ローリング・サンダー・レビュー -11ページ目

ローリング・サンダー・レビュー

映画・音楽・小説・マンガのレビューブログ。

HER (Feelコミックス)/ヤマシタ トモコ
¥680
Amazon.co.jp

このマンガがすごいの1位のマンガだけど、ああ、これはこのマンガはすごいわ、と納得した。こりゃあね、すごいわ。これは絶対に男には描けない。だから男にとってはたまらんですね。むしろ女子にとってたまらんのかもしれないけど。少女マンガの群像ものには結構おもしろい作品が多いような気がする。谷川史子とかもうまいし。これに対して少年マンガにはこの種の群像劇が非常に少ない。だからこそ、少年マンガばかり読んでいる男が読むと面白いと思います。非常におすすめ。

キック・アス Blu-ray(特典DVD付2枚組)/アーロン・ジョンソン,クロエ・グレース・モレッツ,クリストファー・ミンツ=プラッセ
¥5,985
Amazon.co.jp
B級っぷりが売りの本気の映画を作るというコンセプトは面白いしアクションもすごいしギャグもまあ面白いんだけどね、子供が人をぶった斬る映画ってのは観たくなかった。おもろいんだけど、趣味が悪い。ま、僕が見るべきではなかったと、それだけの話なのかもしれない。
ハーメルンの笛吹き男―伝説とその世界 (ちくま文庫)/阿部 謹也
¥798
Amazon.co.jp

ハーメルンの笛吹き男の伝説を知っているだろうか?以下、ウィキペディアより引用。

『1284年、ハーメルンに「鼠捕り」を名乗る色とりどりの布で作った衣装をまとった男がやって来て、報酬と引き換えに街を荒らしまわるネズミの駆除を持ち掛けた。ハーメルンの人々は男にネズミ退治の報酬を約束した。すると男は笛を取り、笛の音でネズミの群れを惹き付けると、ヴェーザー川におびき寄せ、ネズミを残さず溺れ死にさせた。ネズミ退治が成功したにもかかわらず、ハーメルンの人々は約束を破り、笛吹き男への報酬を出し渋った。
怒った笛吹き男はハーメルンの街を後にしたが、6月26日の朝(一説によれば昼間)に再び戻って来た。住民が教会にいる間に、笛吹き男は再び笛を吹き鳴らし、ハーメルンの子供達を街から連れ去った。130人の少年少女が笛吹き男の後に続き、洞窟の中に誘い入れられた。そして、洞窟は内側から封印され、笛吹き男も洞窟に入った子供達も二度と戻って来なかった。』

だがウィキペディアではこの物語のもっとも重要な部分がカットされてしまっている。以下、本書より引用。

『こうした事態を目撃した子守娘はやがて引き返して町に戻り、町中に知らせたのである。子供たちの親は皆家々の戸口からいっせいに走り出てきて、悲しみで胸がはりさけんばかりになりながらわが子を探し求めた。母親たちは悲しみの叫び声をあげて泣き崩れた。』

伝説は時代を超えて語り継がれることによってはじめて伝説となる。したがって、伝説が伝説足りうるためには世代を超える普遍性が必要となる。この物語が語り継がれているのは、子を失う親の気持ちこそが最大の一点だろう。

さて、この伝説はどうやら単なる作り話ではないらしい。事実をもとにしてできている。ゾクッとしないだろうか。ではその事実とは何か。これは私たちが学校で学んできた歴史とは異なる歴史である。だが著者のアプローチは実は、ハーメルン伝説の事実が何であったかよりも、この伝説がなぜどのようにして口承されてきたのかを見ることにより歴史を語ろうとするという、人々の心の底に流れるものを掬い取ろうとするようなアプローチなのだ。

しかしこの本はエンターテイメントとして非常に上手い。なぜ130人の子供たちはいなくなったのか?この謎を冒頭で据え置いて少しずつ明らかにしていく様はまるでミステリーのようである。文章も極めて上手く、学術的な知的刺激を得ることは言うまでもない。名著と名高い作品だが、まさに名著の名がふさわしい。
競争と公平感―市場経済の本当のメリット (中公新書)/大竹 文雄
¥819
Amazon.co.jp

著者は阪大の先生だけど授業を受けたことはない。本書はいかにも経済学者が書きそうな新書で、冷静に考えるとやっぱり市場経済のほうがみんながハッピーになれるし、市場がうまくいかないこともあることなんてはるか昔からわかってることで、市場の効果を阻害しない方法で市場の失敗に丁寧に対処していくことが結局みんなの幸せになるんだ、という経済学部を卒業した人間にとっては新鮮味がないといえばないテーマが繰り返される。
著者の本ではやはり前作、『日本の不平等』のほうが良い。格差論で一躍有名になった著者だが彼の主張は意外と知られていないのではないか。『日本の不平等』における主張はきわめて明快で、「同年代の格差は過去に比べて広がっていない」というのがそれである。社会全体での格差は確かに広がっているが、これには他の理由がある。すなわち、高齢者になればなるほど同年代の格差は広がっていくが、この格差の大きい高齢者の人口が増えているため、全体としての格差が広がっているというのである。さらに言えば、20代については過去に比べて格差が広がっているという事実まで突き止めている。これぞ経済学の研究成果と言うべきだろう。データが示している日本は、若者が年寄りに食われる社会である。この主張が知られていないのは、おっさんたちはみんなそれを信じたくないからなんだろうね。
伊藤博文―知の政治家 (中公新書)/瀧井 一博
¥987
Amazon.co.jp

サントリー学芸賞受賞作。この受賞作ははずれがない。本作も新書ではあるがあとがきを見てもらえればわかるように、著者の研究人生を賭して書かれている。第1章を読むだけでもその研ぎ澄まされた文章から著者の本気の魂を感じることができるだろう。
ぼくが好きな近代日本史の登場人物は、勝海舟と伊藤博文である。そのふたりをそれほど詳しく知っているわけでもなく、なぜ好きなのかは自分でも分からなかったのだが、この本を読んで少しだけ分かったような気がする。
伊藤博文は熱くならない。腹の中に熱いものを持っていても、表面上は醒めている。自分のこだわりは持っているのだが、彼はそれを完全に現実化するほどの理想主義者ではなく、一部でも現実化できるのであれば妥協もするし譲歩もするという現実主義者であって、おそらくそこに僕は自分と似たものを感じて魅かれるのだろうと思う。理想は持っている、しかしそれに固執しない。いったんは退くが、しかしあきらめない。世界を動かしていくのに必要なのは語ることではなく動くことなのだ。
Art 1 誰も知らない「名画の見方」 (小学館101ビジュアル新書)/高階 秀爾
¥1,155
Amazon.co.jp

西洋絵画をどう見るかについての入門書。有名な画家をざっと押さえてこういう見方もあるよと提示してくれるので素人には大変ありがたい。本でも音楽でも、おもしろさをわかるためにはそのための見方を身に付けないといけないというのが僕の基本的な姿勢で、たとえば学校教育の多くはこの審美眼を身に付けるために行われているんじゃないかと思う。話がずれたけど、この本は絵画に対する批評としては面白いわけではないが、絵画の見方を教えてくれるという意味では初心者にはありがたい本かと思われます。ヨーロッパに行く前に読んどきゃよかったなあ。
イギリス近代史講義 (講談社現代新書)/川北 稔
¥798
Amazon.co.jp

大学のときの一般教養で受けていた世界史の先生の本。川北稔と言えば「世界システム論」の日本における権威である。高校のときの世界史の先生がマルクス史観にまみれた山川出版社の教科書を無視して最新の世界史をペラペラとしゃべり続けていたのだが、この先生がしゃべっていたことは川北先生が訳したウォーラーステインの世界システム論と言われる世界史解釈の完全な受け売りであることに大学になって初めて気がついて面白いものだと思ったことをよく覚えている。歴史を語るに際して一国の歴史のみを語ることには限界があるという前提からこの世界史解釈は始まっていて、一国の歴史をつらつらと前から後ろに覚えていく世界史を学んだ人間からすれば新たな視点を手に入れることができる。ただし、この本のタイトルは『イギリス近代史講義』であって世界システム論はテーマの中心ではないため、そういう視点を再確認したかった自分としてはやや物足りなかったが、衰退する戦後のイギリスから現在の日本の状況を捉える歴史家の未来に対する視線はやはり過去を楽しむだけの歴史家とは違うと思わせる。
日本辺境論 (新潮新書)/内田 樹
¥777
Amazon.co.jp

内田樹は安定してるなあ。『私家版・ユダヤ文化論』には及ばないように思えるが、日本論としてはなるほどね、と思える論点がいくつかある。そう思えるのはやはり、内田樹の本には必ず「逆説」があるからなのだろうと思う。「逆説」よりも「発想の逆転」と言ったほうがいいか。たとえば。聖徳太子が中国に送った「日出づる処の王子~」の親書は一般的には中国に対して自らの独立性を主張するために送ったものだという解釈が行われているが、内田はこれを、あえて外交ルールを「知らないふり」をしたものという大胆な自説を展開している。すなわち、これはガチンコで無礼な親書を送るという喧嘩ではなく、無知のふりをして相手に無知扱いさせることで逆に自分を自由にするという外交であるのだ、と。この知らないふりをする感覚についての指摘だけでも、この本を読む価値は十分にある。
それにしても、ここでも大学時代に読んだ「ユダヤ人と日本人」(イザヤ・ベンダサン著。実は作者はユダヤ人を装った山本七平。)が出てくる。山本七平は、日本人の行動からはもはや無宗教とは言いがたく、何か日本人だけ全員が共有している宗教でもあるとしか説明しえないとして、それを日本教と呼んだ人でもある。僕の大学のときのテーマはまさにこれだった。つまり、日本人とは何者か。私とは誰か、ということを考えるにあたっては、あらゆる日本人は、日本人とは何かを考えなければならない。それほどに我々は異端の民であり、たとえば西洋哲学をあてはめてもそれだけでは自分を理解し得ないということを、我々は強く認識する必要がある。なぜ日本の哲学者が日本人とは何者かに異常な興味を示してきたか。それは、「私とは誰か」を知りたかったからに他ならない。
トップをねらえ! Vol.1 [DVD]/日高のり子,佐久間レイ,岩本規夫
¥6,090
Amazon.co.jp

初期ガイナックス作品。おもしれー。
たとえば明朝体の多用などにエヴァっぽさも見られるのだが、
このアニメはむしろ『グレンラガン』の起源と言ってよい。
アホ熱血気合と根性ロボットアニメ。+萌えエロときた。
『グレンラガン』は革命的なアニメだと思ってたけど、
なるほどねえ、ガイナックスはずっと前にやってたんだね。
銀河中心殴り込み艦隊て。

いま見ると、製作スタッフも声優も超豪華。
宇宙怪獣の敵はエウレカセブンで引用されてるっぽいし、
後世に与える影響という意味でも非常に重要なアニメだろう。
ロボットアニメにメタの視点を与えた功績はきわめて大きい。
「タカヤ・・・お前とアマノ一人一人では単なる火だが
 2つ合わせれば炎となる。炎となったガンバスターは無敵だ!」
インソムニア [DVD]/アル・パチーノ,ロビン・ウィリアムズ,ヒラリー・スワンク
¥2,625
Amazon.co.jp

クリストファー・ノーラン・ミーツ・アル・パチーノ。きわめてハイクオリティなハリウッド映画。クリストファー・ノーランらしい画面作りはそこここにあらわれるが、この映画のクリストファー・ノーランははっちゃけていないというか、やっちゃっていないかんじが個人的には物足りなかったりする。インセプションみたいにもっとアホになっちゃった映画のほうが個人的には好きかな。とはいえ、この映画が面白い映画であることにはかわりない。クリストファー・ノーランの良さは、複雑にこんがらがったものを好みながらも結局はポピュラーなところだろう。良作。