ローリング・サンダー・レビュー -12ページ目

ローリング・サンダー・レビュー

映画・音楽・小説・マンガのレビューブログ。

マン・オン・ワイヤー スペシャル・エディション(2枚組) [DVD]/フィリップ・プティ
¥3,990
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今は無きワールド・トレード・センター・ビル。そのふたつのビルのあいだを無許可で綱渡りで渡って逮捕されたフランス人についてのドキュメンタリー。この映画については映画がすごいのではなく現実がすごいとしか言いようがない。地上400メートルを命綱なしで、しかも求められてではなく単にやりたいから、ビルにしのびこんで1トンもの機材をひそかに最上階まで運んでまでやったのはなぜか。「理由は?」と聞かれて彼は答えた。「1000回聞かれたけど理由はない。ただやりたかっただけだよ。」と。彼は友人や恋人とともにこの計画を練り実行に移したが、綱渡りをしてしまったあと、友情と恋愛とは崩れ去った。ワールド・トレード・センター・ビルのあいだにかけられた一本の綱はギリギリのバランスでそこにあって、風に揺れる綱のうえを彼はギリギリのバランスで立っていたのだ。
ミックマック [Blu-ray]/ダニー・ブーン,アンドレ・デュソリエ,ニコラ・マリエ
¥3,990
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待ちに待ったジャン=ピエール・ジュネ最新作。
相変わらずの作りこみようで、独特のワールドをスクリーンに映しだす。この監督の映画の特徴のひとつに色彩感があるが、今回は画面のほとんどを黄色く撮っている。どこか寂しいキタノ・ブルーとは違う、あたたかみのある夕日のような黄色だ。そしてその色は、登場人物に対する監督の目線をあらわしてもいる。この監督の映画の何が好きかって、出てくる人がみんな自分で好き勝手に自分がやりたいことをやって楽しんでいることだ。他人がそれを分かろうが分かるまいが関係ない。みんなが好き勝手に楽しんで、そしてそれを温かく見守る監督自身が一番楽しんでいるような気がする。

オーデュボンの祈り (新潮文庫)/伊坂 幸太郎
¥704
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伊坂幸太郎のデビュー作。
これで読んだのは3作目だけど、伊坂幸太郎は初めからブレていない。伊坂小説の基本はエンターテイメントなのだろうが、エンターテイメントでありながら同時に文学的でもある。エンターテイメントな文学ではなく、文学なエンターテイメント。ポップなロックではなく、ロックなポップ。どちらの読者からも受け入れられなくなるのが普通のところを、伊坂幸太郎は恐るべきことにどちらの読者からも熱烈に受け入れられている。プロフェッショナルはこうありたいもんです。
私家版・ユダヤ文化論 (文春新書)/内田 樹
¥788
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これは面白い。タイトルに惹かれる人はおそらく少なくて、僕もそうだったんだけど、読んでみてこんなにスリリングな新書にはなかなかお目にかかれないぞと思った。これは単なるユダヤ人についての本ではない。むしろユダヤ人が現在のような状況に置かれたことの、すなわち世界についての本である。とりわけ最後の収束のさせ方は圧巻。そういえば、ユダヤ人の特性として「アナクロニズム」(ユダヤ人独特の時間のとらえ方)が書かれていたのが実に興味深かった。ボブ・ディランはユダヤ人だが、彼はまさにそのアナクロニズム的な発想をしている。彼らにとって、時間は左から右に一方向に流れるのではない。そのかんじがまだわからないんだよなあ。
FISH OR DIE (角川文庫)/奥田 民生
¥700
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奥田民生の本。「面倒くさい」と「おれは天才」しか言ってない。すばらしい。若き日の桜井和寿との対談もあったり、奥田民生から見るミスチルやスピッツやウルフルズの姿なんかも見えちゃったりしてなかなか面白い。一番笑ったのは広瀬香美との対談で、広瀬香美が奥田民生よりやる気がなくて奥田民生がビビるというなかなか面白い代物だった。もう売ってないんだろうけど。
Mr.Children/Split The Difference [DVD]/Mr.Children
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ミスチル映画。
なんかもう、ね。ため息しか出ない。

スタジオの録音風景を撮っているんだけど、
これは最近の海外のウェブ配信の流行でもある。
arctic monkeysもradioheadもBECKもやってる。
彼らが軽くさっと配信してしまう音のレベルの高さといったら。
そして彼らのスタジオ風景はいかにもローファイである。
普段のそのまんま、というかんじ。
だからこそ逆に、普段からこれかよ、と思わせるのが良いのです。
当然のことながら音は生々しくなければならない。
なのに、ね。
ミスチルは(というか小林武史は)間違えた。
スタジオに客を呼んじゃったのです。
しかも自分たちの知り合いとかセレブっぽい人等。
その人等がワインとか飲んでパーティーしてんの。
セレブに見られながらスタジオでライブするミスチル。
何なの、この趣味の悪さは。
音はと言えば普段らしさのかけらもないハイファイな音。
何より小林武史のピアノが気持ち悪すぎてどうしようもない。
ピアノない方が断然良いって誰か言ってやってくれ。
もうとにかく色々間違ってしまった。

見所は桜井さんが弾き語っているところ(やっぱ歌うまい)と、
スガシカオと一緒にやってるところくらいかなあ。
どっちかというと見たくない映像ばかり。
求心力を失った最近のミスチルの姿がちゃんと映っている。
告白 【DVD特別価格版】 [DVD]/松たか子,岡田将生,木村佳乃
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レディオヘッドの曲が主題歌だということと、
下妻物語の監督が撮ったということで観に行く。
こりゃあすごいよ。
本当に下妻物語の監督が撮ったのかと信じられないくらい、
まったく異なるアプローチで撮ってまったく異なる良さがある。
テンポの良さと早さこそがこの監督の特技だったはずだが、
この映画ではとにかくスローモーションを多用している。
なんだかレディオヘッドのstreet spiritのPVみたいだった。
邦画ではこんなのは観たことないなあ。
よくよく考えると話自体は安っぽい話のように思えるのに、
それがなんでこんなに突き刺さってくるのか。
総合芸術たる映画のマジックを見た気がする。


再び女たちよ! (新潮文庫)/伊丹 十三
¥540
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わけのわからない不安が僕を襲って、
これはダメだと思って本屋をうろついた。
何か気が紛れるようなモノはないか。
何も考えないですむようなモノはないか。
ぐるぐる本屋を回っても、どれも最高にくだらない本に見える。
小難しい本もアホな本も、ミステリーも歴史小説も、
どれもこれも自分とはまったく無関係な別の世界の代物で、
オレはおまえみたいなくだらん本を読んでる場合じゃないんだと、
腹立ちながら本屋を回っているうちに伊丹十三の本が現れた。
即座にこれを買い、30ページ読んで泣きそうになった。
知的で優しく面白く気高く厳しく哀しい。
すごいエッセイだ。「花火」が絶品。
羊をめぐる冒険(上) (講談社文庫)/村上 春樹
¥500
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再々読。村上春樹の中でもかなり好きな作品。
村上春樹の主人公はとにかく流される。
世界のひとひねりに、運命のうねりに。
ホントそういうもんだと思うねえ。
僕らは僕らが選んで今ここにいるんじゃない。
ただ単にいろんなものに流されただけだよねえ。
ラストが秀逸。エピローグは不要だ。
クリストファー・ノーランが好き放題やっちゃった。
名作『メメント』をハリウッド大作でやったかんじ。
わけがわからないまま映画の中に引きずり込まれて、
謎をばらまきながら次から次へと何かが起こっちゃう。
わけわからんけどハイブリッドで面白いというこの感覚は、
もうまさにクリストファー・ノーランそのもの。
素晴らしい。金をかけてこれをやっちゃうのが。

が、映画をそんなに観ない人が観てどれだけ面白いかは疑問。
これはクリストファー・ノーランのファンのための映画。
といっても、マトリックスが面白い人なら多分面白いと思うけど。
あと、この映画ではエンドロールの最後に小憎い演出がある。
今から観に行かれる方は、最後まで席をお立ちにならぬよう。