【今日の1枚】Yes/Fragile(イエス/こわれもの) | 古今東西プログレレビュー垂れ流し

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Yes/Fragile

イエス/こわれもの

1972年リリース

イエスの名を世界に知らしめた

黄金メンバーによる歴史的名盤

 1969年にデビューしたイエスの4枚目のアルバムにして世界的なスーパーグループにのし上がった歴史的名盤。イエスの音楽性の中心的人物となるキーボード奏者のリック・ウェイクマンが加入した初の作品として注目され、初期のイエスを知るうえで重要な作品でもある。本アルバムからジャケットアートにロジャー・ディーンが起用されている。

 初期のイエスは、人気だったクリームやザ・バーズ、ヴァニラ・ファッジのようなアートロック、またはサイケデリックロックを目指す一方、積極的に他のグループのコンサートのサポートやライブツアーを行い、国内で一定の知名度を上げていたグループである。そんなイエスの音楽性の基盤が出来たのは、1971年のサードアルバム『The Yes Album(イエス・サード・アルバム)』だろう。その後のイエス・サウンドに多大な影響を及ぼすことになるギタリストのピーター・バンクスからスティーヴ・ハウに代わり、また、前作でエンジニアとして参加していたエディ・オフォードがグループとの共同プロデューサーとなり、スタジオ・ワークでの重要な役割を担うことになる。アルバムは初の組曲形式を導入した大作をはじめ、スティーヴ・ハウのピッキングの技巧が光るアコースティック・ソロが聴けたりと、変拍子を加えた複雑な展開を有するプログレッシヴロックとして評価され、英アルバムチャートで4位にランクインする大ヒットとなっている。しかし、複雑な曲展開に変貌する音楽性と、オルガンやピアノに固執し、主流になりつつあったメロトロンやシンセサイザーの導入に反対していたキーボード奏者のトニー・ケイが解雇されてしまうことになる。

 

 本アルバムではキーボード奏者のトニー・ケイに代わり、リック・ウェイクマンが加入した最初の作品である。しかし、彼はストローブスというグループのメンバーとしてA&Mレコードとの契約が残っていたために、正式なメンバーではなく作曲者として名を連ね、アルバム内の『South Side Of The Sky(南の空)』、『Heart Of The Sunrise(燃える朝焼け)』の曲に貢献している。正式なメンバーではないとはいえ、本アルバムのメンバーはジョン・アンダーソン(ヴォーカル)、スティーヴ・ハウ(ギター、ヴォーカル)、リック・ウェイクマン(キーボード、シンセサイザー、ハープシコード、ハモンドオルガン、メロトロン、ミニモーグ)、クリス・スクワイア(ベース、ギター、ヴォーカル)、ビル・ブルーフォード(ドラム、パーカッション)という黄金期と呼ばれるラインナップで構成されている。また、アルバムのジャケットデザインにはロジャー・ディーンが起用されたことでも大きく注目された作品でもある。

 

★曲目★

01.Roundabout(ラウンドアバウト)

02.Cans and Brahms(ブラームス:交響曲第4番ホ短調第3楽章)

03.We Have Heaven(天国への架け橋)

04.South Side of the Sky(南の空)

05.5% for Nothing(無益の5%)

06.Long Distance Runaround(遥かなる想い出)

07.The Fish(ザ・フィッシュ)

08.Mood for a Day(ムード・フォー・ア・デイ)

09.Heart of the Sunrise(燃える朝やけ)

 

 アルバム1曲目はイエスの代表的な曲でもある『Roundabout(ラウンドアバウト)』から始まる。この曲はシングルカットされ、大ヒットとなっている。2曲目の『Cans And Brahms(ブラームス=交響曲第4番ホ短調第3楽章)』は、多重録音したリック・ウェイクマンのキーボードによるクラシカルな曲であり、3曲目の『We Have Heaven(天国の架け橋)』は、同じく多重録音したジョン・アンダーソンのヴォーカル曲になっている。4曲目の『South Side Of The Sky(南の空)』は、ポップでありながらスティーヴ・ハウのギターとリック・ウェイクマンのキーボードが複雑に絡み合う曲になっており、5曲目の『Five Per Cent For Nothing(5%の無益)』は、ビル・ブルーフォードが作曲したもので、短いながらも彼の軽快なリズムが聴けるナンバー。この曲のタイトルは前任のマネージャーに支払い続けなければならないロイヤリティについての皮肉が込められているという。6曲目の『Long Distance Runaround(遥かなる想い出)は』と7曲目の『The Fish』は、ジョン・アンダーソンによるヴォーカル曲だが、変拍子ながら各メンバーのアンサンブルを重視したイエスらしい曲になっている。8曲目の『Mood For A Day』はスティーヴ・ハウのフラメンコっぽい滑らかなアコースティックギターのソロが聴ける曲であり、最後の『Heart Of The Sunrise(燃える朝やけ)』の曲は、緻密で超絶な各メンバーのアンサンブルとハイトーンで劇的に歌い上げるジョン・アンダーソンのヴォーカルとの対比が印象的なナンバーとなっている。こうしてアルバムを聴いてみると、非常に1曲1曲が濃密で厚みがある楽曲が多い。変拍子や複雑な展開のある曲ばかりだが、スリリングで緊迫感のあるアンサンブルの中で、時折光る美しいフレーズが散りばめられているのは、単にテクニカルを重視した実験的なサウンドから、各メンバーのバックグラウンドに寄せたハーモニーやメロディーを取り入れたスタイルを重視したからだろうと考えられる。

 アルバム『Fragile(こわれもの)』は、英アルバムチャートで4位、米アルバムチャートで7位を記録し、日本でもアルバムチャートで22位にランクインするなど、世界的にイエスの名が知れ渡る傑作となる。これを機に現メンバーで5枚目のアルバム『Close To The Edge(危機)』をリリースして売り上げを伸ばし、プログレッシヴロックシーンのみならず世界のロックシーンでイエスの名を不動のものとしている。しかし、この2枚のアルバムの成功によって、各メンバーのソロ作品が目立つようになり、後のアルバムからはメンバーの入れ替わりが激しくなっていく。それでも数あるプログレッシグロックの中でひとつの到達点ともいえる本アルバムは、今なお耳にしても全く古さを感じさせない感動がある。

 

 皆さんこんにちはそしてこんばんわです。今回はイエスの初期の名作『Fragile(こわれもの)』を紹介しました。ここ最近、古いアルバムを引っ張り出しては聴いている毎日でして、そんな中で本アルバムを見つけた次第です。わ~懐かしいな~と思いながら、よく『Close To The Edge(危機)』と合わせてよく聴いていたな~と思いながら、今回紹介に至ったわけです。あまりにも有名過ぎるアルバムなので、簡潔にまとめますね。

 

 このアルバムは名曲が多く、最近ですとTVアニメ『ジョジョの奇妙な冒険』の1部と2部のエンディングテーマ曲に『Roundabout(ラウンドアバウト)』が起用されたことは有名ですよね。リアルで見ていた時は「こんなところにラウンドアバウトがっ!」と驚いたもので、3部のエンディングでは、「やっぱり使われたか…バングルズのウォーク・ライク・エジプシャン…」と和みに近い感覚で見ていたものです。ほかにも『Heart Of The Sunrise(燃える朝焼け)』の曲は、アメリカ映画「バッファロー’66」でヴィンセント・ギャローが復讐をしようとするクライマックスシーンで流れる挿入歌として取り上げられています。最近ですと日産のジュークのCMで使われたというほうが記憶に近いかもしれません。

 

 イエスといえば、とりわけメンバーのソロ作品や関連したグループの多さで有名ですが、主要メンバーが抜けた1980年代以降は、アルバム『90125』で成功するまで、一時は活動停止すらあったといいます。トレヴァー・ラビンを中心としたメンバーで作られたアルバム『90125』は、シングルカットされた『ロンリー・ハート』が全米で1位を記録するなどイエスの名を再度浮上させたものの、後にジョン・アンダーソンが抜けたトレヴァー・ラビン主導のメンバーと旧メンバー(ジョン・アンダーソン、ビル・ブルーフォード、リック・ウェイクマン、スティーヴ・ハウ)とのイエス名称をめぐる争いが起こります。和解して1991年の『Union(結晶)』で2つのグループが結集しますが、『ロンリー・ハート』でイエスの存在を知った私にとって、マルチプレイヤーであるトレヴァー・ラビンは、もっと評価されてもいいと思うんですがねぇ。当時の旧メンバーで結成した『ABWH(閃光)』を聴いて、やはりイエスといえば『Fragile(こわれもの)』と『Close To The Edge(危機)』であるというイメージの強さを改めて思い知ったような気がします。とはいえ、イエスの長大な曲からコンパクトにまとめられた曲まで、テクニカルでありながら叙情的でもあるサウンドは、久々に聴いた私にとって新たな発見が多かった作品です。

 

それではまたっ!