ローリング・サンダー・レビュー -14ページ目

ローリング・サンダー・レビュー

映画・音楽・小説・マンガのレビューブログ。

ONE PIECE ワンピース THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島 [DVD]/尾田栄一郎,田中真弓,岡村明美
¥4,725
Amazon.co.jp

細田守のワンピース。
明らかに原作と監督の作風とがマッチしていない。
ヒーロー漫画の映画版の宿命は短期間でいっぺん落として、
そこから最後にドンと上げるというアップダウンだが、
この作品については落ちるほうばかりで見ていてしんどい。
細田守風に描かれた単色キャラデザは良かったけど。

人気漫画のアニメが本当にもったいないと思う。
せっかくはじめからファンが多いのに、大抵、ミスってるのだ。
わからんけど、これは細田守がやりたかったことじゃないと思う。
ワンピースを超アクション映画にしたら絶対面白いはずだ。
ルフィのゴムのスピード感だけでもすごいことにできるのに。
みんなが見たいのはお涙ちょうだいの映画じゃないよ。
ただ単に、ワクワクするような映画だ。
マイナス・ゼロ 広瀬正・小説全集・1 (集英社文庫)/広瀬 正
¥800
Amazon.co.jp

昭和45年に書かれたSF小説。なぜか評判がすこぶるよろしいので読んでみたら面白くって一気読み。星新一が解説を書いているが確かに星新一のにおいがする。タイムマシンものなんて先が読めちゃいそうなもので、伏線を張る以上は先が読めてしまうこともある意味ではひとつの良さなのだが、伏線を張りながら先を読ませない、いや、読者に先を読ませて物語がさらにそのはるか上をゆくこと、それが難しいのにこの小説はさらりとやってのけてしまった。古さがあることや文学的要素が少ないことを差し引いても単純に面白い。
花神〈上〉 (新潮文庫)/司馬 遼太郎
¥660
Amazon.co.jp

幕末、長州、大村益次郎。
『花神』は知名度が低いわりに引用されているのをよく目にする小説で、読んで初めてその理由がわかった。これは技術屋の小説なのである。歴史小説のほとんどは英雄や革命家などリーダーの小説だが、会社の社長でもない我々にとってリーダーは我々自身ではない。が、主人公が技術屋となると我々は彼の身に我々自身を置き、彼の発言や行動を我々自身への教訓として心にとめるのである。

が、この小説。どうも司馬遼太郎の距離感が遠い。司馬はついに大村益次郎を理解しえなかったように思える。ゆえに、話は脱線に次ぐ脱線で、大村益次郎の話というよりも『竜馬がゆく』では垣間見るにすぎなかった長州の動きを見ることに重点が置かれる。政治家のはなしが多く、技術屋のはなしが少なかったのはもったいない。が、技術屋というのはそういう語りにくい類の人種なのかもしれない。
銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎/ジャレド ダイアモンド
¥1,995
Amazon.co.jp

朝日新聞紙上で識者が選んだ「ゼロ年代の50冊」第1位という帯に惹かれて読み始めたのが、確かにこれはおもしれー。本書のテーマは『なぜヨーロッパ人が世界を侵略できたのか』。これをきわめて実証的に検証してゆく思考過程がおもしろい。以下、内容含む。

まず上記の問いに対する答えが非常に面白い。答えはひとつではないのだが、大きな要因として『ユーラシア大陸が世界最大の東西に長い大陸であったこと』を挙げている。なんでそうなるの、とはじめは思うのだが読み進めていくうちになるほどと思えてしまう構成は実にエンターテイメントだ。答えを言ってしまうと、東西に長い大陸の場合、南北に長い大陸に比べて、農業の伝播のスピードが断然に速い。なぜなら同じ緯度の土地は同じような気候の場合が多いからだ。そして農業が伝播し農耕が行われるようになると、移動しなくてよいから人口が増える。また、貯蓄をできるようになる。人が増えれば社会制度が必要になる。貯蓄ができるようになれば社会に余剰が生じ、食料生産以外の活動を行う専門家が出てくる。たとえば政治家や軍人や土器をつくる人など。結果としてそのような社会には文字ができ、強大な軍事力ができ、鉄などの発明ができる、というわけだ。が、これは一例にすぎない。他にも病原菌のはなしなどきわめて興味深いはなしが多く、久々に知的読書をしたような気がした。

この本はピュリッツァー賞を受賞しているらしいが、学問的に価値のある本ではないだろう。これはおそらく、経済学で言えばガルブレイスの著書に近いと思う。その専門の人には評価されないが、一般人には評価されるという類の。でも僕はそっちでいいじゃん、と思う。専門家(オタク)の成果を広く世に知らしめるポピュラー作家の存在意義はきわめて大きい。最近、知的刺激に欠けている皆様にオススメしたいポピュラー文化人類学。
Shake/Shiver/Moan/22-20s
¥2,300
Amazon.co.jp

22-20s、復活。本当にうれしい。ブルースを基調とする音楽だから、まあ1枚目とほとんど変わらないだろうなと高をくくっていて、むしろ同じモノを聴かせてくれれば十分だと思っていたのだが良い意味で裏切られた。暗さがかっちょよかった1枚目とは変わって今回のアルバムは暗さの中に優しさがある。4曲目の「ocean」などは彼らが格段に音楽の幅を広げたことがわかる名曲だ。

それにしても、演奏うめ-。特徴的な尖ったギターの音は健在。かーっちょいいー。このギターの音がそこらのバンドには出ないんだよ。ふにゃふにゃした現実回避のサイケデリックバンドには絶対に出せない音の生々しさだ。国内盤にはライブ演奏がボーナストラックで入っているのだが、演奏がうますぎて途中までライブ演奏だとわからなかった。そしてこのジャケットのすばらしさ。男気あふれるねえ。こういうのを粋というのです。復活してくれてありがとう。
アンダー・ザ・グレイト・ホワイト・ノーザン・ライツ/ザ・ホワイト・ストライプス
¥3,480
Amazon.co.jp

待ちに待ったホワイト・ストライプスのライヴ盤。世界最高レベルのライヴともっぱらの評判だったが、いやはや、これはちょっとすごすぎですね。1曲目、「レッツ・シェイク・ハンズ」の冒頭、バグパイプの音が鳴り止むと同時にギャーンと鳴るたった1音のジャック・ホワイトのギターが一気に空気を変えてしまう。ものすごい緊張感。DVDを見るまでは一人で弾いているとは信じられないほどの音の厚み。でも本当にひとりで弾いてる。やはり別格。「リトル・ゴースト」などで聴けるアコースティックギターもめちゃくちゃ格好いい。

DVDのインタビューの中で、ジャック・ホワイトは「制約を設けること」の重要さを語っている。例えば、ギターとドラムの2ピースという制約、赤と白と黒しか使わないという制約、レコーディングに時間をかけないという制約。そのようなことを何百も、ひとつひとつ積み上げてゆくのだという。無限は制約の中にしか生まれないことを彼は自ら立証した。もしかしたら、メグのドラムの単調さもジャックにとってはその「制約」のうちのひとつでしかないのかもしれない。
ポート・エントロピー/トクマルシューゴ
¥2,500
Amazon.co.jp
以前からプッシュしているトクマルシューゴの新作。
相変わらずのピョロリロリー音楽。
聴いたことないけどなぜか懐かしい。
この懐かしさは一体何なんだろうと考えたとき、
これは我々の「音」の原初体験なのではないかと思った。
トクマルシューゴは非楽器で音を鳴らす。
木材とか鍋とかそのへんに転がってる小道具とか。
だから、それらの音はすべて音楽としての音ではなく、
まずは単純に音としての音として生まれてくる。
僕が思い出すのは、雨の日、水滴が地面を叩く音。
あるいは、マンションの壁や手すりの金具を叩く音。
子供の頃に僕らの身のまわりにあった様々な音。
そしてそれは、大人になって、聞こえなくなった音でもある。
トクマルシューゴが聴かせるのは、たぶん、そんな音なんだろう。
A-Z Vol.1(通常盤)/ASH
¥2,300
Amazon.co.jp

ぎええっ。と思わずうなる凄まじさ。
これがもう、本当にすごい。全曲のクオリティが高すぎる。
このアルバム、むかし倖田來未がやってたみたいな、
連続発表したシングルを集めたアルバムなんだけど、
それにしても、なんだこれ、なんで今こんなのを作れるんだ?

ASHはきわめて遺憾なことに日本ではなじみが薄いが、
イギリス版のアジカンとでも思っていただければよい。
実際、ASHとアジカンは交流がありナノムゲンにも出ている。
ただ、ASHのほうが1枚も2枚も上だけど。

2009年は本当に酷くてどうなることかと思ったけど、
今年はこの1作だけで救われたという気がする。
逃避主義のサイケデリアばかりが流行る中で、
ASHのこの青臭くて力強いポップさはどうだ。
「恐るべき子供たち」と言われたASH、円熟の最高傑作。
コングラチュレイションズ/MGMT
¥2,100
Amazon.co.jp

傑作1st『オラキュラー・スペクタキュラー』から激変。
あの頃、彼らは無邪気にアホなことをやっていた。
そしてそのアホさが知性に富んでいたことが最大の魅力だった。
だが、今作はアホではない。
もう頭の悪いふりはしていられなくなったのだろう。

今作には「KIDS」も「Time To Pretend」もない。
それを逆に好ましく評価する人もいるが、個人的にはやはり残念。
あの知性とユーモアと皮肉が入り交じった感覚が薄れたのは、
ある意味では聴き手の読解力の低さにも一因があるのだろうから。
だが、メロディのポップさはまったく失われていない。
音が不穏なだけで、歌のメロディはやはりひねくれポップだ。
それにしても、ラストの「Congratulations」は断トツで良い。
こんな曲をMGMTが出せるとは思っていなかった。
憂鬱さと優しさと悲しさが入り交じって心を溶かす。
無邪気に楽しんでいた時は過ぎた。これは彼らの成長の証だ。
原作漫画の最終巻に僕はいたく感激しましたけど、
この映画最終楽章後編はどうもちょっと薄いですねえ。
高みに登ろうとする者の苦しみがもう少し欲しかった。
のだめの何がすごいってこの苦しみをちゃんと描いていることで、
なぜこれができるかというとギャグのセンスが抜群だから。
苦しいだけじゃ漫画にならない。
苦しみを描きながらギャグでこれをすっと抜けさせる。
あらためて漫画のだめのすばらしさを実感する。

『 いくら苦しくても
  気が遠くなるほどの孤独な戦いが待っていようと
  こんな喜びがあるから
  何度でも立ち向かおうと思えるんだ 』

孤独に戦うすべての者への名言。