電子音ばかりが取り沙汰され、今乗りに乗っているWARPレーベル系の音楽、特にエイフェックス・ツインからの影響ばかりが指摘されるが、このアルバムの特徴を電子音に見るのはあまりに表面的だ。『キッドA』をつくったとき、トム・ヨークはチャールズ・ミンガスにのめり込んでいた。「THE NATIONAL ANTHEM」なんて、ミンガスそのまま。いくつものホーンが有機的に絡みつくミンガス・ジャズの特徴は、いくつものギターを有機的に絡ませる初期レディオヘッドの特徴に似ている。音楽のジャンルは違えど、そもそもからレディオヘッドとミンガスが目指すところは同じだったんだろう。音はきわめて多いが、無駄な音など一切ない。すべての音が複雑に関係し合い、その関係性がさらなる狂いを生む。ミンガスの音楽の特徴も僕からすれば「計算された緻密な狂い」と「多音が複雑に絡みつくことで生まれるグルーヴ」。同じだ。
このアルバムでのトム・ヨークのヴォーカルは電子音に紛れ込んだり、あるいは電子音そのものになってしまったりするがゆえに、例えば感情を排した機械的な歌声であるという言われ方をする。その指摘は誤りではないが、「隠す」ことは同時に「見せる」ことである。感情を隠せば隠すほど、隠しているがゆえに見えてしまう、もっと言えば聴き手が想像してしまう感情がある。この「隠す/見せる」という観点からは、『キッドA』は隠そう隠そうとしているが隠し切れずに見えてしまっている、いや、隠し切らずに見せてしまっている。「HOW TO DISAPPEAR COMPLETELY」を感情を排した歌だとはとても言えないし、ラストの曲「MOTION PICTURE SOUNDTRACK」ではそれまで隠し続けた感情が溢れ出す。隠されたものは想像し、見せられたものは想像の上をゆく。
Super Furry Animals 『RINGS AROUND THE WORLD』(2001)
スーパー・ファーリー・アニマルズ(SFA)は凄すぎる。
1st『Fuzzy Logic』(1996) 2nd『Radiator』(1997) 3rd『Guerrilla』(1999) 4th『Mwng』(2000) 5th『Rings Around The World 』(2001) 6th『Phantom Power 』(2003)
1枚目から6枚目まで、僕の評価はすべて★5つである。 とにかく1曲1曲のレベルが高すぎるのだ。 その傑作中の傑作、SFAの最高傑作がこの『リングス』。 「世界を一周する輪っか」というハッピーなタイトルは、 このアルバムの音楽をぴたりとうまく表現している。 「世界を一周する輪っか」という願望を思いつくのは、 世界がバラバラだってことに気づいているヤツで、 それに気づいていながら嘆くのではなく優しく歌う。 だから音楽は、願望というよりはむしろ祈りとして響く。 バラバラの世界に絶望しても、そこで音を鳴らす。 「IT'S NOT THE END OF THE WORLD?」という曲ではこう歌われる。