全国大会準決勝観戦記 | ROKKO RUGBYFOOTBALL CLUB OFFICIALBLOG

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ROKKO FIGHTINGBULL / REDWING

何度でも何度でも

 ロスタイムはあと3分。点差は4点差。

 逆転を信じて、六甲は最後の力を振り絞りアタックをしかける。

 ベンチ、観客席からは悲鳴に近い絶叫が響く。

 10数回以上のフェイズを繰り返すが強固なタマリバの防御を崩せない。

 そして攻め疲れて人数が少なくなった所でターンオーバーを喫し、タマリバFL小橋川にゴールまで走り切られた。

 瑞穂に落ちる夕焼けとともに、2015年シーズンの六甲ファイティングブルの戦いが終わった。


 「準備に余念はありませんでした」(谷主将)

 過去の戦績は3勝5敗。勝っても死闘を繰り返してきたタマリバに対し、何度もミーティングで対策を練った。FWは名古屋戦での反省を生かしてデフェンスを徹底してきた。

そして何よりも仲間の「特別な想い」を背負って、選手・スタッフはこの大一番に臨んだ。

 風下からのキックオフ。衰え知らずの39歳SO福田の変幻自在のゲームメイクで攻め込んで来るタマリバに対し、六甲は対策の成果を見せる。タマリバ戦では実に10年ぶりの先発となるFL伊藤が真っ向から波状攻撃に立ち向かう。

 互いに一歩も引かず鈍い衝撃音が響く。東西トップクラブのプライドが激しくぶつかり合い、前半途中まで均衡はなかなか崩れず、手に汗握る時間が続いた。 

 強烈な風下からのアタック。数少ないチャンスを生かして六甲は敵陣に入る。数回フェイズを重ねてSO越村のパスはCTB前田へ通ったかと思われたが、スローフォワード。先制のチャンスを逃した。

 逆に前半22分。タマリバは展開してきた右ライン際をWTB畑が個人技で巧みにすり抜け先制のトライ。ゴールも決まり0-7とリードを許す。

 「一つのプレーで落ち込まない。次のプレーで取り返す」
インゴールで集中し直した六甲は再び敵陣へ。34分。安定したスクラムからFWがラッシュ。タマリバに盛り返される場面もあったが、最後はHO加來がわずかに空いたスペースをついてポスト裏に回り込んだ。

 前の名古屋戦は諸事情で無念の欠場。「速く戦いたくてウズウズしてました。2試合分、チームに貢献したい」との言葉通りの「スイカ泥棒トライ」。越村のゴールも決まり試合は7-7の振り出しに戻る。

 37分。再び瑞穂がわいた。自陣10メートル付近でボールを受けたWTB三木が躍動する。味方もフォローにつくのが難しい韋駄天が、ひらりひらりと防御をかわすこと6人。最後は右中間に飛び込んだ。


 越村のゴールも決まり14-7。その後、前半終了間際のタマリバの猛攻をしのぎ、風上に回る後半に向けて期待を膨らませながらのハーフタイムとなった。

前半あれだけ攻め込まれながらも盛り返した。ロッカールームは熱い情熱で充満する。

「落ち着いてコミュニケーション。(風上の)アドバンテージを生かしてエリアで確実に得点を取っていこう」

前半におかした反則「7」への修正点も確認。勝負の後半へ六甲戦士が飛び出していく。

 しかし後半早々の反則でゴール前ラインアウトを許し、モールからタマリバ№8安部にトライを許し、ゴールも決まり再び14-14の振り出しに。わずかなチャンスを見逃さない敵の集中力に再び緊張が走る。

 後半9分、ハーフライン中央付近でタマリバが反則。タッチで敵陣かと思われたが、「まずスコアしてチーム内を落ち着かせよう」(谷主将)と、ショットを選択。SO越村はいつものルーティンでゆったりのびやかに右足を振りぬき、45メートル先のポストの真ん中に蹴り込んだ。

 17-14とリードしての11分。六甲が思い切ったアタックをしかける。

 FWがフェイズを重ねて左に渡ったボールをFB玉川が持ち込み防御を突破する。


 すかさず谷が切り返しゴールラインに迫る。



 タマリバ懸命の防御にあいながらも最後はSO越村にラストパス。越村がゴールに滑り込んだ瞬間、谷主将は思わずガッツポーズ。六甲陣営が最高に湧いた瞬間だった。

「この段階で少し、チームにゆとりができたのかもしれません」(谷主将)

 さらに追い込みをかけたい六甲。敵陣22㍍付近で絶好のマイボールラインアウトを得たが、痛恨のノットストレート。このあたりからタマリバのペースになってくる。

 風下での前半のデフェンスで予想以上に選手に疲労が蓄積したのか、防御がややゆるくなってきた。

「タマリバのペースで長い時間やりすぎましたね。相手のボディブローが効いてきた」

 スタンドから戦況を見つめる前六甲主将の鎌田が分析する。 

 タマリバは一度ボールを確保すると、SO福田がスペースを大きく使い左右に振って攻め込んでくる。六甲も懸命に盛り返すが反則を繰り返し→速攻を許しさらに厳しくなってくる。ようやくつかんだペナルティも敵陣深くを狙おうとしてノータッチの悪循環。ラスト20分が六甲にはあまりにも長かった。

 27分、相手パスを故意にノックオンしたとして、WTB和田がシンビン一時退場。一人少なくない間にタマリバは再びモールからFL高がトライ(ゴール)を決めて24-19に。34分にはCTB寺田のタックルが相手の襟にかかり、六甲はあまりに痛すぎる2人目のシンビン退場。

 「これで僕らには、相手が13人しかいないという安心感ができた」(タマリバ福田)

39分、数的有利を利用して、タマリバは昨季早大の翼・WTB荻野が逆転のトライを決めた。


 10点リードを守りきれなかった。

 勝つ要素はたくさんあったのに勝ちきれなかった。

 前後半合わせて「15」の反則、ポイントでのセットプレーのミス。わずかなミスが命取りとなった。

 逆にタマリバの反則はわずかに「4」。伝統のコンタクトフィットネスと、反則しない分厚いデフェンス。ここぞのターンオーバーの集中力は素晴らしく、「力負け」を感じる六甲メンバーもいた。

 

 「(全国のトップが集まる)準決勝の壁。やっぱり厚いですね」

谷主将は悔しさをしっかりとかみしめながら続ける。


 「昨年(対北海道バーバリアンズ、24―24)よりも悔しいです。ただ、負けなかったということが僕たちに慢心を作ったのかもしれません。(自分たちにプライドと自信を持たせるために)事あるごとに『去年は負けなかった年』と言ってましたが、考えてみれば負け惜しみですね。この1年、やはりどこかに慢心があったのだと思います」

 六甲ファイティングブル22回目の全国大会は道半ばで終わった。

 しかし、人生はチャレンジである。

 負けた時、何をつかんで立ち上がるかで男の価値は決まる。

 ノーサイド後すぐに行われたファンクションで、六甲戦士たちの気持ちと視線は既に来季を見据えていた。

 「負けたことで新しいものを得ることができたと思います。また頑張ります」(谷主将)


今季も多く想いを背負って戦ったシーズンでした。

たくさんのご声援を感謝申し上げます。


六甲ファイティングブル

今はただ走り抜けるのだー。

(三宮清純)