《インフラの老朽化は地方切り捨ての始まり》
この時期、多くの家庭で神棚には榊を供えているかと思う。でも、この榊って、そ殆どが中国からの輸入であるのを御存知だろうか。国産なんて微々たるものでしかない。榊だけではない。仏具だって然り。今や、寺院であれ欄間彫刻に装飾品と、その多くを海外(中国や東南アジア)に依存する。一般的な寺院なら新調の仏像までがそうだというから驚く。最早、純然たる国産だけで賄えるものなど、ほとんどないのではなかろうか。
〈今や神事に欠かせない榊までが中国産だ〉
物だけではない。人手不足も厳しさを増すばかりにある。インフラを支える担い手がいないのだ。ことに末端の土木は深刻で、この四半世紀で業者は4割、作業員に到っては6割も減少したとか。外国人すら全く寄り付かず、高齢化するばかりの現場では、あと数年で人員ゼロになる試算もあるというから恐ろしい。
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《施設の現状》
令和元年度末における、全国の下水道管渠の総延長は約48万km。 標準耐用年数50年を経過した管渠の延長約2.2万km(総延長の5%)が、10年後は7.6万km(16%)、20年後は17万km(35%)と今後は急速に増加します。 令和元年度末で約2,200箇所ある下水処理場でも、機械・電気設備の標準耐用年数15年を経過した施設が約1,900箇所(全体の86%)と老朽化が進行しています。 さらに、降雨時の確実な稼働が必要な雨水ポンプ場においても、令和元年度末で全国に約1,600箇所ある雨水ポンプ場のうち、設備の標準耐用年数20年を経過した施設が約1,200箇所(全体の75%)と同様の傾向にあります。 持続的な下水道機能確保のため、計画的な維持管理・改築事業の実施が必要です。
(以上、国土交通省ホームページより)
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(農業従事者の平均年齢)
今や、こうした工事業者の平均年齢たるや70代の半ばに達した。農業従事者の高齢化が話題になるが、その比ではない。農業(68.7歳/2020年末現在)を遥かに凌いでいるのだ。しかも、いくら求人したところで、就労目的の来日外国人ですら誰一人として入ってくれない。成長著しい本国を捨ててまでやって来たのに、わざわざ薄給かつ過酷な労働環境に身を置きたくない、ということか。
(資料は国交省調査より)
現在、電気・ガス・水道といったインフラの老朽化が大きな社会問題になってきた。所謂『2030年問題』である。中でも総延長48万kmに及ぶ下水道管は深刻という。既に耐用年数に達している部分も多いだけに、もう待ったなしの状況にあるのだ。一箇所でも破損すればライフラインは寸断されてしまう。同時多発的に始まればもう収拾は付かない。地球12周分もある配管を、誰がいつ、とうやって交換するのだろうか。
(劣化する上下水道管と遅れる交換作業の乖離)
人手がない。国には財源がない。自治体にもない。期待した外国人は誰一人として来ない。下水道管だけではない。電気、ガス、通信とて例外ではない。何れ途絶える運命にある。これでは生きていけない。そこで人口が希薄になった地域から順に放棄する計画が着々と進められている。無駄な投資を避けるべく過疎地の住人をまるごと都市部へ移住(集住)させて乗り切ろうというのだ。
《腐食する配管》
〈この先、地方(過疎地)は放棄を基本とし、地域ぐるみの都市移住だけが促されてゆく〉
するとどうなるか。先ず農業が崩壊する。言うまでもなく耕作地は郊外に位置する。しかも大量生産が基本である。ならば文明の恩恵なくして成り立つ道理はない。インフラの途絶えた地域で、どうして生産活動など出来ようか。林業や水産とて同じであろう。大資本によって組織的に事業化された一部を除き立ち行かなくなってゆくのだ。それも、ハイテク機器を駆使する以上、優れたオペレーターを確保せねばならない。だが、IT技術者は世界各国から引く手あまたで、どこもかしこも激しい争奪戦の真っ只中にある。果たして、この衰退著しい日本に、どうして来ようか。ITを支える世界最大の人材供給国はインドである。このインド人から見ても、OECDの中で日本は、魅力のない(稼げない)国の筆頭格なのだが。
《過去記事/集住の果てに》
少子高齢化で存亡の危機に瀕する国家を維持するには集約(集住)も止むなしかも知れない。だがそれだけで万事解決なのか否か。戦争は疎開によって国民の尊い命を守ったが集約は国土の壊死そのものでしかない。地方切り捨てからは滅亡しか生まれないのだ。物も人も外国頼りでしか機能しなくなってしまった悲しき日本。それも風前の灯になろうとしている。有識者会議の常套句「AIが解決する」も既に実用化してなくてどうして間に合おうか。必要なのは未来ではない。今現在なのに。インフラさえ維持出来なくなるまで少子高齢化を放置したツケは限りなく大きい。
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《おまけ》
〈郷土が生んだ“スーパースター”の共演〉