オレンジの悪魔、高雄を襲う。 | "楽音楽"の日々

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音楽、映画を中心にしたエンタテインメント全般についての思い入れと、日々の雑感を綴っていきます。

京都橘高校吹奏楽部の2度目の台湾公演が公式に発表されたのは、10月19日のことでした。このポスターと共に。

 

 

以前から噂されていたものの、これで一気に台湾は盛り上がったのでした。

台湾での最初の公演地は、南部の大都市・高雄。高雄公演を実現に導いた仕掛人は、この人。

 

高雄市長の陳其邁氏。この方、いつから京都橘のことを好きなのかは不明ですが、昨年の国慶節へ参加の折にも高雄公演を画策していたらしいです。その時は、新型コロナの規制とスケジュールの都合で断念。それでも諦めることなく根回しを続けて、京都橘の3月末の定期演奏会後に改めて依頼したそうです。実は、昨年共演した北一女から今年の創立120周年記念式典への参加依頼が先にあったらしいのです。それで、その時期に合わせた高雄公演が実現することになったとのことです。

 

京都橘を迎える準備は、完璧のように思えました。

 

 

 

 

12月9日土曜日。彼らは通常の授業を受けてから、空路台湾入りしました。当然夜の到着だったのですが、それにもかかわらず歓迎の嵐です。

 

驚くことに、彼らが15日に台湾を離れるまで完全に密着されていました。台湾では、世界的な大スターが来た時もこんな対応なんでしょうか?いずれにしろ、予想を上回る歓待ぶりです。

夜遅い到着だったので、台北で一泊してから翌日高速鉄道で高雄へ向かいました。

 

 

高雄市には、同様のイヴェントの実績があります。

10月に農大二高が高雄の港で演奏したイヴェントでは、ドローン・カメラも駆使してなかなか見事な映像を作り上げていました。今回の京都橘のイヴェントでは、それを上回る撮影規模であることも事前にアナウンスされていました。こちらの期待が高まるのも当然でした。

 

今回の台湾公演全体を象徴するヴィジュアル・デザインは、昨年のドラム・メジャーの最も印象的なポーズにサックスを組み合わせた素晴らしいものです。とってもわかりやすいですもんね。各イヴェントで共通のイラストを使ったのも効果的でした。

 

 

さて、12月10日。夕刻スタートの生配信を最初から見ることができました。

予定より早く始まった配信では、京都橘のリハーサルの模様から共演の各学校のパフォーマンスまでしっかり見れました。その間に、カメラの概要がある程度わかりました。ドローンが最低2機。クレーン・カメラも最低2機。セグウェイのカメラマンと、手持ちカメラが数名。これは「期待するな。」と言うほうが無理でしょう。

ここでは生配信の動画から、京都橘の本番のパフォーマンスだけを切り抜いたものをご覧ください。

 

 

マルチカメラで、特にドローンとクレーンの効果は絶大。普通ではなかなか見れないダイナミックな画角。なのに、京都橘の魅力を伝えるには、とても残念な出来でした。イヴェントの撮影としては合格のラインなのかもしれませんが、京都橘のフォーメーションのカッコ良さ、楽しさ、美しさが全く伝わらない結果になりました。多分、それぞれのカメラの素材は残っているでしょうから、編集し直して完全版をリリースして欲しいと思っています。この記事の最初に紹介した市長出演の動画をはじめ、高雄市が作る動画を何本か見ましたが、実に素晴らしい編集です。そんなセンスのある技術者が揃っている高雄で、編集し直すことは簡単なことだと思います。それに対して致命的なのは、マイクの位置です。おそらく後方の舞台らしき場所にマイクを置いていると思えます。そのせいで、パーカッションの音だけが大きくて、吹奏楽器の音は遠くに小さく収録されています。これはもはやプロの仕事とは言えません。ドラムメジャーが立っている指揮台の横に一本マイクを立てるだけで解決できることなのに・・・。残念だし、もったいないです。

高雄市のプライドにかけて、レストアしてもらいたいと心から願っています。

 

 

 

 

と、ここまで書いてきたところで、市長の公式チャンネルに新たな動画がアップされました。(27日午後です。)

 

 

全ての撮影素材を編集し直したもので、全編初出しの映像で構成されています。

そうそう、これ。見事な動画になっています。後半音と映像がズレていることには目をつぶりましょう。耳障りだったMCの声も極力ミュートされています。けれども、最大の懸案である演奏の音の改善がなされていません。もう、こうなったらプライドを捨ててアマチュア・カメラマンの動画から、音声を借りましょう。そうすれば、「公式動画」として高雄市の宝物の動画になることでしょう。

 

 

 

 

というわけで、やっぱり京都橘の魅力を伝えるために、アマチュア・カメラマンが撮影した無数の動画をチェックする、気の遠くなるような長い旅に出るワタクシなのでした。

 

今回のイヴェントでは、アマチュアの撮影に対する規制が相当厳しかったようで、多くの動画がアップされているものの皆さん苦労している様子が見えます。特に、撮影エリアとカメラの高さがかなり限定されていたようですね。皆さん、ご苦労様でした。

そんな中で、私がベストの一本だと思うのが、これです。サムネイルからして魅力的です。

 

 

この方、台湾における吹奏楽撮影の第一人者です。アメリカにおけるMusic213さんのような方です。日本では慶次郎前田さん、st.taketoさん、あるいはTsubame Planningさんのような方なのです。この方は、京都橘の昨年の台湾公演でも素晴らしい動画をアップされていて、個人的に最も印象に残っている撮影者なのです。厳しい制約のせいで、これ1本で全てを網羅しているとは言えませんが、こちらの動画を見ながら今回の京都橘のパフォーマンスを振り返ってみたいと思います。

 

 

実は、この前日に同じ場所で開催された「バルーンフェスタ」の生配信を予習のつもりで、ちらっと見ていました。豪華なパレードで、かなり楽しめました。多分、両日とも同じスタッフで、ダイナミックな撮影も同じテイストでした。これで、京都橘のパフォーマンスを多角的に捉えてくれるだろうと、期待は高まるばかりでした。

 

さて、予想通り入場はパレードでした。事前に発表された会場のセッティングを見て、入退場はパレードになると確信していました。

 

 

横に長い観客席へのアピールとしてパレードをするのは、当然のことですね。絶対無二の「パレードの橘」の魅力を現地の観客は感じてくれたでしょうか?

演奏しながら中央の場所へ整列するパターンは、過去動画をたどってみても京都橘初の試みです。リハーサルで軽く合わせただけなのに、いつものことのようにこなしてしまう彼らの対応力には、毎度のことながら感服してしまいます。

パフォーマンスの一曲目は、スタートにふさわしい「Winter Games」です。今回はテンポも落ち着いていて、凛とした雰囲気がグッとアップしているように感じました。「これは、期待できるぞ・・・」

そして、コンガのリズムから、次期部長の観客を煽るMC。これも京都橘では珍しいパターンですね。英語の間違いはご愛嬌として、このパターンは今後もやって欲しいと思います。

この曲は、Kool & the Gangの1980年リリースの大ヒット「Celebration」です。京都橘としてはオープンな場所での初お披露目ですね。イントロのホーンセクションのフレーズだけでこの曲だとわかる名曲です。私個人的にもとても大好きで思い入れのある曲なのです。私と同世代の方なら良くご存知だと思いますが、念のためオリジナルのMVをご覧ください。

 

 

今聴いても色褪せないエヴァーグリーンですね。

最初のメロディは、今期の京都橘が誇るテナーサックス5人衆。実に、カッコ良い。そして「キャ〜」のところでの各セクションの独自の振り付けが、いかにも京都橘らしくて抜群の楽しさです。ちょっと前まで演っていた「シーサイドバウンド」に替わって、これからの京都橘を代表するナンバーになりそうな予感がします。

 

ピアノのイントロだけで「キターッ!」と気分が上がる「September」。全国の吹奏楽団で大人気の熱帯ジャズ楽団ヴァージョンですが、京都橘のパフォーマンスは群を抜く楽しさです。実はこの編曲は、パートによってお休みの部分がかなり多いのです。そこで、演奏しない時にどうするかが課題ですね。「演奏しないなら、全力で踊っちゃえっ!」というのが彼らの結論です。

この曲での最大の聴きどころは、アルトサックス2人のソロのリレーです。この二人は全く異なるプレイスタイルながら、私個人的に「超高校生級」だと思っています。

一旦クールダウンするかのようなピアノのモントゥーノのリズム(サルサの典型的なリズム・パターンですね)からの、アルトサックス6人によるソリで更に盛り上がります。その間の他のメンバーによる「ぴょんぴょん」は、見逃し厳禁ですね。

そして、今回新たに付け加えられたコーダ(曲の最後の部分)は、実に効果的です。今まで突然終わる感じだったこの曲ですが、これでとてもわかりやすくなりました。

 

台湾では必ずアンコールを求められることを考慮して、その位置に「Sing,Sing,Sing」を持ってきました。もう安心して見ていられる安定の完成度です。

終了してから、すかさずドラムマーチで退場のパレードの形態になるところもスムーズな流れで見事です。更に、その選曲も良く考えられたものだと思います。パレードとしてはかなり個性的な振り付けの「Smoke On The Water」で観客の目を引きつけておいて、ラストに「星に願いを」でコンサートバンドとしての美しいハーモニーでその実力を見せつける構成。素晴らしいプログラムでした。

 

素晴らしい動画ですが、それでも捉えきれていない部分を、反対側から撮影したものが多数あります。こちらは更に規制が厳しくて、なかなかまともなものがありませんでした。そんな中で群を抜いているのが、我らが「慶次郎前田」さん。限定的な画角の中で、ファンが見たいものを漏れなく捉えてくれています。

 

 

安定の素晴らしい動画でした。いつも、ありがとうございます。

 

 

主催者発表では、このイヴェントの観客は85000人。「そんなバカな!?」と思っていたのですが、「ひょっとしたら、その位いたかもしれない。」と思わせてくれる動画をご紹介します。Takao walkerさん。この方は小型カメラを長いポールの先に付けて、観客の後ろを自在に動き回っています。広角レンズのカメラなので、観客の様子も見事に収めてくれています。

 

 

この方の動画は視点も独特で、この後の京都橘のイヴェントでも大活躍してくれています。

 

 

 

このイヴェントは、今期の京都橘のピークを見せつけたとても充実したパフォーマンスだったと思います。

 

 

 

 

 

これからも、台湾での京都橘について続けて書いていく予定です。

今年1年、私の拙いブログにお付き合いくださって、本当にありがとうございました。皆様これからもよろしくお付き合いくださいませ。来たる年が皆様にとって素晴らしいものになりますように。