【そして貴方にも魔の手が】


 〈特殊詐欺の種類〉

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 (画像はネットから借用)


 詐欺とはいえ、個人間の踏み倒しから日本最大の被害とされた豊田商事の2000億円まで様々だが、時代の節目、ことに社会の変革期は要注意だ。高齢者だけではない。若者だって狙われている。平成や令和の前には、このような詐欺があった。

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 ピンポ~ン!

 詐欺師 「○○銀行の“方”から参りました。私、この地域を担当しております〇〇と申します。いつも当行を御利用いただきまして有り難うございます」

 顧客 「どういった御用件でしょうか」

 詐欺師「はい、間もなく元号が変わります。ご存知かと思いますが、お客様のキャッシュカードやクレジットカードは平成から令和に書き換えませんと使えなくなります。もう切り替えはお済みでしょうか」

 顧客 「えっ、そうなんですか? 知らなかったなー」「どうすればいいんでしょう」

 詐欺師「あらら、まだお済みでない。 弱りましたねー。このままだと使えなくなってしまいますよ。預貯金のみならず、クレジットや公共料金の引き落としまで・・。これから申請しても一週間から十日は掛かりますしね」

 顧客「困るなー、それって。なんとかならないんですか」

 詐欺師「う~ん、ではどうでしょう。〇〇様にはいつもお世話になっておりますので私が便宜を図って差し上げましょうか。新社会人になった早々、電気、ガス、水道、それに携帯電話まで止められたのでは大変ですからね。特別ですよ」

 顧客「是非、お願いします」

 詐欺師「では、キャッシュカードとクレジットカードをお預かりします。御本人かどうかの確認のため暗証番号を仰って頂けますか

 顧客 「〇〇〇〇ですが」

 しばし顧客データと照らし合わせるふりをして…

 詐欺師 「確かに間違いございませんね。ではこれをお預かりして参ります」

 顧客 「本当に助かります。どうか宜しくお願いします」

 令和になっても届かないことから問い合わせをすれば・・

 顧客 「グシュッ・・😂」

 人は弱い。行名を聞かずとも銀行の二文字だけで騙されてしまうとは。高齢者だけではない。社会経験に乏し若者なら尚更である。時代と共に進化する手口は巧妙になるばかり。しかもこの先にはAI詐欺が控える。声のみならず本人までが登場するのだ。科学を駆使して、あの手この手で騙してくるのではなかろうか。

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【暗躍する“保証人”ビジネス】

 こうした詐欺とは異なるが、もうひとつ心配事がある。保証人のことだ。この数年、少子高齢化に伴う財源不足から、福祉や医療の制度改革も推進の一途にある。国(厚労省)の締め付け厳しく赤字運営は許されない。結果として、高齢者、それも身寄りのない単身者は受け入れがたいシステムだけが構築されてゆく。

《単身高齢者の推移》
(内閣府 高齢者社会白書より)


 今でも、救急隊からの要請であれ、単身高齢者は歓迎されない。たらい回しが常である。治療費の不払いのみならず、退院(死亡)後に引取り手がないと困るのだろう。富裕層や一部の生活保護受給者を除けば、招かざる客(患者)でしかないのだ。

 そこで登場するのが“保証人代行”である。勿論、今でもそうであるように慈悲に満ちた団体(人物)だって実在するだろう。だがとても足りない。加速度的に増え続ける高齢者と引き受け手不足の乖離は如何ともしがたい。オレオレや還付金、マルチ商法といった詐欺の被害総額は年間で約2、3千億とされるが、保証人ビジネスはこの比ではない。未曾有の(単身)高齢化社会にあって、その市場価値たるや10兆円は下るまい。

 本来、こうした仕組はボランティアであるのが好ましい。でも、リスクは計り知れない。場合によっては、入院、介護と終生、全責任を負わねばならない。依頼人の資金枯渇なら莫大な金銭的負担まで覚悟しなくてはならない。ならば、この先も(一部の有資格者を除き)増える見込みはない。

〈生涯未婚率の推移〉
(画像は厚労省データより)

 緊急入院や介護では保証人(の代行業者)を選べない。弁護士や司法書士といった有資格者だけではとても手に負えない。背に腹は代えられない。詐欺だと分かっていても頼まざるを得ない時代がやってくる。2020年代の末には3人に1人が、そして2人に1人が生涯を独り身で通す社会を迎えるのだ。景気の先行きによってはさらに早まるだろう。全財産を奪うだけの保証人代行が、ビジネスとして認知されないことを願うばかりだ。