【今日の1枚】Indian Summer/Indian Summer(黒い太陽) | 古今東西プログレレビュー垂れ流し

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ロック(プログレ)を愛して止まない大バカ…もとい、音楽が日々の生活の糧となっているおっさんです。名盤からマニアックなアルバムまでチョイスして紹介!

Indian Summer/Indian Summer

インディアン・サマー/黒い太陽

1971年リリース

効果的なメロトロンと英国情緒を感じさせる

ブルージーなギターが織りなす超レアアルバム

 “小春日和”と“予想外の出来事”を意味するインディアン・サマーの唯一作。次々と名アルバムが登場する1970年代初頭のイギリスのロックシーンにおいて、メロトロンとギターによる英国情緒を強く感じさせる鮮烈なインパクトを与えた傑作でもある。短命に終わるNEON(ネオン)レーベルからのリリースであり、なおかつジャケットデザインはマーカス・リーフが手がけたことも相まって、原盤は入手困難を極め、現在でもコレクターの間で人気の高いアルバムとなっている。

 インディアン・サマーは、1969年にイギリスのウェスト・ミッドランズ州にあるコヴェントリーで結成されたグループである。メンバーはボブ・ジャクソン(キーボード、ヴォーカル)、ポール・フーパー(ドラムス)の2人を中心に、アラン・ハットン(ベース)、ロイ・バターフィールド(ギター)を加えた4人で、主にフランク・ザッパやブラッド・スウェット&ティアーズといった曲をカヴァーする活動から始めている。その後、ロイ・バターフィールド、アラン・ハットンが脱退し、マルコム・ハーカー(ベース)と彼の友人だったジャズ志向の強いコリン・ウイリアムス(ギター)が加わっている。この当時、まだ彼らは学生であり、もっぱらリハーサルは学校の音楽室を借りて演奏していたという。コべントリーからバーミンガムに活動の拠点を移した彼らは、ブラック・サバスを手がけたことで有名なマネージャー兼プロモーターのジム・シンプソンによって見い出され、1971年にRCA傘下で新設されたNeon(ネオン)レーベルからアルバムデビューを飾ることになる。アルバムのプロデューサーには、ブラック・サバスでも担当したロジャー・ベインを起用していることを考えると、彼らが“第二のブラック・サバス”として強く期待されたに違いない。

 

 アルバムは邦題で『黒い太陽』と名づけられているが、ブラック・サバスのようなダークなイメージはほとんど無いに等しい。収録されている曲はメンバー全員の共作となっており、ボブ・ジャクソンの効果的で叙情的なメロトロンを全面的に押し出し、ジャズ風味を帯びたコリン・ウイリアムスの奏でるギターとの絡みが非常にユニークで、結果的に英国ロックとしての格調高い作品に仕上がっている。レコーディングの予算があまり無かったために、1、2テイクでバッキングトラックを録音し、メロトロンなどの楽器を重ねて最後にヴォーカルを入れるという特異な録音スタイルをとっていたらしい。そんな録音スタイルをとっていたにも関わらず、1曲1曲が非常に丁寧に作られており、彼らのアルバムに対する意気込みは相当なものだったと考えられる。

 

★曲目★

01.God Is The Dog(ゴッド・イズ・ザ・ドッグ)

02.Emotions Of Men(エモーションズ・オブ・デイ)

03.Glimpse(一瞥)

04.Half Changed Again(ハーフ・チェンジド・アゲイン)

05.Black Sunshine(黒い太陽)

06.From The Film Of The Same Name(フロム・ザ・フィルム・オヴ・ザ・セイム・ネイム)

07.Secrets Reflected(シークレッツ・リフレクテッド)

08.Another Tree Will Grow(アナザー・トゥリー・ウィル・グロウ)

 

 収録された全8曲は上記にあるようにボブ・ジャクソンのメロトロンとヴォーカルとコリン・ウイリアムスのギターの絡み合いが素晴らしく、特に4曲目の『ハーフ・チェンジド・アゲイン』とタイトル曲でもある5曲目の『黒い太陽』は顕著であり、緩急のあるアンサンブルの中で重厚なメロトロンのストリングスが聴きどころである。6曲目の『フロム・ザ・フィルム・オヴ・ザ・セイム・ネイム』もジャズロック的なインストゥメンタル曲になっており、オルガンサウンドとしては一級品なので、ぜひ聴いてもらいたい。このように、当時のオルガンロック、ジャズロックにとどまらず、ブルースやサイケデリック的な要素が随所に見られるが、決してチープに聴こえないのは、単なるオルガンやギターを駆使したハードロックではなく、屋台骨であるドラムやベースがしっかり存在感を表しているからだろう。それにも増してボブのキーボードやメロトロンのフレーズが英国ロックらしいメロディになっているのが大きい。しかし、アルバム自体は英国ではあまり評価されず、また満足なプロモーションが行われなかったこともあり、商業的な成功には至らなかったという。

 インディアン・サマーはアルバム発表後、ジム・シンプソンの下から離れてウイリアム・モリス・エージェンシーに移籍するが、ベーシストのマルコム・ハッカーが父親の経営する工場を継ぐために脱退する。代わりに同郷のウェズ・プライスが加入してライヴ活動を続けていたが、財政難のために1972年に解散することになる。解散前にはギタリストのコリン・ウイリアムスは愛用のギターを売らなければならないほど資金に窮していたという。解散したメンバーのほとんどは音楽業界から身を引くことになるが、ボブ・ジャクソンだけはミュージシャンとして残り、ザ・フーのベーシストだったジョン・エントウィッスルのグループであるライゴー・モーティスに参加。1974年にはバッド・フィンガーにも参加するものの、自殺したピート・ハムの影響で作品を残せずに解散するが、同グループのトム・エヴァンスと共にドジャースを結成している。そのグループにはインディアン・サマーのドラマーだったポール・フーパーが迎え入れられ、インディアン・サマーとはまた違った音楽性を見せたパワーポップグループとして生まれ変わっている。

 

 皆さんこんにちはそしてこんばんわです。今回はプレスされたレコード枚数の少なさから激レアアイテムとなった英国のプログレッシヴロックグループ、インディアン・サマーの唯一のアルバムを紹介しました。このアルバムは某中古CDショップに足を運んだ際に手に入れたものですが、ベル・アンティークからリマスター化されていたのですね。マーカス・キーフによるデザインのジャケットはユニークなものが多くて、色を反転したサボテンの群れの中になぜかキツネがいるという、なかなか面白みのある内容になっています。たぶん、5曲目の『黒い太陽』をモチーフにしたものだろうと思います。上にも書きましたが、プレスした枚数はわずかで小レーベルであるネオンからのリリースということもあって、原盤は激レアとなった代物です。実際に聴いてみると、時代的なオルガンとベースが一体となったイントロから始まり、否が応にも英国アンダーグランドの香りが漂います。後にメロトロンが登場しますが、全体的にクラシカルな要素やR&B、ジャズ風味のあるサウンドが曲の中で展開されており、どことなくプログレ感を演出しています。くぐもったようなギターやオルガンの音色はまさしくこの時代でしか出せない味でしょうね。

 

 さて、インディアン・サマーのメンバーであるボブ・ジャクソンといえば、バッド・フィンガー、ドジャース、サーチャーズなどと渡り歩いたミュージシャンとして有名ですが、私は元ユーライア・ヒープのヴォーカルだったデヴィッド・バイロンのグループであるザ・バイロン・バンドのアルバム『On The Rocks』で知りました。このアルバムにはキング・クリムゾンにも参加していたメル・コリンズをはじめとした凄腕のミュージシャンが集められた作品で、ハードロックをこよなく愛していた当時は元ユーライア・ヒープのデヴィッド・バイロンという名前をきっかけに聴いたものです。そのデヴィッド・バイロンはこのアルバムをリリースした4年後に心臓発作で他界してしまうのですが、当時はあまりピンと来なかったその音楽性も改めて聴くと、やっぱりいいな~と感じます。

 

 そんなキーボード奏者でありセッションマンとしての位置づけだったボブ・ジャクソンが、インディアン・サマーのアルバムの中でキーボードプレイヤーだけではなく、リードシンガーとしてフロントに立った唯一の作品です。現在のボブ・ジャクソンは、1960年代から活動するイギリスのバーミンガム出身のポップユニット、ザ・フォーチュンズというグループに1995年からメンバーとして活動しているとのことです。不遇な経歴の中でもしっかりと足跡を残すミュージシャンやグループに少し肩入れしてしまうのも、年のせいなんでしょうかね~。

 

それではまたっ!