ローリング・サンダー・レビュー -15ページ目

ローリング・サンダー・レビュー

映画・音楽・小説・マンガのレビューブログ。

1Q84 BOOK 3/村上春樹
¥1,995
Amazon.co.jp

むう。なんと言えばいいのか。
面白いけどよく考えたらしょうもない。
よく考えたらしょうもないけど面白い。
じわじわくるかんじとかやっぱり巧い。
30歳のボーイミーツガールかあ。

1Q84は村上春樹が苦手な三人称で物語が語られる。
「僕」がどうしたではなく、天吾はどうした青豆はどうした、
というふうに語られるのだが、これまでになく滑らかだなあ、
と思ったのはその三人称がきわめて一人称に近かったからだ。
天吾はどうしたと書くときの視線は徹底して天吾目線だった。
が、このBook3では実はそれが一度破綻してしまっている。
339ページ。

『ここでいくつかの「もし」が我々の頭に浮かぶ。』

このときの「我々」とは誰か?
これは実は、「村上春樹と読者」なのです。
村上春樹はかつて物語の中にほとんど顔を出したことがないのに、
この一瞬だけ、ふいに「我々」として顔を出してしまった。
この瞬間、物語はあくまで物語になってしまった。惜しい。

Book4が出るんじゃないかとか一部で言われてるみたいだけど、
絶対出ないです。どう読んでもこれで終わり。
ヘンな話だけど、村上春樹はやっと普通に終わった。
『世界の終り』みたいにこっちへ戻らないことを選んだり、
『カフカ』みたいにふたつの線が交差しないこともなかった。
やっと普通に終わってもいいかなと思えたのかもしれない。
でもね、なんだか最後の方、作者がつまらなそうなんです。
やっぱりヘンなもんを書いてるときの村上春樹が良い。
NHKの集金人のシーンとか文章が弾みまくってるし。
「わたくしNHKの受信料をいただきに参りました。
 そうです。みなさまのエネーチケーです。」
あれ、本当にただ書きたかっただけなんじゃないかなあ。
アカデミー賞受賞作。戦争映画はもう二度と見るまいと思っていたがあのアバターを押しのけてこっちがオスカー獲ったというのでは観るしかあるまい。
爆発物処理班の兵士の映画だから、画面には常に爆弾があるようなもので、これがもういつ爆発するかわからないしいつイラク人が撃ってくるかわからないし近づいてくる人間はテロリストか人間爆弾に見えるしもう緊張しっぱなし。それにしてもさすがのリアリティ。映像もストーリーも人物描写もきわめてリアル。まるで自分がイラクに行った米兵のようだ。そう、これがこの映画のキモ。知らぬ間にわれわれは米兵の、ひいてはアメリカの目で映画を観ている。イラク人が泣こうが叫ぼうが知ったこっちゃない。奴らはつねに我々を狙い、非人間的な人間爆弾を使う極悪非道の敵だ。この映画は確かに凄い映画だが、あのアホアホ映画アバターの「アメリカ人は金の亡者の悪いやつだ、早く撤退しろー」というお馬鹿だが愛しいメッセージに比べたら、「戦争はつらいが麻痺してシビれてくるんだよ、おれはつらいけどやるしかないんだよ」といういいわけがましい政治的メッセージでしかない。アフガニスタン紛争は当分は終わらなさそうである。
ふにゃふにゃふにゃふにゃ・・と、しぼんでしまいそうなかんじ。何がしぼんでしまいそうなのか自分でもわからないけど、物語そのものとも言えるし僕らのアニメに対する期待とも言える。やはりこの映画版はエピローグでしかなく、意味不明な終わり方をしたTVアニメ本編こそが東のエデンだったのだと思える。「国」のことについて妙に議論しているのが鬱陶しいがまあやむをえないか。それよりもやはり「上がりを決め込んだ大人たちをぶん殴ってやる」という我々の世代の不満を代弁するようなセリフをもっと活かしたかった。映画版こそあまり良くなかったが、東のエデンはいまの社会問題を若者の目線で直接的すぎるほどに語ったはじめてのアニメのような気がする。良いチャレンジだった。
わかりやすいはわかりにくい? 臨床哲学講座 (ちくま新書)/鷲田 清一
¥714
Amazon.co.jp

鷲田さんの新書。新書らしく鷲田さんなりにわかりやすくしている。そしてそのことは、『わかりやすいはわかりにくい?』というタイトルが皮肉的に示しているように、言葉がわかりやすいだけであって内容が浅いわけではない。これはいわば鷲田さんのこれまで出してきたいろんなテーマの本の要旨のみをかいつまんで1章ごとに少しだけ触れてみた、という本であって、例えば身体について、衣服について、顔について、聴くことについて、待つことについて、などのおなじみのテーマが比較的平易に書かれている。内容的にもおもしろく、鷲田入門としてオススメしやすい一冊。
SMOKE [DVD]/ハーヴェイ・カイテル,ウィリアム・ハート,ストッカード・チャニング
¥2,625
Amazon.co.jp

知人の映画マニアが好きな映画だということで見る。ポール・オースター原作。なるほどねー、映画好きが好きそうな映画。これぞ映画!という映画は観たあとにずっしりと腹の底に残って一生離れない。ただ、だからこそ、疲れたときに観るにはしんどい映画ですねえ。良い映画だけどね。
プラスティック・ビーチ (スタンダード・エディション)/ゴリラズ
¥2,500
Amazon.co.jp
ゴリラズのラストアルバムと言われている3rd。ゲストメンバーの多さとプロデューサーがいないせいか、これまでになく統一感がなくバラバラした印象。音もスカスカでちゃちいし大丈夫かこれ、というのが第一印象だったが聴いているうちに良くなってきたのが不思議。今回はハウスの色がかなり濃い。ちゃちいと感じたのはこっちがハウスのビートに慣れていなかっただけだったらしい。
それにしても、ここまでくるとゴリラズってのは何なんだ、と思えてくるが、やはりデーモン・アルバーンがやりたいことを好きなようにやってしまうことの照れ隠しのための『覆面』であると考えてよいのだろう。言わば、なりたかったもう一人の自分。そしてそれは、英国的なものから最も離れた場所にいる。人を集めまくってパーティーをやったというのがこのアルバムの物語だが、それはそのまま国籍問わずジャンル問わずで好き放題人を集めて好きなことをやったゴリラズという物語そのものでもある。ゴリラズを聴いたことがない人にはファーストを聴けと迷わず薦めるが、このサードアルバムもゴリラズファンなら存分に楽しめる1枚。
アホの壁 (新潮新書)/筒井 康隆
¥714
Amazon.co.jp

筒井康隆がひまつぶしに書いたであろう新書。
読者にとってもひまつぶしにしかならない。
この本で筒井康隆がやろうとしたことはたぶん、
「こんなアホな本を買うきみはアホです」
と言って新書そのものをバカにすることだったのではないか。
これで初めて筒井康隆を読む方は気をつけていただきたい。
この本では筒井康隆は1%も力を出していない。
機関車先生 (講談社文庫)/伊集院 静
¥470
Amazon.co.jp


へえ、ドラマになってたんだ、と今はじめて知った。なるほど、お涙ちょうだいのドラマにはもってこいか。普段読んでいる本の倍以上の早さで読んだ。直木賞作家の本って一瞬で読めてしまうのは一体何が違うんだろう。

上越新幹線内のパンフレットにある伊集院静のエッセイがとびきり良かったので伊集院静を読まねばなるまいと思って小説を読んだらエッセイのほうがはるかに良かった。悪くはないけどねえ。地面のにおいがしそうなくらいベタッとしたリアリティのある小説で、個人的には三浦哲郎の小説を思い出した。でも、お涙ちょうだいのやわらかさは三浦哲郎にはない。今度読むとしたらエッセイにしようっと。

IRM/シャルロット・ゲンズブール
¥2,580
Amazon.co.jp

シャルロット・ゲンズブールという人を僕はよく知らない。フランスの女優らしいけど映画は観たことがない。が、このアルバム。黒幕はあの、BECK。全曲作詞作曲&プロデュースというだけあってBECK色全快。『モダン・ギルト』のダークさと、『シー・チェンジ』のアコースティックな音が合わさって、めちゃめちゃ格好いい音になっている。それにしても、この音の立体感はどうだ。部屋の中で聴いていると、何度か後ろを振り返ることがある。それくらい立体的で、ハイ・ファイで、なおかつ楽器のひとつひとつの音が生々しいサウンド。ささやくようなシャルロット・ゲンズブールの歌声はそれだけでおしゃれで、メロウな感覚がこのサウンドに合っている。いや、サウンドが歌声に合わせたという意味では、この音が生まれたのも彼女の歌声からなのかもしれない。
コントラ/ヴァンパイア・ウィークエンド
¥2,490
Amazon.co.jp
ヴァンパイア・ウィークエンドの2枚目。
セカンド・アルバム・シンドロームが蔓延する中、
この『コントラ』は傑作1stに匹敵しうる出来。
後半がやや弱いが、前半は断然良い。

相変わらずのアフロ・ビートは楽しげで、
今回は1stよりも力が抜けている印象を受ける。
「COUSINS」のような最高のお祭りソングだけでなく、
「WHITE SKY」のような広い空間感覚のある曲があるからだろう。

サマーソニック08に行ったとき、最悪なことに
MGMTとヴァンパイア・ウィークエンドの時間がカブっていて、
どちらを見るかさんざん迷った挙げ句、MGMTを見た。
両方ともニューヨークのひねくれポップバンドだ。
そういえば、ストロークスとも似たところがある。
暗さのない、都会的な感覚。
いま、ニューヨークが一番いいなあ。