ローリング・サンダー・レビュー -10ページ目

ローリング・サンダー・レビュー

映画・音楽・小説・マンガのレビューブログ。

岸辺露伴 ルーヴルへ行く (愛蔵版コミックス)/荒木 飛呂彦
¥2,800
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ルーブルでジョジョやっちゃいましたという作品。本当にあのルーブル美術館で展示されていたのだというから、荒木飛呂彦の偉大さもわかろうというものだ。わかるやつにはわかるのだよ。この「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」はオールカラーで描かれていて、さすがにものすごく気合が入っている。カラーの使い方も安彦良和っぽいというか、シーンごとに色を統一しちゃうというわかりやすく読みやすく美しい手法をとっている。いつもの岸部露伴ものというかんじで、ジョジョ読者じゃない人には意味不明な点も多々あるように思われるが、まあどうでもいいことかもしれない。この作品のなかで一番いいシーンはやはり、ルーブルの前で岸部露伴がアホなポーズをとっているシーンだろう。古典芸術も漫画になっちゃえばアホポーズになってしまううれしさ。
夜想曲集: 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語 (ハヤカワepi文庫)/カズオ イシグロ
¥819
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カズオ・イシグロの短編集。どうでもよいと思う短編もあったが、面白い短編は非常に面白かった。この短編集は音楽が主役のようなところがあるが、カズオ・イシグロの音楽の趣味は僕がわかった範囲ではとても良くて、チェット・ベイカーあたりが何度か出てくるあたり、相当好きなんだなと思える。なるほど、チェット・ベイカーは静かな夜でなければいけない。それにしても本作では、カズオ・イシグロはそのギャグセンスを満開にした短編などがあって、長編ではこそりとしか入れられないギャグのセンスが存分に発揮されていたのが一番面白かった。良い短編集です。
プラネテス 1 [DVD]/田中一成,雪野五月,折笠愛
¥5,250
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評判のよいアニメ。監督は『コードギアス』の谷口悟朗。基本的に原作マンガに忠実に作られているので、正直言ってマンガを読んでしまった者としてはめちゃめちゃ面白いというわけではなかったのだが、確かにどの回も平均的なレベルは高い。しっかりしている、という感覚。少なくとも、コードギアスよりは遥かに良い。
チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷 (新潮文庫)/塩野 七生
¥540
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今まで読んだ塩野七生作品の中では、これが一番面白かった。塩野七生の他の作品は歴史語りという物語の要素を多く含んでいるものの、あくまでエッセイであるのに対し、この『チェーザレ・ボルジア あるいは優雅なる冷酷』は小説である。しかも、書きたくて書きたくてどうしようもないという思いに溢れた傑作である。後年、塩野七生の日本語はどんどん下手になっていくが(いくら語りの要素を出したいにしても読点多すぎるんだよ)、この作品はデビュー作である。イタリアに長年住んであまり使わなくなった日本語ではなく、なかなか良い味の日本語をつかっている。それにしても、チェーザレ・ボルジア。このアンチ・ヒーローの格好良さといったら!チェーザレ・ボルジアの短い人生の中にはなんと、レオナルド・ダ・ヴィンチとマキャヴェッリという超有名人2人が出てくる。しかも、彼の信奉者としてだ。人と人との間には引力が働いている。引力の強い人は引力の強い人と引き合うのだろう。傑作。
海の都の物語〈1〉―ヴェネツィア共和国の一千年 (新潮文庫)/塩野 七生
¥420
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文庫で全6巻。塩野七生が書くヴェネツィアは、島国日本との対比を読む者に求めている。ヴェネツィアが良いとか日本が悪いとか、そういう話ではない。塩野七生はローマを書くときも日本との対比を求めた。日本人に読ませるんだから、ね。塩野七生はよくわかってるんだ。ヴェネツィア人と日本人は似ている部分も多いらしい。ヴェネツィア人は戦争から逃げてあんなところに住むようになった。日本人も歴史的には大陸から逃げ出してきたというのがたぶん正しいのだろう。辺境に逃げた者たちが生き延びるにはどうすればいいか。おそらくは、持たぬ者だからこそ洗練させるものがあって、ヴェネツィア人と日本人が似ているのはそこなのだろう。両国の国民性が宗教よりも重んじた「経済合理性」とは、その結果なのではないか。というようなことを考えるのが好きな人には面白い作品です。
脚本 コクリコ坂から (角川文庫)/宮崎 駿
¥460
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誰もがC級映画を期待していたであろう、宮崎吾朗第2回監督作品。そう、われわれアニメファンはC級さをネタとして楽しむためにこの映画を観に行ったのだ。なのに、なのに!コクリコ坂は、ちゃんと映画になってしまっているのである。少なくともアリエッティよりは良い。だがこの映画、やはり企画の親父様、宮崎駿がおおいに絡んでいたに違いない。他人に監督をさせながら自分で脚本をしてしまうのは「耳をすませば」と同じやり方だ。話の内容も同じ部類のもので、こういうクサい青春映画は照れくさくて監督できないのかもしれない。ただ、この映画にはジブリ(というか宮崎駿映画)に特有の動きの面白さはまったくない。アニメファンとしては、妙に力の入った戦艦に惹かれるくらいか。あれ、たぶんゴンゾがつくってんじゃないかな、と知人と語る。意外に良い、という意味で☆4とする。
エンジン/ENGINE/矢作俊彦
¥1,680
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おもしろーい。
矢作俊彦がサービス精神旺盛に書いたサスペンス。

ダラダラ感を残しつつ、展開がものすごく速い。次から次に事件が起こって息つく間もない。実にエンターテイメント。人が死にまくるものをエンターテイメントと呼んでいいのかわからないけど。エンジンというタイトルのとおり、車が突っ走って止まらなくなってしまうような小説。「ららら科学の子」「悲劇週間」に比べて☆4つとしたが、他の作者なら☆5をつけていた。
アンダルシア 女神の報復 スタンダード・エディション [DVD]/織田裕二,黒木メイサ,戸田恵梨香
¥3,990
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「アマルフィ」は面白かったんです、ぼくは。あんな外交官がいてほしいじゃないですか。いや、いるんですよ。断固いるはずだ。織田裕二のあのなりきりっぷりがいいじゃないですか。顔もなんだか外交官のように見えてくるよ。そうだよ、彼は外交官だよ、世界陸上のあの人とは違う人だよ、と思わせるものをもってるよね、織田裕二は。しかも相手が佐藤浩市ときた。これだけでもう素晴らしいよね。

でもアンダルシアはどうにも暗いんです。暗いうえにウソっぽい。マネーロンダリングって言われてもねえ。直感的にわかんないわけです。今回はキラキラ感が足りなかったね。次に期待。
トイ・ストーリー3 [DVD]/出演者不明
¥3,360
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ははっ、トイ・ストーリーなんて観てるのー、ププッ、とは思わないでいただきたい。これ、めちゃめちゃ良い映画なのです。1と2はまあ子供向けかなというかんじだが、3は大人も観るべき映画。この映画に一番似ているのは、クレヨンしんちゃんの「オトナ帝国の逆襲」。このかんじ、わかってくれるよね。過去はいつも美しい。そしてその過去と、いつか私たちは別れなければならない。過去を慈しむ優しい目を持ち合わせながら。あの頃は良かった、でも僕らはあの頃には戻ることなんてできやしないのだ。

真夜中のカーボーイ [Blu-ray]/ダスティン・ホフマン,ジョン・ボイト
¥2,500
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ダスティン・ホフマンが主演じゃないのに主演扱いされている1970年くらいの映画。話は全然違うけど、映画全体がかもし出す雰囲気は「イージーライダー」にすごく似ている。ヒッピーとドラッグとサイケを基調にしてダメなやつらがとことんダメな生活を送ってしまう、悲しい映画。そう、とても悲しい映画だった。ワクワクしないしドキドキしないし切なくないけど、記憶には間違いなく残る。死ぬのは、怖い。