宮田茂樹氏が亡くなりました。72歳でした。
彼の名前を知らなくても、私と同年代、70年代終盤から80年代にかけてJ-POPを満喫していた人にとっては、足を向けて寝られない音楽プロデューサーでした。
手近にあるCDを、ちょっと引っ張り出してみました。
彼は日本ビクターの社員として、数々のアルバムをプロデュースして来ました。
例えば、大貫妙子の3作目からの10年間。当然、彼女の「ヨーロピアン3部作」が含まれています。
竹内まりやのデビューから、達郎氏のプロデュースに移るまでの初期作品群。
EPOのメジャー・レーベル作品の、全て。
この3人の作品だけでも、十分にお腹いっぱいになるボリュームです。
他にも、鈴木さえ子、ムーンライダーズの作品、小野リサのデビュー・アルバム、バンド・ブームの中でもピカイチの音楽性を持っていたLITTLE CREATURESのデビュー・アルバムなどがあります。
更にフリーになってからもブラジル音楽に傾倒して、Joao GilbertoやToninho Hortaの作品も手掛けています。
大貫妙子の作品群は、リアル・タイムで死ぬ程聴きました。
その中でも、ドラマ主題歌になって最も知られている「夏に恋する女たち」を聴いてください。
この頃は坂本龍一のアレンジがほとんどで、敢えて「日本っぽさ」を排していたように思えます。
今聴いても、全く古さを感じさせません。
シュガーベイブやキャラメル・ママなどによって、日本の歌謡曲的なものからの脱却が試みられていましたが、なかなか商業ベースに乗らない時代でした。その中で、斬新さと商業的成功とを丁度良い塩梅で作り上げたのが、宮田茂樹氏の功績だと思うのです。
既に成功を収めているミュージシャンではなく、ほとんど新人といった人たちをメジャーに押し上げた手腕は、紛れもなくプロデューサーとしての感性に他ならないでしょう。
EPOがシュガーベイブの「Down Town」でデビューした時、元気でストレートな歌声にすぐにファンになってしまいました。
そんなイメージのまま数々のポップ・ソングをヒットさせました。そうそう、清水信之という素晴らしいアレンジャーを知ったのも、彼女のアルバムでした。
彼女の曲も、好きなものがたくさんあって迷うんですが、今回は、これ。「ハーモニー」です。
作詞作曲をしたEPOはもちろん素晴らしいのですが、まるでライヴ録音のような有機的なアレンジをした清水信之氏が見事です。
思いがけず、暑い時期に涼風を感じることができるサウンドですね。皆さんも、ちょっと涼しくなっていただけたら嬉しいです。
世界的にJ-POPがブームになっている最中、残念な訃報ではありますが、宮田茂樹氏の作品を改めて振り返ってみて下さい。どれも、素晴らしいですよ。
たくさんの美しい作品を、ありがとうございました。
R.I.P.