1・7 全国大会観戦記 | ROKKO RUGBYFOOTBALL CLUB OFFICIALBLOG

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重く、遠すぎた「1点差」

 曇天の本城陸上競技場に響き渡るノーサイドのホイッスルが六甲陣営の胸に冷たく鋭く突き刺さった。

 19-20。わずか1点差の結末。涙を流して歓喜するやんばるクラブと呆然となる六甲FB。ラグビーの神様は非情なコントラストを六甲に与えた。

 2年ぶり29回目の出場となる全国大会。体調不良などで急きょ一部のメンバーが入れ替わったものの、程よい緊張感でキックオフの時を迎えた。

「今日、この試合を迎えるために、マネージャーやスタッフ、遠征に参加出来なかったメンバーなど多くの支えがあってできます。スタンドには家族や友人も応援に駆けつけている。勝つことが最大の恩返しになる。メンバーはプライド背負って思い切りやろう!」(北畑副将)

「やることは変わらないです。フォーカスは自分自身に」

岡田主将のかけ声のもと、23人の六甲戦士が勝負のピッチに飛び出していった。 強烈な風下からのキックオフ。バックスに自信を持つやんばるクラブはSO渡口の強烈に伸びるキックを武器に、徹底したキック攻勢で、六甲陣で試合を進めていく。六甲はアタックを仕掛けて行くが、随所にやんばるの重いタックルとブレイクダウンでターンオーバーを許すなど、なかなペースがつかめない。「取りどころ」のラインアウトでもノットストレートでチャンスをつぶしてしまう。 逆にやんばるクラブは走力あるランナーや徹底したキック攻勢で六甲を自陣に釘付け。8分、17分、20分、37分と確実にPGを刻み続け、気付けば0ー12と差を広げられてしまっていた。 前半終了直前、六甲もSO中村がPGを狙うが、猛烈な強風にボールが戻り失敗。0ー12でのハーフタイムとなった。

 イメージ通りにいかなかった前半。ロッカールームで、はやる気持ちを落ち着かせるように、互いに言葉にして修正を図る。

 「前半追い風の中、トライを許さなかったのは大きい。風上にまわる後半、前半我慢した分、思い切って攻めよう!」

 勝負の後半、お返しとばかりにSO中村が敵陣深く蹴り込んでいく。一方のやんばるも必死の防御で六甲の前進を許さない。逆に後半6分。逆風をついてSO渡口の4度目のPGが決まり、0ー15とされてしまう。 六甲はHB陣をSH谷、SO北畑に変えて、流れをかえて勝負に出る。展開のテンポが早まり、PR李、LO木曽が力強い突進を見せる。11分、左に回ったボールはWTB江本に渡り、182㌢の長身をいかして左隅にトライ。5ー15と、ようやく反撃の狼煙を上げる。

 だが直後の15分、六甲のミスからやんばるが大きくゴール前に迫り、SO渡口が右隅にトライ。5ー20と再び点差は「15」と開いてしまった。

 慌てず、急いで、正確にー。時間との戦いにもなった六甲。SO北畑が効率よく敵陣に斬り込み、FWがラッシュをかける。

20分、ラインアウトからモールを押し込み、岡田がタッチダウン。山下のコンバージョンも決まり、12ー20。

 続く35分にはPR李が右中間に飛び込み、山下のゴールも決まって19ー20。さあラスト5分、六甲は最後の勝負に出た。

 最後のラインアウト、モールに持ち込みたいところだったが、ここでまたもや痛恨のノットストレート。次のプレーでやんばるにボールを蹴り出され、ノーサイドの笛が鳴り響いた。

 「ヴァーーッツ!」

 言葉にならない叫びを上げながら悔しさを全開に表した。

 「前半、風下で攻めるのか蹴るのか中途半端になってしまい、それがミスは反則につながり、PGを刻まれてしまった。後半は積極的にしかけてトライ取れたが、要所要所で焦りがあったのか、ミスが出てしまい追いつくことができませんでした」(北畑副将)

 一方のやんばるクラブはミスも少なく、勝つためのマインドセットが統一されて素晴らしいチームだった。

 志半ばで「今季終了」のシャッターが降りてしまった六甲ファイテイングブル。帰りの新幹線があるため追われるように感傷に浸る間もなく帰途についた。

 初めての全国大会を経験する選手も多かった。80分はあっという間だった。イメージ通りのプレーはできたか?そこにエナジーはあったのか?現実はしっかり受け止めなければならない。

 「『この敗戦があって良かった』と思えるように、来シーズンも頑張ります」

 ファンクションで岡田主将は悔しさを隠してコメントした。 今季も多くの人々の支えを感じて戦ったシーズンであった。

 様々なラグビー人生を歩んできた多くの世代がめぐりあい、競い合い、楽しむクラブラグビー。

 大学や社会人でなくても必死に取り組む仲間がいる。互いを支え合いながら、自分たちでチームやクラブを作っていく。

 仕事や家庭もあるけど、チームのために身体を張る充実感、仲間と勝利を喜ぶ瞬間、情熱はやっぱり楽しいし、胸が熱くなる。

 つまづいても何かをつかんで何度でも立ち上がれ。

 六甲ファイテイングブル。

 今はただ走り抜けるのだー。(三宮清純)

 

※試合写真は九州協会にご提供いただきました。

©️K.R.F.U Photo by N.Takayama