カクシンハン「マクベス」その3
最後に、これはちょっと惜しいな~と思った点。
マクベスが王位に付くことを祝う宴の場所は、コンビニという設定で、
祝宴のご馳走はコンビニにある缶ビールやポテトチップス。
そこに、バンクォーの亡霊が女子高生姿で現れる。
なぜコンビニ、なぜ女子高生?
「君の名は。」というバンクォーの台詞+「前前前世」のBGMに繋げるため?
マクベスは亡霊に怯えてパニックになり、スナック(ポテトチップス等)を床にぶちまける。
祝宴→悲惨なカオスを表現するためにポテトチップスを撒き散らかすところまではまだ許せるとして、それを口一杯に入れたまま台詞をしゃべるのは…
どんな演出意図があるのかわからないし、そんなに効果に違いがあるのだろうか。
あと、女子高生姿のバンクォー亡霊。白倉さんの女子高生姿は似合っていてかわいいのですが、
意外性にびっくりするのと、がちゃがちゃ動き回るのでそこに目を奪われる。
結果、亡霊に怯えるマクベスや、それを必死になだめる夫人の印象が薄くなった。
ラストのBGM(Stones)。カクシンハンで使われる音楽の選曲はいつもとても好きですが、
今回音量が大きくかぶり過ぎ、マクダフの「マクダフは月足らずで、母の腹を裂いて生まれた」が聞こえづらい。
最後の場面。血に染まって倒れたマクベス(+寄り添う夫人)が、壁に映し出された赤い円の前に立っていて、
勝利軍のマルカム王子達が、手前の椅子の上に体を伸ばしている。
(=観客が、立っているマルカム王子達の頭上から、地上に倒れているマクベスを見下ろす視線になる)
視覚的にはとても面白いのですが、台詞は発声しにくくなる。
さらにBGMがかなりの音量なので余計に声が通りづらい。
あの体勢を採るなら、BGMの音量を下げないと、もっと長期の公演なら声を潰す人が出そう。
次回の「夏の夜の夢」が楽しみです。
カクシンハン「マクベス」その2
3)岩崎MARK雄大さん(ヘカテ、ロス)
魔女のヘカテとして登場する場面。
魔女のイメージと言えば普通は「黒い衣装」ですが、今回黒と赤はマクベス夫妻の色なので、それ以外の役は、魔女さえも真っ白。
ドレスのようにまとった白い布を一枚一枚放ちながら進む姿はとてもオーラがありました。
Double, double toil and trouble,
Fire burn and cauldron bubble.
You get, mockin’ mockin’, touchin’ a girl!
You get, mockin’ mockin’, touchin’ no boar!
Major touch, at your money, cocky king air!
(湯気もくもく、立ち上がれ、湯気もくもく、立ち昇れ、
魔女たち、あっちゅー間に掻き消える)
上2行の本当の台詞と、ラップで遊んだ下3行が絶妙(笑)
韻を踏む(rhyme)を文学的に高めたシェイクスピアは、今のラップ音楽の源流かも…
そして、Double, double toil and trouble~を生の台詞で聞くと、
そのリズムの面白さもよくわかって面白い演出でした。
視覚的にも、カップヌードル(魔女の大釜)→湯気(白い紐)が無限のように
ずっと繰り出されて客席まで取り囲むのが本当に魔法のようで良かった。
4)鈴木彰紀さん(マルカム王子、魔女)
マルカム王子の品があり、ダンスも美しくて素敵でした。
台詞もさすが、さいたまネクストシアター出身の方らしい、シェイクスピア王道の感じ。
5)白倉裕二さん(バンクォー、マクダフの息子)
アクションの動きと、お芝居の反射神経が類まれな役者さん。
中背で細く見えますが、ダビデ像のような美しい筋肉の付き方。
発達した僧帽筋がすごい!とガン見していました(笑)
6)鈴木智久さん(ドナルベイン王子、侍女)
冒頭、ドナルベイン王子だけがポテトチップスをお箸で食べているのは、やはり王子だから?英語の発音もきれい。
最後、逃亡先の海外からドナルベイン王子が戻ってくる場面、
ドラえもんのタケコプターのようなものを頭に付けて飛んでくるのが笑えました。
→続くカクシンハン「マクベス」その1
1/28(土)昼と1/29(日)夜の千秋楽、カクシンハンのマクベスを観劇。
私が今までに観たマクベスは、長塚圭史さん演出(マクベス夫妻は堤真一、常盤貴子)と蜷川幸雄さん演出のNINAGAWAマクベス(市村正親、大竹しのぶ)ですが、
カクシンハン版はとにかく斬新な演出と、若い熱量に溢れる舞台でした。
1)マクベス(河内大和さん)
今までのマクベスの最期は、良心の呵責に耐えかねて、どんどん自滅し、弱って果てるイメージ。
河内マクベスは、バーナムの森が動き出して自分の運命を悟り、それを受け入れてからはもう迷いがない。
全力でマルコム王子軍に立ち向かう姿は潔く、かっこいい。
リチャード三世でもそうでしたが、どちらも「敗者」でありながら、その最期が美しくかっこいいのが、河内さんの魅力。
2)レディ・マクベス(真以美さん)
初めて拝見したジュリアス・シーザーでのアントニー役が鮮烈な印象で、
リチャード三世のアン王女、ヘンリー六世のマーガレット王妃も好きですが、
レディ・マクベスは圧巻でした。
まず髪型がスキンヘッド!これは、「一卵性双生児のような夫婦」という狙いらしい。
さらに、前の国王ダンカンを迎える場面では、お団子を作ったアップに赤いかんざし、
他の場面で金髪ウェイビーに一部赤いカラーリングなど、
「よそ行き」の時は世間に合わせた髪型にしている。
でも自分の城の中ではスキンヘッド。つまり、本来の自分でいる時は「夫と同じこの髪型がいちばん!」という思いが伝わってきた。
基本的に真っ赤な衣装で、色の白い真以美さんにとてもよく似合う。
戴冠式で大きなサングラスのマクベス夫妻が登場した場面は、他の人の感想にもありましたが、シド&ナンシーのようにパンクな二人でした。
(レディーガガのようでもあった)
マクベス夫人は、とにかくひた向きに夫を愛している。
ある意味(もし子供がいたとしたら)良妻賢母。
一途で真面目な彼女が、一人の人(一つの事)だけを深く愛し過ぎた結果、視野が狭くなって起きた悲劇という感じが強い。
だから悪女ではなく、あまりにも純粋。
そして、マクベスとの間に子供がいなかったからこそ、夫と一心同体の感じが強いと感じた。
演出で好きなのは、ダンカン王を殺したことで精神が不安定になり、王の血の幻覚を見ている場面。
原作では「(手に付いた)血の匂いが消えない、アラビア中の香料を振りかけてもこの匂いを消すことができない」など、夫人は独り言を言っている。
カクシンハン版では、舞台手前に降りた彼女は無言のまま、手をずっとこすり洗う仕草を続けている。
ここの真以美さんの表情と、手が擦り切れるんじゃないかと心配になる程ずっとしつこくこすり続けている姿がまさに狂気で、すばらしかった。
それより前の場面に戻って、国王の妃となってから、無言で舞台のいちばん奥中央に腰掛けている場面。
台詞はないのに、ただ腰掛けているだけで王妃の威厳、圧倒的な存在感があり、印象に残りました。
その後、二人の転落の道が始まり、前面に幻覚の血に染まった手を洗うマクベス夫人。
さっき夫人が無言で腰掛けていた同じ位置(いちばん奥中央)に腰を掛け、
放心して虚ろな表情のマクベス。
ここもマクベスの河内さんの表情にとても引き込まれ、また二人が運命共同体であることも強く感じて好きな演出。→続く