真夏の激闘
「花園3連覇」など、高校ラグビーに栄光を数々残してきた名門校「常翔啓光学園高校」。ロイヤルブルー軍団のOB選手にはその後、六甲クラブでプレーしてきた選手も多い。
その縁があって、この時期の練習試合グラウンドをお借りすることができた。 この日の相手は『菰野ラビッツ』。東海社会人クラブAリーグに所属する三重県を代表する強豪クラブだ。全国大会常連の愛知教員クラブや名古屋クラブと毎年リーグ戦で激闘を重ねている。
初対戦となる相手を前に、アップ前の円陣で安主将は「リアクション、コミュニケーション」を何度も口にした。
「この暑さの中、攻守でキツい場面が必ず出てくる。そうした時こそリアクション。下を向かずに顔を上げ、仲間の顔を見よう!」
六甲のキックオフで始まった。序盤からフェイズを重ねた3分、№8三﨑が先制のトライ。続く6分にはラビッツ防御網をつなぎながら突破してCTB鈴木が左中間にトライ。14ー0と六甲がペースをつかんだ。
ラビッツも負けていない。1回目のウオーターブレイクが明けた13分に六甲陣に猛襲、タックつながてつながれ逆襲のトライを許してしまう。
その後は互いに細かなパスミスや汗でボールが滑り膠着状態が続いた。だが22分、22㍍付近のマイボールラインアウトからモールを形成した六甲は慌てずじっくりモールドライブしてトライ。19対7と主導権を取り戻した。
この試合、特にFWで優位に立ったのが大きかった。特にフロントロー。安主将の「招集命令」で外崎、河内のフロントローがスクラムなどセットプレーの安定に貢献してくれた。
だが、それだけではなかった。
右PR・3番「デッツ永田」である。いつもは数分も経たないうちに足が止まり、シンドイ表情で「交代」をアピールするのだが、この日は違った。
「コラ―ッ!デッツ!さぼるな」
とベンチ側から厳しいゲキが届く。永田が龍谷大時代の恩師・そして啓光学園の御大・記虎先生が観戦に訪れていたのだ。試合前の一時では正座して恩師の有り難い言葉を頂いたデッツ。前半終了間際にはスクラムトライを奪った。
38-7でのハーフタイム。強化試合ということもあり、六甲は色々と選手やポジションを入れ替えて後半に臨んだ。
ラビッツもこのままではいられない。後半早々から六甲陣に迫ると、激しい当たりとブレイクダウンで六甲の反則を誘発、六甲のやや不味い守備もあって、立て続けに3トライを奪われ、38ー28とされてしまう。あせる六甲は強引に仕掛けるが逆にミ呼び呼び苦しい時間帯が続く。
そんな中でもひときわ激しいプレーを繰り返す男がいた。アメフトから15年ぶりにラグビーに帰ってきたLO油谷だ。「ヤバイっす。想像以上にシンドイっす」といいながらもブレイクダウンでパワープレーを連発。「昔のルールの感覚でいったから何回か反則もらいました」と頭をかきながらも頼もしいプレーをみせた。
後半2回目のウオーターブレイクのあと、落ち着きを取り戻した六甲は、藤井延、ルークなどのトライで再び突き放す。
最終的にはFL西原のトライで合計10トライを奪い62ー28でのノーサイドとなった。
「(外崎と河内の)後輩2人に感謝ですね(笑)。良い場面もあったし、課題もあった。だげどこの暑さの中、厳しい局面を体験できたのは大きな経験になりました。」(安主将)
猛暑の中、何回もウオーターブレイクを入れての試合だったが、互いにストレスなく試合ができたのは南藤辰馬レフェリーのおかげだろう。近鉄ライナーズを一昨年シーズンで退団。レフリーとしてもトップを目指して研鑽を続けている。六甲クラブとは帝京大時代に日本選手権で対戦経験があり、感慨深い「再会」となった。
62対28と最後は点差が開いたが、互いにリーグ戦にむけ収穫と課題ができた充実した試合だった。
近畿リーグの日程も決まった、これからの練習、試合がより重要なものになってくる。「復活」を今季のスローガンに掲げる六甲ファイテイングブル。
夏にどれだけ自分たちを鍛えられるか。
(三宮清純)