スタートライン
1月の全国初戦敗退から4カ月が過ぎた。
新シーズン、六甲クラブの初の実戦は3年振りに開催される「兵庫県クラブ選手権」。相手は芦屋クラブ。
「(関西セブンズなどもあって)15人制の組織だった練習はほぼ出来てない中での今季初ゲームとなります。ミスは出て当たり前だと思ってます。出る選手は伸び伸びと思い切りやってほしいと思います」
集合時に主将の小野明盛は「まず楽しむこと」と語った。
続いてゲームキャプテンを任せられたCTB北畑が続ける。
「ミスは起こると思いますが、ミスした後のリアクションに集中しましょう。慌てず。落ち着いて。楽しむことはもちろんですが、勝ちにもこだわってやりましょう!」
六甲のキックオフで始まった。
前半3分、テンポの良い球出しから六甲は敵陣深く切り込み、最後はSH伊藤が左隅トライ。この日はWTBに入った安部が難しい位置からのコンバージョンも決めて六甲が7ー0と先制する。
だがその後がいけない。ブレイクダウンで簡単にボールを奪われると一気に芦屋の逆襲にあってしまう。11分にはゴール前の反則時に遅延行為を取られ、1人がシンビン一時退場。直後に芦屋に1トライを返され7-5。緊迫した状況が続いた。
芦屋クラブはターンオーバーから反応が素早く、球際も厳しくしつこい。事前にポイントとしていた戦術を六甲はなかなか実行することができない。
それでも20分、フェイズを重ねてゴール前にラッシュ。最後はFB藤井延が右中間に飛び込みトライ。人数が1人少ないなかで点を取り返し、チームを落ち着かせることが出来た。
その後、細かいミスはあるもののトライを重ねて31ー5でのハーフタイムとなった。ゲームキャプテンを務める北畑は
「(初戦としては)良い感じで来てますが、やはりファーストコンタクト。外されると一気に苦しい展開になりますよね。そこはしっかりと止める、ズラされても必死にしがみついて球出しを遅らせたりしましょう」
と修正点をあげた。リザーブスタートの小野主将も
「もっとFWはしっかり立ってプレーする意識を持とう」
と確認点を上げた。
後半、六甲は一気にメンバーやポジションをガラリと変えてSOには19歳になったばかりの斉藤春希をSOに起用して臨んだ。後半10分には50歳になったWTB井上を投入。再三ボールを受けゲインラインを突破する動きを見せた。チームの記録を塗り替える?50歳でのファイテイングブル公式戦出場。多くの世代のメンバーが、今ある力でラグビーを楽しんだ。
8トライを奪って48ー19でのノーサイド。
「楽しみながら勝てたのは大きな収穫」と小野主将は語る。
同時に課題も沢山見えた試合でもあった。
また1カ月後、芦屋クラブと激突する。次に戦う時は芦屋クラブもより強力なチームとなっているのは間違いない。
今季の近畿リーグは、より強力なチームが揃い激戦が予想される。既に他のチームは社会人や大学と
の練習試合を重ねていると聞く。
「楽しむ」ことを1つのテーマにしている小野主将。その楽しむ「密度」によってチームの成長も大きく変わってくる。
自分もチームももっと強くなればなるほど楽しみの密度も濃くなってくる。厳しい練習も互いに励まし合えば楽しく乗り越えられる。
勝利の先の笑顔をみんなで分かち合うために。
六甲ファイテイングブルが、また新たな気持ちで走り始めた。
(三宮清純)