Parzival/Ba-Rock
パルツィヴァル/バロック
1973年リリース
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アコースティカルな楽器を巧みに利用し
中世的なサウンドを創り上げた傑作
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ドイツのグリフォンと呼ばれ、その中世の民俗音楽を基盤にしたプログレッシヴロックグループ、パルツィヴァルが1973年にリリースしたセカンドアルバム。そのアルバムはヴァイオリンやフルート、チェロといった管弦楽器をはじめ、メロトロンやピアノ、オルガンといったキーボード、そしてアコースティックギターを巧みに利用し、フォーク、アヴァンギャルド、クラシック、ポップを並外れた技術でミックスさせたバロック系シンフォニックロックとなっている。本アルバムはデビューアルバムの『レジェンド』と共に、ジャーマンシンフォニックプログレの隠れた傑作として今なお名高い。
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パルツィヴァルは1971年にドイツの北に位置する都市ブレーメンで結成されたグループである。母体となっているのは1965年にブレーメンで結成されたビートグループ、チェンバレンズである。当時16歳だったロタール・シームス(ギター、ヴォーカル)とトーマス・オリヴィエ(ドラムス、ヴォーカル)が在籍していたが、1967年にグループが解散。2人はフォークデュオの「トム&チェリー」という名でツアーを行い、すでに自分たちが作曲した曲を演奏していたという。その後、ヴァルター・クィントゥス(ヴァイオリン、コントラバス)とチェリストが加わり、1967年12月にブレーメンのライヴハウス「リラ・オイレ」でクィントゥス・クインテットを結成している。このグループから独自の音楽スタイルを確立していったとされている。彼らは1968年にラジオ・ブレーメンの生放送でラジオデビューを果たし、翌年の1969年にシームス、クィントゥス、オリヴィエの3人はトリオグループ「Beazzic Conservatory」を結成。「Beazzic」という言葉は「ビート」、「ジャズ」、「クラシック」という音楽スタイルを組み合わせた造語である。同年、ブレーメンのフルート兼ピアノ奏者のマティアス・ミュラー=メンケンスが一時加入し、グループが創作するサウンドはより幅を広げていったという。1970年になると、そんな彼らの不思議な音楽をライヴステージで聴いたアメリカのプロデューサーであるグレン・H・フリードマンとサウンドエンジニア兼パーカッショニストのデイヴ・グリンステッドが接近。デモテープを録音のために、彼らをロンドンのデッカ・スタジオに連れて行ったという。しかし、当時の英国音楽家組合は、イギリス国内での外国人による公演の制限を行っていたため、彼らはすぐにドイツに帰国することになったという。そんな彼らに声をかけたのがドイツのロックプロデューサーであるコニー・プランクである。プランクは彼らと契約をし、レコード会社のテルデックは、歴史あるテレフンケンレーベルからデビューアルバムをリリースすることを約束したという。彼らはレコーディングセッション中にグループ名をアーサー王の聖杯伝説にも登場する騎士「パルツィヴァル」に変えている。レコーディングにはゲストミュージシャンのマティアス・ミュラー=メンケンス(フルート)、ハンス・ヤスパース(ヴィオラ)、ヨアヒム・ライヒホルト(チェロ)が参加し、1971年にデビューアルバム『レジェンド』をリリースすることになる。
その『レジェンド』のアルバムは元ザ・ビートルズのジョージ・ハリスンやリンゴ・スターからも賞賛され、ペトラ誌はアルバム『レジェンド』を年間最優秀レコードに選出している。1972年になるとブレーメンのチェロ奏者であるヴァルター・フォン・ザイドリッツが加わり、トリオはカルテットへと拡大し、テルデックからシングル「Souls Married To The Wind/One Day」がリリースされる。同年に彼らはミュージックビデオに出演するが、NDRによるとパルツィヴァルが「おそらく最初のドイツのミュージックビデオに出演したグループ」とされている。彼らは次のアルバムをレコーディングするために、ハンブルグのテルデックスタジオに入っている。この時のメンバーはロタール・シームス(ギター、ヴォーカル)、トーマス・オリヴィエ(ドラムス、ヴォーカル)、ウォルター・クィントゥス(ヴァイオリン、ピアノ、オルガン)、マティアス・ミュラー=メンケンス(フルート、ピアノ、オルガン)、ウォルター・フォン・ザイドリッツ(チェロ)、ハラルド・コニエツコ(ベース、ヴォーカル)、ハンス・ランペ(パーカッション)である。こうして1973年にセカンドアルバム『バロック』がリリースされる。
【曲目】
01.Souls Married To The Wind(風と結婚した魂たち)
02.Stories(物語)
03.Black Train(黒い列車)
04.Mrs. Virgin(ヴァージン夫人)
05.Frank Supper(フランク・サパー)
06.Scarlet Horses(スカーレット・ホース)
07.It's A Pity(それは残念)
08.Thought(思考)
09.Paradise(パラダイス)
10.Party Bird(パーティー・バード)
11.Veronique(ヴェロニク)
★トラック01、10、11はボーナストラック
アルバムの1曲目の『風と結婚した魂たち』は、シングルにもなったアコースティックギターを中心のポップなヴォーカル曲。男女のコーラスが素晴らしく、どことなくママス&パパスを思わせる。後半にはヴァイオリンやフルートが加わり、牧歌的な演出が素晴らしい。2曲目の『物語』は、ヴァイオリンやフルートをフィーチャーしたフォーキーな楽曲。元々なアルバムの1曲目となっていた曲であり、陽気でノリの良いオープニング曲でもある。3曲目の『黒い列車』は8分を越える大曲であり、ヘヴィなギターのアルペジオと力強いリズムセクション、そしてファンキーなフルートやヴァイオリンが印象的な楽曲。サイケデリックやプログレのムードがあるものの、エレクトリック・ライト・オーケストラやザ・ツリーズを掛け合わせたような曲調がある。4曲目の『ヴァージン夫人』は、ヴァイオリンとフルート、そしてストリングスによるバラード調の楽曲。ヴォーカルはまるでファミリーのロジャー・チャップマンとヴァン・ダー・グラーフ・ジェネレイターのピーター・ハミルが歌っているようである。後半では鄙びたヴァイオリンをバックに語りが入っている。5曲目の『フランク・サパー』は、フルートとギターによるバロック調の雰囲気のある楽曲。酒の席かレストランでのエフェクトをバックに華麗に演奏しているのが心地よい。6曲目の『スカーレット・ホース』は、アヴァンギャルドなヴァイオリンの音色とアコースティックギターのアルペジオから、変拍子を交えた曲調、そしてメロトロンをバックにしたシンフォニックロックとなる楽曲。中盤では泣きのエレクトリックギターや美しいフルートのソロがあり、全体的に多彩なフレーズを持つヴァイオリンの音色を堪能できる1曲となっている。7曲目の『それは残念』は、ピアノやギター、ヴァイオリンを中心としたキャッチーなポップソング。シングルで出してもおかしくはないほどメロディにあふれている。8曲目の『思考』は、ダークなヴァイオリンの調べから賑やかなパーカッション上でワイルドなフルートジャムへと発展していく楽曲。後半ではギターとヴァイオリン、フルートのアンサンブルが思わずキング・クリムゾンを彷彿とさせる瞬間がある。9曲目の『パラダイス』は8分を越える大曲であり、ダークなヴァイオリンを中心とした多彩な楽器による楽曲。メロトロンやフルート、チェロがフィーチャーされており、民族音楽的なメロディのあるプログレッシヴ性の強い内容になっている。ボーナストラックの『パーティー・バード』と『ヴェロニク』は、ギターとヴァイオリン、フルート、オルガンによる中世的で牧歌的な楽曲になっており、本アルバムの楽曲にも遜色ないくらいクオリティが高い。
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本アルバムも前作同様に注目され、前衛的なクラシック・フォーク・ロックとして国内外の批評家を魅了させたという。しかし、アルバムがリリースして間もなく、パルツィヴァルは解散を発表することになる。原因はメンバー同士の確執にあったと言われている。パルツィヴァルの共同創設者であるトーマス・オリヴィエは、2021年の雑誌Nordeventsで「私たちは21歳か22歳で、常にいがみ合っていて、些細なことでもすぐに腹を立てていた」と解散の理由を述べている。その4年後、ギタリスト兼ヴォーカルのロタール・シームスは、1977年にヴァルター・クィントゥスと共にパルツィヴァルを再結成し、アドルフ・ヒトラーを題材にしたロックオペラ『Der Führer(総統)』を制作している。の後、シームスは叙情詩を書き始め、後にメディアデザイナーとして活躍することになる。ドラマーのトーマス・オリヴィエは、方向転換して作家としての活動に専念。彼は主に物語やミュージシャンへのインタビューを執筆し、時折音楽プロジェクトも手がけたという。彼は1985年に「Thomas & Thomas」というプレスエージェンシーを設立している。解散後もレコードのリリースは止まらず、1975年にテルデックはノヴァレーベルの2枚のレコードとシングル『Souls Married to the Wind/One Day』をまとめたダブルアルバム『A German Rock Legend』をリリース。また、1981年にテルデックはテレフンケンレーベルのシリーズの一環として、パルツィヴァルのベスト盤『Parzival–Rock in Deutschland Vol. 9』をリリースしている。さらに1998年にはイーストウエスト・レコード/ワーナー・ミュージックは、ボーナストラック付きのデジタルリマスター盤として、オリジナルアルバム2枚を初めてCDでリリースしたという。解散から約50年が経った2022年に共同創設者でドラマーのトーマス・オリヴィエとハンブルクを拠点とするプロデューサー兼作曲家、そしてサウンドエンジニアのディーター・ファーバーによってパルツィヴァルが復活。コンセプト・ダブル・アルバムとなった『David–The Hymn』では、23曲の新曲と23カ国から130人のミュージシャンが参加している。そのアルバムはハイパーテンションからCDで、 シリーナ・レコーズから2024年6月に豪華なゲートフォールドカバー付きのレコードでリリースされたという。
皆さんこんにちはそしてこんばんわです。今回はアコースティック楽器とヘヴィなロックが結びつき、中世的とも言えるサウンドに昇華したドイツのプログレッシヴロックグループ、パルツィヴァルのセカンドアルバム『バロック』を紹介しました。タイトルの『Ba-Rock~バロック~』は、「Baroque」と「Rock」を掛け合わせた造語であり、フォークやアヴァンギャルド、クラシック、ポップといったジャンルを巧みに融合した前衛的な音楽となっています。民族音楽をベースにしている点や多彩な楽器を利用している点からして、英国のグリフォンに影響されたのではないかと言われています。彼らのアルバムは1970年代に2枚残しており、デビューアルバムの『レジェンド』と共に傑作とされています。デビューアルバムはフォークに関連し、ロックグループの中でもチェロとフルートを巧みに利用した作品であり、一方、本アルバムはバロックとロックをより商業的なレベルで組み合わせた歌中心の作品となっています。どちらもドイツのフォークやクラシック、そして中世音楽を豊かな楽器編成とロックの美学で組み合わせた他に類を見ないサウンドになっています。アルバムはザ・ビートルズのジョージ・ハリスンやリンゴ・スターをはじめ、多くの批評家から絶賛されますが、セカンドアルバムリリース後に解散してしまいます。ホントにあっけなく、思わず「えっ?なんで?」という言葉がリフレインするほどです。
さて、そんな彼らのアルバムですが、ヴァイオリンやフルート、アコースティックギターのアルペジオを巧みにフィーチャーしたアンサンブルとなっており、曲ごとにヴォーカルを変えているのが特徴となっています。民族音楽を主体としたグリフォンとは少し違い、どちらかというとちゃんとロックをベースにしたフォーク・プログレの領域になっているところがすごく聴きやすいです。最初の方の曲はサイケデリックポップといった感じですが、後半になるとプログレッシヴ要素の強い楽曲になっていきます。特に8曲目の『思考』は、ダークな雰囲気のある曲調となっていて、硬質なギターとヴァイオリン、フルートのアンサンブルが思わずキング・クリムゾンを聴いているような感じになります。また、9曲目の『パラダイス』も多くの楽器を利用しつつ、変拍子やメロトロン、技巧性などプログレの要素をすべて満たしているのが凄いです。プログレファンからしたら、ジャーマンシンフォニックプログレの隠れた傑作と言われていますが、なるほど納得です。
本アルバムはクラシックやジャズ、フォーク、トラッドを巧く融合し、独自の美学に昇華した作品です。牧歌的な中にきらりと光るテクニカルな演奏を、ぜひともその耳で聴いてみてください。グリフォン好きにはオススメです。
それではまたっ!
































































