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カクシンハン「ヴェニスの商人」その1

カクシンハン「ヴェニスの商人」12/2の千秋楽を観劇。

11/20には宮藤官九郎さん演出の「ロミオとジュリエット」を観て、どちらもとても面白かった。

 

ヴェニスの商人は、映画館で観ただけの蜷川さん演出版が好きで、特に市川猿之助さんのシャイロックが圧巻。それからシャイロックに感情移入して観るようになった。

でもそれを超える位、予想以上だったカクシンハン版+河内大和シャイロックでした。

 

カクシンハンはジュリアス・シーザー以来ほとんどの作品を拝見していますが、

「リチャード三世」、「冬物語」、「ヴェニスの商人」がmy best 3かな。

 

蜷川版での高橋克実アントーニオからバサーニオへの愛は、忍ぶれど滲み出る感じでしたが、白倉裕二さんアントーニオの愛は「溢れゆくこの想い」レミゼ風w
 

河内さんと白倉さんの台詞の力がさすがで聞き惚れる。

河内さんは、最初に3つの箱選びに挑戦するオセロス大公を演じている時は衣装が

覆面状態でお顔が見えませんが、(ある種)姿が見えない状態になると、台詞だけの演技力がよりはっきり感じられる。

白倉さんのアントーニオとランスロットの二役演じ分けも楽しい。
 

鈴木真之介さんの演じるグラシアーノの抱擁は、なかなか痛そうでしたw

 

演出の木村龍之介さんが大好きなパイプ椅子が三つ、天井から吊り下げられた美術。

パイプ椅子はポーシャ邸のシャンデリア風だったり、金銀鉛の選択の箱になったり、アントーニオの牢での拘束を示したり。
 

BGMBrown SugarFly Me to the Moonなど。

ジェシカとロレンゾーの交換日記をポーシャが朗読する時は侍女ネリッサがエレキギターで伴奏していましたが、なんとなくヘドウィグ・アンド・アングリーインチの楽曲を思い出す音楽で、とても雰囲気に合っていて素敵でした。

あれはオリジナル曲なのでしょうか??
 

エンディングで、ポーシャの判決によりどん底に落とされたシャイロック。

蜷川版では、憤懣やるかたない表情の猿之助さんが無言で、空の一点をカッと睨みつけていた。

カクシンハンでは、アントーニオとシャイロックが向かい合ってのヒップホップ風ダンスで終わる。

シャイロックの無念は、一見蜷川版ほど強調されてはいないように見える。

でも… シャイロックはずっと黒ずくめの衣装ですが、物語の始めから判決を受けて一度退場するまでは、ずっと(ラインの入った)白ソックス。

それが最後のダンスだけは黒ソックスで、シャイロックの魂の死を象徴しているように見えました。

 

ヴェニスの商人は、子供の頃はシャイロックが強欲だったから罰が当たったという風に見ていましたが、

ユダヤ人が抑圧・差別されてきた歴史・社会の縮図で、むしろシャイロックはひどい被害者。

裁判の場面でも、シャイロックは原告なのに、ポーシャが演じる裁判官に「ユダヤ人!」と何度も言われ、名前でさえ呼んでもらえない。

そしてほとんどがアントーニオの味方である傍聴者を含め、裁判場面の台詞はもう、ヘイトスピーチに近い。

これがもし、アントーニオがユダヤ人で、シャイロックがキリスト教徒だったとしたら?

裁判官はさっくりと、「あなたは負債2000ダカットを3倍の6000ダカットにして受け取るよりも、彼の肉1ポンドが欲しい訳ですね。じゃあそうしなさい。」となりそうな…

(想像するのも怖い)

 

そして、アントーニオが自分の財産や生命さえ懸けても惜しくないほど愛しているバサーニオとの関係。

バサーニオは、浪費のあげく首が回らなくなったのを、アントーニオの愛に甘えて大金を借りに来る。

しかも借金を清算したいのはポーシャに恋をして結婚したいから。

そして、ポーシャは多額の遺産を相続した娘だと言う。

アントーニオが傷つくことなど全く気にする素振りも見せないし、

ポーシャとの結婚も勘ぐれば財産目当てかもとさえ思える。

そしてバサーニオの頼みを、嫌な顔一つせずに引き受けてしまうアントーニオ。

若くて二枚目、ちやほやされて、自分が困っても誰かが助けてくれると

人を当てにしている。

アントーニオさん、そんなしょーもないヤツに甘い顔をしてお金を貸していたら、

バサーニオは懲りずにまた浪費→借金を繰り返すと思う。

そんなバサーニオを演じた石毛翔弥さんは、役のイメージにぴったりの爽やかなイケメンでした。

 

バサーニオ、ハムレット、ロミオ、ヴェニスの二紳士のプローテュース。

シェイクスピアが描く若くて二枚目の登場人物って、中身はうーーーん。。。という人が多いなーww

 

ところで、上演台本の台詞の1ヶ所、非常に気になったことがありましたので、次の記事に書きます。

12/21 風姿花伝「The Beauty Queen of Leenane」

風姿花伝プロデュース「The Beauty Queen of Leenane

脚本=マーティン・マクドナー

翻訳・演出=小川絵梨子

出演=那須佐代子、鷲尾真知子、吉原光夫、内藤栄一

 

12/21()夜、当日券で観劇。24()が千秋楽、残り3回です。ぜひ観て頂きたい!

 

マーティン・マクドナーの名前は聞き覚えがある…と思ったら、

『ロンサム・ウェスト』(The Lonesome West1997)

『イニシュマン島のビリー』(1996)を観たことがあり、森新太郎さんが演出されたイニシュマン島は大好きな作品。

1996年上演のThe Beauty Queen of Leenaneは、彼の劇作家としてのデビュー作というのが驚き。

 

娘のモーリーン(那須)、その母(鷲尾)、モーリーンの想い人パド(吉原)、パドの弟レイ(内藤)の四人だけのストレートプレイ。

モーリーン母娘と、レイが暮らすアイルランドの田舎町リナーンが舞台。

The Beauty Queen of Leenaneというのは、パドがモーリーンのことを「リナーンの美しき女王」と愛情をこめて呼ぶ愛称。

 

モーリーンは40歳の独身で、体が不自由な70歳の母と二人暮らし。

たぶん結婚して家を出た二人の姉達は、母の世話をモーリーン一人に押し付けている。

リナーンでは職がないので、パドはロンドンの建設現場で働いている。

 

体の自由がきかない母は、一日中揺り椅子に座ったまま、レトルトのような簡単な自分の食事はもちろん、お茶すら自分では淹れようとしない。

モーリーンが仕事から帰るやいなや、「お粥作って」「お茶を淹れて」と命令する。

モーリーンはそんな毎日にとことん嫌気がさしていて、母娘は激しい口喧嘩を繰り返す。

 

そんな時にロンドンから帰郷したパドと再会したモーリーンは、自宅に彼を招いて一夜を過ごす。

朝を迎えて二人に居間で会った母は、スリップ姿の娘を罵り、モーリーンが10年前に精神病院に入院していたことをパドに暴露する。

パドは、入院していたことは全然問題ないと言って家を去る。

モーリーンとパドはお互いに想い合い、ロンドンからアメリカへの移住を決意したパドは、モーリーンの一緒に来てほしいと手紙を書く。

二人が結ばれることを全力で阻止しようとする母。そして…。

 

風姿花伝は客席が7列くらいあり、その中央が通路になっているが、通路の中ほどにモーリーン家の玄関ドア(ドア枠とドアノブだけ)が置かれていて、キッチン+リビングのLDK?の場面だけで話は進む。

リビングの奥にはドアがあり、モーリーンと母それぞれの寝室に繋がっているが、ドアより奥は見えない。

この舞台設定が、他人の家を覗き見しているような感覚になって面白い。

 

まず、那須さんと鷲尾さんの演技が上手いので、いがみ合い・罵り合いがすごい迫力。

集音マイクも全くなし?なのかもしれませんが、お二人とも声量というか、声の圧がすごい(笑)。

 

この作品は、二つの社会的なテーマを持っている。

一つは、ロンドンなどイギリスで働く時にアイルランド人として受ける差別。

それはパドも経験しているし、モーリーンが精神を病んだのも、ロンドンで働いた時に受けた差別が原因している。

 

もう一つは、親を一人で介護する娘。

実の母娘なのにあんなに怒鳴り合い、憎み合い、最後は…

あんなになったのは、モーリーンが精神的に病んでいたからで、極端な例外だと、若い観客の方は思うかもしれない。

 

そうじゃない。どんなに仲の良かった親子でも、一人きりで自宅で介護していると、気づかないうちにだんだん介護する側の精神が疲弊していく。

(モーリーンの母のように、頭は確かで、自力でトイレに行けて一人で留守番できる状態でもストレスは溜まる。ましてや、認知症・徘徊・寝たきり等になると、24時間目が離せないようになり、仕事はおろか普段の買い物に行くのさえ大変になる。)

 

介護ウツ、介護自殺、介護殺人は現実のほうがすごいかもしれない。

社会福祉が充実している北欧やヨーロッパではそんな問題は少ないのかと思っていたが、アイルランドでも日本と同じ問題があるのだなと思った。

 

ではなぜモーリーンは、母を老人ホームなどの施設に預けたり、姉達に助けを求めたりしないのか?

姉達に言っても拒否される(「(姉達は)クリスマスの時に半日一緒にいただけで音を上げた」)とか、経済的な問題ももちろんある。

でも、それだけではなく、モーリーンは(精神的に参っていた過去を忘れられず)

現状を変えることが怖い。母との二人の暮らしから、外の世界に踏み出すのが怖い気持ちが大きいのだと思う。(だからパドとの一夜も、最後までは行けないで終わっている。)

 

そして、なぜ母は、モーリーンとパドが結ばれることをそんなにも邪魔するのか?

二人が結婚してこの家を出たら、自分は施設に入れられて捨てられる、という自分勝手な思いもあるが、モーリーンと一緒に暮らすことは、彼女にとって虐待される危険もはらんでいるのに。

 

母は、モーリーンの「現状を変えることへの恐れ」をよくわかっている。

このまま自分と一緒の生活なら、モーリーンが他人に傷つけられることはない。でもロンドンで娘が深く傷ついたように、また外の世界に出ればどんな目に合うかわからない。

という、歪んではいるが娘への愛情・心配もあるのだと思う。

 

精神病院から退院した時は、確かにモーリーンは母に守られていた。

長年二人で一緒にいると、共依存のようになってそこから抜け出せないのかもしれない。

 

パドの弟レイも、小さな田舎町での閉塞感から、ドラッグなどに手を出しそうになり、彼もかなりのトラブルメーカー。

最後に母が亡くなり、葬儀から家に戻ったモーリーンに、レイは「パドは親戚の娘と婚約した」と告げる。

結局、母が願ったようにモーリーンとパドは結ばれない。

ショックを受けたモーリーンはレイと大喧嘩になり、レイは家を飛び出す。

そのレイに向かって、(母がいなくなった)揺り椅子に座ってあれこれ命令で話すモーリーンが、母とそっくり。

このまま歳を取って、自分もあの母親のようになって死んで行くのか…

とモーリーン自身が思い、観客もそう思わせる秀逸なラスト。

 

1幕でパドと再会して一晩を自宅で過ごす場面で、那須さんと吉原さんがとにかく色っぽい。普段地味でおしゃれにも気を使っていないモーリーンが、本当にキラキラと輝いて綺麗になる。

あれが彼女のいちばん幸せな時間だったのだ。そして、母とレイのせいで迎える結末を見ると、本当にモーリーンが可哀そうでたまらない。

 

イニシュマン、ロンサムウェストと比べると、リナーンの女王がいちばん暗いラストかもしれない。

ずっしりヘビーでヒリヒリする所もあるけれど、好きな作品。

小川絵梨子さん、森新太郎さん、栗山民也さんの演出する作品は大好き。

ラスト3回、一人でも多くの方に観て頂きたいと思う作品でした。

「ビッグ・フィッシュ」2/15 アフタートーク(追記)

今回ビッグ・フィッシュでのアフタートーク・イベントは計3回で、その初回メンバーは霧矢大夢さん、藤井隆さん、赤根那奈さん。司会は中山昇さんでした。

藤井さんはもちろんですが、関西ご出身の霧矢さんはお話が面白い!

ほぼお二人が話していて、赤根さんは聞き役が多かったですが、もうこのトーク単独でお金を払う価値があると思えました。

以下、(話の順番が前後していますが;;)覚え書きレポです。

 

◆2/17追記
「げきぴあ」さんに、詳細なすばらしいレポがアップされました!
特に、エドワードとジョセフィーン@結婚式のお話をしている、藤井さんの写真がブラボーです!
(でも、↓のきりやん語録は載っていないので、よろしければこちらもどうぞ(^^♪)
 

1)『間もなく中日を迎える所まで来て、雰囲気はいかがですか?』

三人そろって口にされたのが、川平さんの盛り上げ方がすばらしくて、とにかく楽しい雰囲気に包まれたカンパニー。

霧矢「ムードメーカーという言葉では足りない。。。あれは、なんて言うんでしょうか…」

藤井「ムードです!(きっぱり)」

霧矢「()() そうですね、もう川平さんがムードそのものですね」

赤根「カーテンコール後、グリースのダンスがすごくて。」

霧矢「川平さんの最後の衣装が、ジャンパーで、ちょっと映画のグリースに似ているので…。つっぱりヤンキー・ダンス()

赤根「舞台本番で相当エネルギーを使っていると思うのに、袖で、私たち(キャスト)に見せるためだけに踊ってくださるんです。」

 

2) 『好きな場面は?』

藤井「(妊娠した)ジョセフィーン(赤根さん)が病院のベッドに寝て(夫ウィルと赤ちゃんのエコー画像を見ながら)歌う、あの歌が大好きです!」

と、ほぼワンコーラス自分で歌うww ←歌も素敵でした!

 

霧矢「言っていいですか!?私は関西出身で吉本新喜劇を見て育ったので、藤井さんとの共演は夢のようなんです。

サンドラ(霧矢さん)が大学当時に婚約者のドン・プライスを振る場面。

あそこで、藤井さんの演技が毎回違って。

(未練たっぷりのドンが)今日はなんと、私の肩にあごを乗せてきて()

もう笑いを堪えるのに必死なんです。」

本番では霧矢さん、客席に背を向けるようにして肩を震わせていました()

 

3) 『自分の役以外にやってみたい役は?』

霧矢「高い所が好きなので、巨人のカール!3メートルの高さを経験してみたい。」

藤井「さっきのあの歌が大好きなので、ジョセフィーン!今日歌ったので、夢が叶いました」

赤根「2幕の大勢で、アメリカの旗を持って歌うダンス・ナンバーをやりたい」

 

何の質問から発展したか忘れましたが、

(ウィルとジョセフィーンの結婚式の場面で)

藤井「皆さんどう思います??

(エドワード(ウィルの父=川平さん)がジョセフィーンをリフトして激しく踊りますよね!

妊娠5ヶ月なのに。初期でしょー!大丈夫なの!と、いつもどきどきして見ています。」

霧矢「無事に産まれて良かったよね。ほんま、ええ嫁です。」

 

霧矢さんのワルツを踊るシーンが素敵という話題から→

霧矢「いやいやいや。娘役だった赤根さんの前で踊るのは恥ずかしくて。

私、舞台上で性転換しまして。」

(笑い崩れる藤井さん)

「だから、ワルツでもリードする=踊らせ慣れていて、踊らせられ慣れていないんです。

女歴が浅いので。

彼女(赤根さん)は娘役トップだったから、どうしたら川平さんとスムーズに踊れるか、練習したいと思って。

『からだ貸して!』って言って練習させてもらいました。」

藤井「からだ貸してって!() 不良とかが「顔貸せ」ってあるけど」

 

霧矢「夫に愛されて、見つめられて歌を歌ってもらう場面でも、気恥ずかしくて。

彼女に、ああいう時どうしてるの?とアドバイスを求めたりしました。」

 

「つっぱりヤンキーダンス」、「舞台上で性転換」、「女歴が浅い」…

とっても上品な雰囲気でいながら、きりやん語録最高でした。

 

他に、ビッグ・フィッシュをご覧になる方にぜひお伝えしたいお話。

藤井「皆さん、お気づきになりましたか?

GC階(中2階)の(バルコニー)手すりが、LED照明で線が入っているの。」

(ブルーグリーンの線です)

「天井もブルー系の照明で。ROLLYさんがとても素敵なことを言われたんですよ。

『お魚のお腹の中にいるみたいだね』って。」

本当に手すりと天井の照明は日生劇場ならではで、しかもこのビッグ・フィッシュのためのもの。私は1階席で、言われて初めて振り返ってみたのですが、本当に綺麗。

1階席の方は振り向いて、GC2階席の方は、一度1階に降りてご覧になることをオススメします。

 

ビッグ・フィッシュ本編も、特に川平さん・霧矢さんが役にぴったり。

物語もですが、川平さん・霧矢さんを始め、キャストの皆さん全員、踊る踊る!

ダンス・ナンバーが最高です♪

 

ダンスで特に好きなのは、魔女の後ろで踊る女性ダンサー6人。

サーカスの場面?などで、菅谷真理恵さんが棒に付けたリボンを回しながら踊る所。

小林由佳さんの人魚☆

 

藤井さんのダンスは逃げ恥で拝見していましたが、

2幕、エドワードの戦争話→ほぼ全員でのダンス・ナンバー。

センターで黒い衣装のカウボーイにご注目を!キレッキレでした。

巨人カールも、3メートルの高さで踊っている!

 

一度は絶対に観てほしい!と強く思う、素敵な作品でした。