日本一への姿勢
全国大会1回戦、無情のノーサイドから約1週間。
多くのメンバーが「シーズン終わった気が全くしません」(苦笑)と口を揃える。
「強風の風下での攻め方、守り方が良くなかった。ゲームメイクの部分で前半は後手に回ってしまって、後半、「(0-12)を早くひっくり返さなきゃ、とバタバタになってしまった。あとは「勝てる」と思い込みが強くて、激しさの部分でやんばるクラブに負けていましたね」
給水係として試合をピッチのそばで見守った福地コーチは分析する。
多くのメンバーが初めての経験となる全国大会、九州での試合に、「いつも通り」を心がけていたつもりが、堅さを感じていた。
「リーグ戦の時よりプレッシャーやイレギュラーなことに対応しなければいけないことが前半出来なかった。修正力がもっと必要だと感じました」(SH伊藤)
ブレイクダウンに遅れを取る場面も多かったことも敗因にあげるメンバーは多い。何があるか分からないのが全国大会。遅すぎた反撃に、当たり前のことを当たり前にできる難しさと、大事なところでのエラー、ミスなどが命取りになったことの痛恨。悔しさ一杯、もどかしさ一杯の敗戦となった。
そして、多くのメンバーが口にしたのは「最後の集合で晋平さんが言ったことに尽きます…」だった。
それは全体解散前の最後の集合でチームディレクターでもあるSH谷が今季をまとめて話した言葉だった。
「『日本一を目指す』『日本一になる』って口にしていたけど、俺たちは本当にそこまで努力をしていたのだろうか・・・。
自分も含めて、キツい展開になった時に『自分たちはこれだけやってきたんだから大丈』と思えるような努力をチームとしてできていなかった」。
大学や社会人チームと違って,クラブには決まった練習時間や恵まれた環境があるわけではない。選手やスタッフそれぞれに仕事や家庭の事情だってある。その中でも「日本一」を目指すなら多くの小さな努力を積み重ねていかなければ、日本一には届かない。それがこの試合にも出たはずだー。
主将になった経験のある谷TDの言葉は重い。多くのメンバーが、今季の自分やチームをふり返り、唇をかんだ。
「週末の飲み会でひとつの思い出を取るのか?1年間頑張って来て全国大会で勝ったときの達成感を取るか、どっちがいい?」
その言葉に岡田主将も「日本一に対しての姿勢や努力が、自分自身に全然足りてなかった」と深く反省する。
だが、本当にそれを実行するには毎日の生活の中で様々なものを律して努力を積み重ねていかなければならない。大学や社会人時代の「貯金」でなんとかなる時代ではない。
もちろん、谷自身もこのチーム、クラブに大きな可能性を感じているからこそ、あえて厳しい言葉を投げかけた。
年々全国のクラブチームも様相が変わっていき、外国人選手が多数在籍するクラブや、強豪大学OBで固めたクラブなどが出現、試合内容も実力が伯仲し、激戦が続いている。
世間的な目からすれば「たかがラグビー」である。だが、近畿で、全国で同じように日本一を目指して努力を続けるクラブがある。激戦を勝ち抜いたからこそ、仲間と分かち合える勝利と喜びと涙がある。
六甲クラブはこれまで多くの勝ち負けを繰り返してきた。勝った時より、負けてからどう立ち上がるかー。
挑戦する姿勢を教えてくれたのは大好きなラグビーと大好きな六甲クラブの仲間だったはずだ。
今季の悔しさをしっかり受け止め、チームを、クラブを、そして自分自身を見つめ直して、新たなチャレンジを始めよう。
(三宮清純)
※試合写真は九州協会にご提供いただきました。
©️K.R.F.U Photo by N.Takayama