Jimmy Smithの「The Cat Strikes Again」 | "楽音楽"の日々

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音楽、映画を中心にしたエンタテインメント全般についての思い入れと、日々の雑感を綴っていきます。

私にとってのジミー・スミス(Jimmy Smith)は、なんと言っても1964年の「The Cat」です。
$"楽音楽"の日々-The Cat
ラロ・シフリン(Lalo Schifrin)のアレンジが素晴らしく、吠えるホーン・セクションにも負けないJimmyのオルガンが強烈にドライブしまくる、オルガン・ジャズの名盤ですね。


で、その名盤の録音から16年後に、再びJimmyがLaloを起用して録音した作品を紹介します。
1980年録音の「The Cat Strikes Again」です。
$"楽音楽"の日々-The Cat Strikes Again
私がこのアルバムを知ったのは、ほんの5年ほど前のことです。
JimmyとLaloの共演ということでどうしても聴いてみたいと思ったのですが、既にCDも廃盤になっていたのでその希望も叶いませんでした。
また、メジャー・レーベルではないので、再発も全く期待できませんでした。

そんな絶望的な状況の中、昨年突然リリースされたのです。
そこでやっと念願の音を聴くことができたのでした。

最初のリリースから、アルバム・ジャケットもスリーブも変更されていて、レコーディング・データが全くないのはもちろん、参加メンバーも不完全なものです。
あまりにもいい加減なお仕事で、ガッカリです。まぁ、音が聴けただけでも感謝ですねー。

早速、主なメンバーをご紹介。
生ピアノにRonnie Foster、ドラムスがGrady Tate、ベースはRay BrownとChuck Domanicoです。
ギターはDennis Budimir、Howard Roberts、Tim Mayの3人ですが、曲ごとのクレジットがないので、ギター・ソロがあっても誰が弾いているのかわかりません。
あとは、パーカッションのPaulinho Da Costaと5人のホーン・セクションです。

さすがにマイナーな作品なので、動画サイトでは1曲しか見つけることができませんでした。
とりあえず、その曲を聴いてみて下さい。「The Big Brawl」です。



この曲は、ジャッキー・チェン主演の「バトルクリーク・ブロー(The Big Brawl)」のテーマ曲です。
「燃えよドラゴン(Enter The Dragon)」のスタッフが再結集して、ジャッキーを世界に売り出そうと画策した作品だったのですが、残念なことに平凡な出来に終わってしまいました。
Laloの曲はなかなか魅力的なのですが、未だにCDはリリースされていません。
映画のサントラでは口笛のメロディが印象的なんですが、このヴァージョンではJimmyが弾くオルガンでフルートの音を再現しています。

さて、アルバム・ジャケットを見て下さい。
このジャケットに写っているオルガンが、この作品の主役です。

ドイツのメーカー「Wersi」が作った「Wersi Saturn W3T Organ」という、アナログ・シンセ・オルガンみたいなものです。
楽器のブランドに疎い私は、このメーカーの名前すら知りませんでした。
ちょっと調べてみたんですが、専門用語が多くてよくわかりません。
ただ、明らかにHammond B3では不可能な、ピッチベンドを使ったような音も聞けますし、この楽器の「売り」がフルートのような音を出せる!ということだったようです。
現在の日本メーカーの素晴らしい製品を知っていると、「トホホ」な「売り」ですが。

結論から言えば、この過渡期にある不完全な楽器を使ったことが、この作品の最大の欠点なのです。
あまりにきっちりしたクリアな音になっていて、ハモンド・オルガン独特の歪みがないせいで、とても痩せたサウンドなのです。
もし、Hammond B3を使っていたなら、この作品の魅力は3割増しにはなっていたはずです。


楽器への不満はこのくらいにして、楽曲の魅力をちょっとご紹介しましょう。

「The Big Brawl」は、GradyのファンキーなドラムスとChuckのグルーヴィなベースがリズムを支えていて、爽快なナンバーに仕上がっていると思います。

Laloが音楽を担当した1967年の映画「暴力脱獄(Cool Hand Luke)」のテーマ曲「Down Here On The Ground」は、Ronnieの生ピアノが美しい作品になりました。
$"楽音楽"の日々-Cool Hand Luke
もともとこの曲は、サウンドトラックでWes Montgomeryが演奏して以来、ジャズのギタリストに人気が出ました。
Grant GreenやGeroge Bensonもカヴァーしていますし、Oscar Petersonのピアノも楽しむことができます。
ひょっとしたら、Laloの作品の中で最もカヴァーの多い曲なんじゃないでしょうか?

そして、私が先日記事にしたDizzyのアルバム「Free Ride」のタイトル曲を、Jimmyもカヴァーしています。
Dizzyのオリジナルよりも、ずっとファンキーなものになっていて、ゴキゲンです。

他の曲も、ラテン・タッチあり、スロー・ファンクあり、スイング・ジャズあり、ブルースあり、と多彩なサウンドです。

ただ、Jimmyをはじめとしてメンバーも一番楽しんでいるのは、スイング・ジャズの「Laying Low」や、ブルースの「In Search Of Truth」といった、Jimmyが今までやってきたスタイルのナンバーです。

Jimmyって、頑固なんだなー。
好きです。


この作品は玉石混淆で、決して万人向きとは言えません。
けれども、Laloの他ではなかなか聴く機会のない曲が収録されていますし、Lalo独特のホーン・アレンジも楽しめます。
ですから、Laloのファンなら一度は聴く価値はありそうです。

私は、ますます64年の「The Cat」の凄さを痛感した次第です。
も一度「The Cat」を聴いて、燃えましょうかねぇ。


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