フェイクスピア 作品の内容【以外】ですごいと思ったこと
作品の内容【以外】で「すごい!」と思ったこと。
1. 座席の種類
S席 12000円、A席 8500円、サイドシート 5700円、サイドシート25歳以下 3000円
ここまではプレイハウスの平均的な販売席種。
それから追加販売で↓↓
追加S席 12000円、
補助席 9000円 ※1階席に設置したハイチェア(ひじ掛けなし、浅い背もたれあり)、
2階追加席 7000円 ※2階席に設置したハイチェア(ひじ掛けなし、浅い背もたれあり)、
S席当日引換券 12000円、
補助席当日引換券(見切れ無) 9000円 ※丸椅子(ひじ掛けなし、背もたれなし)、
補助席当日引換券(見切れ有) 9000円 ※丸椅子(ひじ掛けなし、背もたれなし)、
A席当日引換券(見切れ有) 8500円 ※パイプイス(ひじ掛けなし、背もたれあり)、
ベンチシート当日引換券 4500円 ※浅いベンチ(背もたれなし)、
2階立ち見当日引換券 3000円
プレイハウスは立ち見含め補助席も比較的多く出る劇場だが、この席種の数は最高記録なのではないか。
その全席種がほぼ完売で、文字通りぱんぱんの満席状態。コロナ後、これほど【全公演で】満席の劇場はあまり見たことがない。
(レ・ミゼラブル等も補助席含め完売だと思うが、立ち見がないので受ける印象が違う)
2. 観客の集中度
これだけ満席状態で、開演前も客席で会話する方は少なく、かなり静か。
上演中も咳一つ聞こえないくらい、客席の集中度がすごく、静かな中に熱気を感じる。
そして終演後は混雑を避けるための規制退場で、座席によっては退出まで待ち時間がある。
上演前の「携帯電話、音の出る機器は電源からお切りください」等を始め、規制退場についても場内アナウンスがない(!)。
そして何列の人が退出OKなのかは、劇場スタッフさんが掲げるプラカードを
「お待ちください」→「ご退出ください」にひっくり返すことで合図される。
退場までの待ち時間も、会話をする人はほとんどないし、「お待ちください」なのに
違反して先に出る人も見かけず、マナーの良さが感動的だった。
(ふだんはマナーの良いお客さんがほとんどの某Sパブリックシアターで、J事務所の方が主役の公演では、退場OKになっていないのに座席を立つ若い女性を多く見かけた)
これは(観客自体のマナーを守る意識もあるが)、カーテンコールから引き続き
静かな音楽がずっと流れていて、
作品の余韻に浸りたい気持ちを アナウンス等が邪魔しない心憎い演出が大きいと思う。
あの音楽はレクイエム(鎮魂歌)のように聞こえる。
3.プログラム
A) A5版のコンパクトサイズ
B) 篠山紀信さん撮影のキャスト写真が多数あり、主要キャストインタビューも詳しい
C) デザイン、紙質も良くて、価格は1300円!
野田地図はこれがスタンダードだと思うが、私が思う演劇プログラムの理想形。
(新感線の髑髏城みたいにやたら大きくて3000円とか、
やけにデザインに凝っていて他のプログラムとは違う変形サイズとかは
保管する際に迷惑 ←あくまで個人の好みですが)
そして今回すごいのは、ネタバレ皆無。プログラムを読んでも、
あの事故の固有名詞や場所、日時については全く記載がない。
野田さんと恐山住職代理の南さんの対談についても、直接的なネタバレの心配はほぼないと思うが、
冒頭に「この対談には本作の内容に触れる箇所を含みます。観劇後に読まれることをお勧めします」という丁寧な断り書きがある!
こんな断り書きは初めて見ました。
ネタバレ大あり!未見の方は読まないで頂きたいフェイクスピア感想
2回観劇。覚え書きメモのような感想です。
(※6/25: 数ヶ所加筆訂正。5-Aを追加、
4.に参照記事リンクを追記しましたので、ぜひご覧ください)
私は川平慈英さん世代なので、初めて見た時に「36年前」という台詞で、作品の中盤にはあの事故のことだとわかり、「頭を上げろ!」の意味も。
それでも終盤の事実の重さ、衝撃はすごかった。
また、その後他の方の感想なども読んで2回目に見ると、色々と伏線に気づいた。
1.まず、開演前。なんだか懐かしの洋楽ヒットメドレーのようなBGM…と思っていたが、
たぶん事故の85年当時の洋楽なのだろう。そこから物語への導入はもう始まっている。
(アブラハム役の川平さん。サイケなプリント柄のバンダナを付けた衣装の時はそれほどでもないが、ラストの制服の衣装でバンダナがないと、髪型がジョン・ボンジョヴィに見えて仕方がない)
そして開演時間近くに流れるのは大瀧詠一さんの「夢で逢えたら」。
2.冒頭で、白石加代子さんが「憑依型の女優なんて言われるが、女優になる前はイタコの修行をしていた。それをお話ししたのを野田さんが覚えていて(本作のヒントになった)」と言うのが、全部本当のことだと信じてしまいそうになるのがすごいww
3.イタコの白石さん「8月12日18時56分(XX秒?)にお願いしますというヤケに几帳面な予約があった」
4.最初のほうで、オタコ姐さん宛てに電話がかかってきて、それを受ける短い通話。
よく見ると、その電話(受話器)を差し出す年下イタコはラジカセのような大きさの本体を肩から掛けている。85年当時にあった携帯電話!
詳しくはこちらの記事を参照ください↓↓
【おもいでタイムライン】第9回:1988〜1985年、 “予感”の時代|TIME&SPACE by KDDI
5.白石さんが、橋爪さんの演じる「楽(タノ)」との会話で「それじゃ、タノは『塀の中の懲りない人』な訳?」 「塀の中の懲りない面々」は1986年のベストセラー小説。
5-A. 「昭和の~シクラメンのかほり~ (→香水のようだよ♪)」という、カラス達の台詞。
シクラメンのかほり(布施明さん)は、1975年の発売だが…??
と最初は思ったが、サビの歌詞は
「疲れを知らない子供のように 時が二人を追い越してゆく
取り戻すことができるなら 僕は何を惜しむだろう」
6.カーキ色のフード付きコートの人たちが 探知機で「声の箱」を探す場面。ヘリの爆音が流れていて、事故当時を思い出す。
7.妄想の飛行機へトランジット、滑走路などの台詞。
8.オタコ姐さんは、アブラハム+三日坊主の二人と一緒に(三人で)出発する時、キャリーケースを引いている。オタコ姐さんの髪型にも、意味がある。
9.イタコのいる恐山の背景として、舞台後方にずっとモノクロの斜面があるが、
気球での旅が始まり、気球が上るに連れて、ニュースで見た記憶にある山の中腹に見えてくる。
そして前面で芝居が進行する間に、数個の四角い椅子(座席)が斜面の左右に流れ落ちる。
しばらくすると、スーツケースが左右に流れ落ちる。
10.(気球が登場するより前だが)恐山としての場面で、斜面には大きな円形のモチーフが数枚立てられている。
最初は、イタコの神秘性を演出する美術?陰陽太極図みたいなもの?と思っていたが…
2回目に見た時に、あれは圧力隔壁だ!!と思った途端鳥肌が立った。
下手寄りの1枚の模様には破損して割れた部分を連想した。
11.3回くらいのカーテンコールが終わり、キャストが全員退場すると、
舞台センターの床上にはあの箱が残っていて、箱にだけ薄く照明が当たっているのが美しかった。
45歳より若い方で、あの事故をテーマにしたドラマやドキュメンタリーを見ていない方には、事故のことを知らなくてフィクションとノンフィクションの区別がつかないかもしれない。
逆に、私のようにかなり記憶に強く残っている、もしかしたら大切な人をあの事故で亡くした人が、何の覚悟もなく観劇したらその衝撃はすさまじいと思う。
たとえば東日本大震災や津波、原発事故をモチーフにした演劇を上演するとしたら、絶対にチラシやメディアでの作品紹介でそれには触れるのではないか。
36年前経っていても、観客がパニック状態に陥る可能性がゼロとは言えず、その演出のコントロール加減もとても難しいのではないかと思った。
36年前の事故がかなり印象・記憶に残っていると思っていたが、あのボイスレコーダーの内容は聞いた覚えがない。そして今回、「事故から15年後の2000年にボイスレコーダーを再録した音声がメディアに流出して一般に知られた」ことを初めて知った。
そして、「2000年に流出したボイスレコーダーは4チャンネルを編集したもので生データは現在も非公開のまま。
開示は遺族の当然の権利としている。事故後36年間、国や日航は調査資料の開示に応じていない」(Wikiより)
国や日航の担当者に、このフェイクスピアをぜひ(絶対に生で!)観て頂きたいと思う。
シェイクスピアの姿を借りた野田秀樹さんが示す「言葉の重さ」。
そして、映像や配信では絶対に代用できない「生の舞台の力」。
36年前のあの事故に限らず、今年はコロナの影響もあり、突然大切な人を失って「もう一度会いたい」という思いに駆られる人は多く、より深く響く作品なのではないだろうか。
「終わりよければすべてよし」藤原竜也・石原さとみ・吉田鋼太郎
「終わりよければすべてよし」
翻訳の松岡和子さんのプレ講義1h+#河内大和、#溝端淳平 さんを迎えてのアフタートークに参加。
1.シェークスピアの新たな挑戦
シェークスピアの喜劇、史劇、悲劇を経てロマンス劇と呼ばれる晩期の作品の先駆けとなる、1605年の作品。ここで作者は、今までの作品にはなかった新たな設定にチャレンジしている。
1)ヒロインが「手に職のある」女性である
2)ヒロインのほうが相手の男性より身分が低い(今までは女性の身分が高いor対等)
3)女性の登場人物に独白が与えられている
そもそもシェークスピアではっきりと女性が主人公である作品は少ない印象。
「お気に召すまま」のロザリンド、十二夜のヴァイオラ、ヴェローナの二紳士のジュリアくらいだろうか。
2.吉田鋼太郎演出の見所
後見人であり父親代わりの存在である王によって強引にヘレンと結婚させられたバートラムは、ヘレンを捨てて戦場に向かい、ハンサムな顔に重傷を負って帰国する。
バートラムの母である伯爵夫人に、召使のラヴァッチが「片方の頬に傷を負ってビロードの傷当てを付けている」と知らせる。この召使の台詞も、傷当てを付けている設定もカットされていることが多いが、吉田演出では「この負傷がなければ、完全なハッピーエンドではありえない」
二人がフランスで再会し、王様、バートラムの母、宿屋の母娘、軍の部下たちの面前で再婚が決まる→
最後に二人だけが残り、ヘレンはバートラムの傷当てを外してその頬にキスする
という、印象的な最後のシーンが作られている。
(でもプロデューサーによるとそこに気づかないお客さんも結構いるので、見逃さないでほしいとのこと)
3.ヒロインのヘレンはどんな女性か
ヴェローナの二紳士で、本作のヘレンと同じく、完全な片思いで、自分から逃げ出した旅先で他の女性に夢中になる男性に想いを寄せるヒロイン(ジュリア)を演じた溝端淳平さん。松岡さんは溝端さんに「ヘレンとジュリアは重なる所がある?」と質問。
「重なる部分はあるが、ジュリアのほうがずっと無邪気。ヘレンは、王様やバートラムの母、宿屋の親子など、バートラムの周囲の人間を全部自分の味方に付けて、(男性の立場からは)外堀から埋められていく怖さも感じる」
シェークスピアの新たなチャレンジで、ヘレンは女性であり、相手のバートラムよりもずっと身分が低いという二重のハンディがある。でも職業人であり、頭が良く、「バートラムの妻になる!」という初志を貫徹する意思の強さ。
そしてその目的のためには、自分でも「騙すような手段かも」と言いながらも決行する。
演じる石原さとみさんと松岡さんはテレビで放映された稽古場で、「一歩間違えるとお客さんから反感を買う嫌な女になりかねない」と話していた通りだと思った。
4.無理やり結婚させられたバートラムは、ヘレンをどうしてそこまで嫌うのか
台詞では「あんな貧乏医者の娘はごめんだ」と、ヘレンの身分の低さを理由にしている。
しかし、王が「身分の低さだけが問題なら、それは王の力でカバーする」と言っても彼の気持ちは変わらない。
バートラムは「馬鹿(思慮が浅い、若気の至り)だけれど、根っからの悪人でもないと思う」と溝端さんが言った通りの人物だと思う。
ヘレン自身の問題ではなく、父親の権威である王に無理やり自分の人生を決められたことに対する反発がいちばん大きいのではないかと思った。
あとは、当時はもちろん現代以上に厳格な階級社会であり、自分と同じ王侯貴族以外の、下級階級の人間は自分たちに仕えるものであり、妻・家族となるなんて考えられない=
相手の人間性を認められない差別意識もあったと思う。
5.藤原竜也さんのすごい所
溝端さんも河内さんも「藤原さんの演技はすごい」と。具体的にはあまり詳しく言及はせず。松岡さんは、ヘレンによる婿選びの場面で自分が選ばれた時に、一瞬ニヤッと笑みを浮かべる所に注目←それは鋼太郎さんの考えだったそう
私が見て驚いたのは…
王にヘレンとの結婚を命じられ、ヘレンと向き合う場面。鼻水を垂らしているのが見えて、
「え!この結婚が嫌なのはわかるけれど、泣くほど?」
そしてクライマックス。再会し、再婚が決まったヘレンとまた向き合う場面で、また鼻水。
もしかして「泣く」を意図した演技でなかったらごめんなさい。
でも二人の運命の転換点となる重大な二つの場面で、形は同じながら涙の意味は全く反対。
その二つの場面を対照的にくっきりと浮かび上がらせる効果があり、
ミュージカルで同じ旋律が流れるリプライズのようでした。
バートラムとして感情の起伏を、重大な場面でMAXに持って行く演技が圧巻でした。
6.その他(キャスト感想など)
アフタートークの講義では、ヘレンが宿屋の娘とのベッドでの入れ替わり(Bed Trick)を仕組む「バートラムに対する懲らしめプロット」、
バートラムの部下の軍人パローレスを、他の部下たちと一緒に懲らしめるプロットをまとめたタイムテーブル資料が配布された。
その表を見て初めて気づいたこと。
バートラムは、代々家宝として受け継いできた大事な指輪さえ与えるほど、宿屋の娘に夢中になってその思いを遂げ、その数時間後(真夜中)にパローレス懲罰に参加している!
(どれだけハイな精神状態なんだww)
パローレスや、十二夜のマルヴォーリオは、人間的に多少嫌なヤツかもしれないけれど、
罪を犯した訳ではないし、その懲らしめというか報復はやり過ぎじゃないか?と思う。
でも演じる横田栄司さんの演技力で、客席を爆笑させる面白さはさすが。