の宇宙経済学の宇宙
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やはり前半が面白い。一人の経済学者の、暗くしかし栄光に満ちた青春時代をその研究成果の説明とともになぞっていくだけでも、青春小説を読んだかのような面白さがある。岩井克人は大学生の時に好きで読んでいたが、それは岩井克人がいつまでたっても「青臭い」からだということに、あらためて気がついた。経済成長理論を難しい数式で解いていたような人が、その後、「貨幣とは何ぞや」というあまりにも本質的な問いをし始めてしまうところが、岩井克人が経済学会的に「没落」した理由なのだろうし、いまだに世の大学生や私を含む青臭い大人たちを魅了し続けている理由なのだろう。週刊ダイヤモンドベスト経済書2015年第2位を獲得したことが、個人的にはうれしかった。

 

競馬漂流記競馬漂流記
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「遂に、競馬で文学する」と帯にある。しかり。 
この文章をエッセイと呼ぶには、文章のレベルが高すぎる。 

もともと、競馬と文学は相性が良い。 
いや、競馬そのものが文学的だと言ってもよい。 
人の思いを乗せて、生命を賭けて走る馬の姿が文学的でなくて何か。 
これまで競馬エッセイでは山本一生の『書斎の競馬学』が最強だった。 
高橋源一郎の書いた競馬モノは初めて読んだけど、こりゃあすげえわ。 
寺山修司のべたっとした文学ではない、海外小説のような文学。 
まあ、単純に海外に行きまくったネタだからかもしれないけど。 
競馬文学の歴史に残る作品でしょう。

 

 

マンUマンU
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マンチェスター・ユナイテッドの解説書だが、 
ユナイテッド・ファンだけが読むのはもったいない。 
本書はユナイテッドの歴史の謎をとくミステリーであり、 
ユナイテッドの世界に対する「反逆」の物語でもある。 

「ミュンヘンの悲劇」を紐解くことから本書は始まる。 
ユナイテッドが、単なるフットボールクラブでなくなった瞬間。 
「ミュンヘン」の生き残り、ボビー・チャールトンは述べている。 

『ミュンヘン以前のユナイテッドはマンチェスターのクラブだった。ミュンヘン以後、誰もがその一部を共有しているような気がするようになった』 

事故によってプレーヤーが失われたことに対する同情。 
だがそれよりも、その状況にユナイテッドが抗ったこと。 
ユナイテッド、つまり「団結すること」。 
マンチェスター・ユナイテッドという物語には、 
喪失の悲しみも、不条理への怒りも、団結と勝利の喜びも、すべてがある。

 

 

プレミアリーグの入門書として読んだが、実に適切だった。 
イングランドのサッカーの歴史を新書一冊でまとめ、 
フットボールの背後にある文化と思想を感じることができる。 
たとえば著者は次のように断言する。 

「日本という国に生まれ育ち、ごく普通に義務教育路線に乗って成長する根っからの日本人が、伝統的な欧州クラブの真の意味でのサポーターになれるとはとても思えない。そういわれて気を悪くする人がいたら、こう問いかけよう。『あなたのお父さん、おじいさんはそのクラブのファンですか?』」 

著者はこの言葉を、当然ながら自分自身にも問いかけているのである。 
なかなかシビれる文章じゃあないかと。 
ヨーロッパでなぜサッカーが人気なのか、ずっとわからなかったが、 
この文章を読んでなんとなくわかったような気がした。 
フットボールクラブは、町であり家族であり自分自身であるのだと。 
そう思えるような歴史と文化が、ヨーロッパにはあるのだろう。