師走に掛時計を色々とオーバーホールしています | 路地裏の骨董カフェ

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アートとふるもの好きが嵩じて、明治、大正、昭和初期のインテリアや雑貨を取り扱う古物商を始めました。また、古時計や蓄音機などを中心に修理・調整をしています。
引き続き情報交換をお願い致します。


ブログの更新も久々になりました。11月から12月の初旬にかけて、有難い事にShopの時計が新しい主人の元に旅立って行きました。
整備済みの時計も少なくなってきましたので、最近は掛時計を主に修理しています。
インスタにもアップしていますので、振り返る感じとなりますが、ご容赦ください。
まずは、昭和30年代中期の愛知時計を、オーバーホールしました。


昭和初期の掛時計に比べると、機械もコンパクトな設計になっています。全体的に部品も小さくなった関係でゼンマイを巻く穴の位置の間隔が短くなり、文字板の4時や8時の穴で隠れやすかった所が、綺麗に出ています。


ちょっとした改善ですが、視認性が良くなってスッキリした印象です。
この時計は、宮型のオーソドックスなデザインで、昭和30年代らしいレトロないい雰囲気です。
一枚板を加工した時計に良くある事ですが、板の割れが出ていましたので、キズ隠しで軽く補修をしています。


振り子室のガラスは面取りで、スリットと星のカット加工がされています。精度も落ち着きましたので、近々Shopに上げようと思います。


次は、明治30年代に作られたアメリカウオーターベリー社の八角10インチ掛時計をオーバーホールしました。
箱の裏に、Drop Oct.Guilt のラベルが残っています。また、文字板は当時のオリジナルが綺麗に残っています。

幸いゼンマイ切れもなく、板に修理記録が書かれています。明治36年が一番古い年代のようです。機械は何度も修理メンテナンスをされています。最後は、平成23年の修理記録がありました。
注油して様子を見ましたが、下の様に、ここまでゼンマイが広がっても振り子が動き続けています。普通は、もっと広がる手前で振り子は止まってしまうので見事な調整です。


このように動きは問題ありませんが、時間とともにやはり塵や埃は溜まってきます。過去の職人さんの調整に敬意を払いながら、丁寧に分解清掃をしました。8年ぶりの汚れは、下の写真のようにやはり出てきます。


ホゾの磨きや詰めを行って、組み上げました。
振り子を吊るさなくても、振り竿の元気が良いですね。



この時計は、箱の振り子室周りが補修されています。風防ガラスと振り子室のガラスも取り替えられています。おそらく地震などの影響で、破損したのではないかと思います。
ボンドの補修は、硬さとテカリが違いますし、形も歪んでいましたので、一旦バラして膠で接着し直しました。木が収縮して隙間が空いた所は、膠で埋めて、硬化後に接着面のツヤを消して違和感の無いようにしています。




こちらは、慣らしの動きは問題がないようですので、箱に組み込んで、もう少し時間を追い込みたいと思います。経年の枯れ具合は、時間を経ないと出せない味で、この時計の表情ですネ。
さらに、明治中期頃の船時計を入手しましたので、こちらもオーバーホールする事にしました。


風防ガラスのヤニや油汚れが酷い状態ですが、文字板の状態は悪くないようです。
スモセコの針が欠損しています。
また、文字板を外して分かったのですが、右のゼンマイのコハゼが外れて、ゼンマイが広がったため、機械が外せなかったようです。
ベルを先に外して、知恵の輪のように傾けながら、足を抜き、撞木を抜いて漸く機械が抜けました。


機械は、四角にAマークのアメリカのアンソニア製でした。紙の文字板は当時のままの様です。
裏側の時計修理の保証シールは、中途半端に破れていましたので、丁寧にお湯で濡らしてオリジナルのラベルのみ残しました。
また、ゼンマイのコハゼは、ハンダ痕を綺麗に払って、新たに真鍮でバネを作りました。

この船時計は、中国上海の中国・日本貿易会社向けにアメリカで作られたもののようです。
これだけ綺麗にラベルが残っているのも珍しいですネ。

機械の方は、積年の汚れとサビを落として組み上げました。幸いテンプが綺麗に生きていました。
真を磨き、揺れ見を調整し、今回は、受けネジの交換部品がありませんでしたので、受けネジの底も変形を磨いて馴らしました。




テンプも元気に復活しました。しばらく慣らしで動かしたのちに、箱に組み込みたいと思います。
2台共に130年近く前の時計ですが、蒸気機関車と蒸気船を乗り継いで、アメリカからはるばる日本にやってきて、国内でも何代も受け継がれて、戦禍も免れて今なお残って、当時のようにちゃんと動いているのは、色んな経緯が重なった運もあり素晴らしいですネ。
まだ、完成ではありませんので、油断はできませんが、もう少し様子を見ながら仕上げていきたいと思います。
添付写真数に限りがありますので、全部載せられませんでしたが、完成しましたら、またアップしますね。