欧米に台頭する排外主義の影響もあって、多くの国が難民の処遇や、それに伴う移民問題で揺れている。トランプの復活で、その勢いは増すばかりにある。フランスのみならず、あのドイツでさえナチズムが急伸しているとか。この先、世界各国に蔓延したなら、どうなってしまうのだろうか。


 確かに移民には問題が山積する。異民族との融合だけに一朝一夕にはいかない。常に混乱が付きまとう。ことに不法移民はそうだ。だから単一民族で済めばそれに越したことはない。だが現実は厳しいもの。民族の枯渇(人口減少)は国の存亡にも関わるのだ。一昔前なら植民地を確保し、そこから奴隷を連れて来て底辺を担わせることで解決したかも知れないが、今はそうもいかない。結果、残された道は、純血を守って自滅するか混乱を受け入れても存続を計るかの二者択一なのである。

 下記を見て頂きたい。

「世界の『移民人口』国別ランキング」


1. アメリカ:50,632,836人 
2. ドイツ:15,762,457人 
3. サウジアラビア:13,454,842人 
4. ロシア:11,636,911人 
5. イギリス:9,359,587人 
6. アラブ首長国連邦:8,716,332人 
7. フランス:8,524,876人 
8. カナダ:8,049,323人 
9. オーストラリア:7,685,860人 
10. スペイン:6,842,202人

❋(1970年から2020年まで50年間の移民総数であり、戦前戦後を含めれば、この数倍であっても不思議ではない)


❋(人口に占める移民の割合は、米国15.4%、ドイツ19%、サウジアラビアは39.3%である。とりわけ湾岸諸国が高く、UAEの移民数843万人は人口比で85.3%、クウェートは298万人で69.8%と、これらの国々は移民によって維持されているといっても過言ではない。米国であれ元を辿ればほぼ全員が移民なのだから)

 これは主要各国の移民数(率)だが容認国は総じて先進国である。旧ソ連圏からの移民が多数を占めるロシアのような例外はあるものの、長い間、世界経済の牽引役を果たしてきた。

 理由は言うまでもない。健全な人口の推移にある。上位各国は、その二割から過半数を移民が占める。米国であっても約五千万人の移民なくしては成り立たない。不協和音はあるものの、それを凌駕する内需と生産活動が世界屈指の経済力を牽引しているのだ。だから、トランプでさえ合法的な移民まで排斥しろとは、一切言わない。欧州だって然り。英独のみならず、排斥運動で盛り上がるフランスにしても、600万人から1000万人もの移民が国力の向上に寄与してきたのは紛れもない事実なのである。

 もし移民がなければどうなっていただろう。健全とされる米国の人口(合計特殊出生率)構成や、回復基調のフランスの出生率であれ、その基盤は流入によるところが大きい。各国の実数から移民数を差し引けば分かるが移民がなければ現在の国勢など氷解に等しい。出生率は日本並か、それ以下なのだ。しかも、流入者が齎す出生数を差し引けば、さらに下がる。もし移民がなければ、欧米先進国とはいえ少子高齢化で疲弊し「既にこの世から消え失せていた可能性が高い」と言うことだ。

 更には我が国との決定的違いは処遇であろう。あくまで『帰化』なのだ。不法移民はあるものの、国籍を取得する以上、一定の義務を負う。一部、仕事を奪われるといった不平不満はあるにせよ、その多くが国家の屋台骨を支えているのも紛れもない事実である。陸海空は疎か、NASAまでが多国籍軍(群)なのだから。

 その点、日本はどうか。帰化も、その殆どが“在日”をカウントしたものであり、これらを除けば世界最少(の部類)に位置する。あくまで『就労』であり景気次第では何れ追われる運命にある。当然のこと公僕としては採用されない。現在の出生率は一世代毎の半減を意味する。そう、今年誕生した子供が出産年齢に達する頃、我が国の出生数は20万人台にまで落ち込んでしまうのだ。

 人手不足は深刻になるばかり。自衛隊だけは奥の手があるものの、これとてどうなることやら。何せ、団塊世代の1/10でしかない世代人口では、徴兵制を敷いたところで満足な補充すら出来るか否か。警察や消防だって同じだ。こうした分野を維持しようとすれば、それだけ全産業が崩壊の危機に直面してゆく。

 かつて(1990年代から2000年の初頭には)人口減少は『ロボットが救う』といった文言で溢れた。それも『2020年までには』であった。ロボット大国だけに誰もが信じた。社会の隅々で活躍する姿を。それがどうだ。省力化に結び付いた分野など極一部でしかない。それ以上に深刻になってしまった人手不足は如何ともしがたい。

〈インフラの老朽化で人が住めなくなる地方〉
(過去記事)

 大変なのは国防や治安だけではない。老朽化で電気、ガス、水道、そして通信といったインフラは尽く遮断。輸送体系はボロボロ。医療や福祉は機能不全。サービス業界までが崩壊寸前にある悲惨な現実。巷に氾濫する『少子高齢化社会はAIが救う』が虚しく聞こえる。少子高齢化のピークは今現在なのに。これでどうして間に合おうか。やはり『底辺の拡大』なくして何も解決しないと思うが。

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《余談》

 一方、「外国人にまで我々の税金が使われるのは納得出来ない」とする声もあるが、これってどうなのだろう。ならば、外国人の多い自治体ほど疲弊しているかといえば、そんなことはない。外国人就労の多い市町村に限って財政は豊かであり、その消費によって街全体が潤っているのだ。 障害者や高齢者に要する福祉財源も含めて。

 〈高齢者犯罪の推移〉
(内閣府、高齢者白書より)

 犯罪に関しても同じことが言える。外国人絡みの事件ほど大きく取り上げることから、さぞかし犯罪の温床かと思いきや、それもない。犯罪率で見る限り日本人より遥かに健全なのだ。軽犯罪から凶悪事件まで増えるのは高齢者ばかり。それも倍々ペースだから始末が悪い。このままでは外国人の増加に伴う治安の悪化を心配している間に、この国は高齢者による犯罪天国になってしまうだろう。