Sally Oldfield/Water Bearer
サリー・オールドフィールド/ウォーター・ベアラー
1978年リリース
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透明感のある繊細な歌声がこだまする
クラシカル&トラディショナルな幻想世界
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弟のマイク・オールドフィールドとのユニットであるサリアンジーを経て、自らプロデュース&アレンジで1978年に発表したサリー・オールドフィールドのソロデビュー作。そのアルバムはJ.R.R.トールキンの『指輪物語』にインスパイアされた組曲をはじめとするクラシカル&トラディショナルな幻想世界を描いた内容になっており、何よりもサリーのまるで空間を支配するような繊細で透明感あふれる歌声が素晴らしい作品となっている。サリーは作詞作曲だけではなく全曲ほぼ全ての伝統的な楽器を自分で演奏しており、後のエンヤやその他のケルト音楽にも通じるニューエイジ・ミュージックの先駆けとも言える名盤でもある。
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サリー・オールドフィールド(サリー・パトリシア・オールドフィールド)は、1947年8月3日にアイルランドのダブリンで生まれたミュージシャンである。彼女は母のモーリーンがローマ・カトリック教徒であったため、その信仰のもとで育ったといわれている。幼少期は英国のバークシャー州レディングで過ごし、4歳からバレエを学び、バレエやタップ、モダンなどあらゆるスタイルのダンスで数々のコンクールで優勝したという。11歳になった彼女は当時ロンドンのホランド・パークにあったロイヤル・アカデミー・オブ・ダンシングの奨学金を得て入学し、2年後にはホワイト・ロッジにあるロイヤル・バレエ・スクールに進学している。しかし、2年後にバレエを辞め、クラシックピアノは7級まで習い、学生時代はすべてレディングにあるセント・ジョセフ・コンベント・スクールで過ごしたという。そこで後にシンガーソングライター兼女優として活躍するマリアンヌ・フェイスフルと親しくなり、サリーはブリストル大学に進学して英文学と哲学を専攻している。サリーの音楽キャリアは1967年から始まり、ブリストル大学で学んでいた頃、彼女はブリストル・トルバドゥール・クラブで歌い、後の4月30日にはコルストン・ホールで行われたフォークコンサートで後にストローブスと名を変えるストロベリー・ヒル・ボーイズとフレッド・ウェドロックのサポートを務めている。その後まもなく、サリーは6歳離れた弟のマイクと共にフォークデュオ「サリーアンジー」を結成。このデュオはトランスアトランティック・レコードと契約し、ブリストルのトルバドール・クラブで出会ったペンタングルのギタリスト、ジョン・レンボーンの推薦で唯一のアルバムをレコーディングすることになる。1968年8月にレコーディングされたアルバム『チルドレン・オブ・ザ・サン』は、サリーとマイク・オールドフィールドの共作であり、ゲストにテリー・コックス(ドラムス)、レイ・ウォーレイ(フルート)が参加している。その後、マイクはソロ活動を中心にすることになり、彼が1971年から取り掛かった『チューブラー・ベルズ』のアルバムが、イギリスで270万枚以上を売り上げることになる。サリーは『チューブラー・ベルズ』や『ハージェスト・リッジ』、『オマドーン』にもコーラス隊として参加しており、弟の成功に触発されていくことになる。1975年に彼女はジェネシスのギタリストであるスティーヴ・ハケットの初のスタジオアルバム『Voyage of the Acolyte』でヴォーカルを担当し、次第にマイクのように自身で作詞作曲、そして演奏やプロデュースをすべて行うアルバムを作りたいと考えたという。
彼女は弟であるマイクの友人となったフィンランドのベーシストであるペッカ・ポーヨラと親しくなり、ペッカ・ポーヨラの1977年にリリースされた3枚目のアルバム『Keesojen Lehto(Mathematician's Air Display)』に参加。このアルバムはペッカ・ポーヨラとオールドフィールド姉弟、さらにポール・リンゼイによってプロデュースされ、グロスターシャーにあるオールドフィールドのスルーアム・スラッド・マナーで録音編集されている。また、その年のサリーは本格的にアルバムのレコーディングを行うようになり、彼女はヴォーカルをはじめ、ギターやピアノ、シンセサイザー、モーグ・トーラス、チェンバロ、ファルフィサ・オルガン、マンドリン、マリンバ、グロッケンシュピール、ビブラフォン、パーカッションといった多彩な楽器を演奏。さらにゲストにはフランク・リコッティ(パーカッション、ビブラフォン、マリンバ)、元グリーンスレイドのデイブ・ローソン(シンセサイザー)、ティム・ウィーター(シンバル)、トレバー・スペンサー(シンセドラム)、ジーン・プライス(ハープ)、ブライアン・バロウズ (ヴォーカル)がレコーディングに参加している。こうして自身がプロデュース&アレンジを施したソロデビューアルバム『ウォーター・ベアラー(みずがめ座)』が1978年5月にリリースされる。そのアルバムはJ.R.R.トールキンの『指輪物語』にインスパイアされた組曲をはじめとするクラシカル&トラディショナルなファンタジックワールドとなっており、何よりもサリーの繊細で透明感あふれる歌声が素晴らしい逸品となっている。
★曲目★
01.Water Bearer(ウォーター・ベアラー)
02.Songs Of The Quendi(組曲「ソングス・オブ・ザ・クエンディ」)
a.Night Theme(夜のテーマ)
b.Ring Theme(指輪のテーマ)
c.Wampum Song(貝殻ビーズの歌)
d.Ring Chorus(指輪のコーラス)
e.Nenya(水の指輪ネンヤ)
f.Path Of The Ancient Ones(古代の小径)
g.Land Of The Sun(太陽の地)
03.Weaver(ウィーバー)
04.Night Of The Hunter's Moon(ハンターズ・ムーンの夜)
05.Child Of Allah(アラーの子)
06.Song Of The Bow(弓の歌)
07.Fire And Honey(ファイア・アンド・ハニー)
08.Song Of The Healer(癒しの歌)
09.Mirrors(ミラーズ)
アルバムの1曲目の『ウォーター・ベアラー』は、水の流れる効果音、そしてアコースティックギターとマリンバをバックにサリーの美しいヴォーカルが堪能できる楽曲。彼女の幽玄な声はプログレッシヴな音楽にふさわしく、フォーク調でありながら独自の世界観を持っている。2曲目の『組曲「ソングス・オブ・ザ・クエンディ」』は、7つの楽章による組曲形式の内容になっており、J.R.R.トールキンの『指輪物語』がテーマになっている。言葉(テキスト)の抑揚や感情を音楽で表現するマドリガル的な雰囲気があり、まるでトールキンの世界の「古き森」から来た川の乙女を彷彿とさせる。アコースティカルな楽曲でありながら、豊かな音のタペストリーを織り成した素晴らしい組曲である。3曲目の『ウィーバー』は、まるで『チューブラー・ベルズ』を彷彿とさせるオープニングから始まり、リリカルなピアノやアコースティックギターをバックにしたヴォーカル曲。彼女の歌声は荘厳さ保ちつつも、まるで聴き手に癒しを与えているようである。4曲目の『ハンターズ・ムーンの夜』は、アコースティックギターやパーカッションをバックにサリーが優雅に歌った楽曲。パーカッションやアコースティック楽器、シンセサイザーの巧みな使い方が素晴らしい。5曲目の『アラーの子』は、クラシカルなアコースティックギターの響きをバックにしたフォーク調の楽曲。大地に根ざした様々なスピリチュアリティを探求した楽曲が多い中、イスラムの世界を描いており、彼女の音楽領域の幅の広さに驚かされる。6曲目の『弓の歌』は、まるでケイト・ブッシュのような官能的で表現力豊かな歌声が響き渡った楽曲。マリンバやグロッケンシュピール、そしてキーボードといった楽器を巧みに使い、彼女の歌声をより神々しく演出している。7曲目の『ファイア・アンド・ハニー』は、美しいハープとピアノをバックにサリーの天上のような歌声を響かせた楽曲。ジョン・ホーケンがイリュージョンで手がけた作品を彷彿とさせるようなリリカルなピアノが彩りを添えている。8曲目の『癒しの歌』は、まさしくアコースティックギターとマリンバによる弾き語りとなった楽曲。ここでは途中からブライアン・バロウズのヴォーカルがあり、曲に彩りと深みを与えている。9曲目の『ミラーズ』は、シングルリリースして大ヒットした曲。この曲はボンゴが目立つがラウンジミュージックやエキゾチカに似た楽器編成になっており、当時人気が高まっていたポップミュージックのスタイルとしては異例である。
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アルバムはマイク・オールドフィールドの姉のソロ作品として注目され、シングルとしてリリースされた『ミラーズ』は、イギリスのシングルチャートで19位にランクインし、13週間チャートインしたという。また、この曲はオーストラリアでも最高88位を記録している。翌年の1979年にはセカンドソロアルバム『イージー』をリリースし、2018年までに16枚のアルバムをコンスタントに発表している。しかし、1984年には所属レコードレーベルのブロンズ・レコードが倒産してしまい、サリーはドイツに移住し、そこで音楽活動を行っていくことになる。そのため、1983年以降の彼女のアルバムは、あまりイギリスでリリースされなかったという。彼女はグンター・メンデやキャンディ・デルージュなど、多くのドイツ人レコードプロデューサーやミュージシャンと仕事を行い、定期的にイギリスのテレビやラジオに出演。さらにヨーロッパ各地で積極的にコンサートツアーを行ったとされている。2001年には『ミラーズ』のリミックス版がリリースされた途端、彼女をクラブシーンの女王へと押し上げる動きがあり、彼女の音楽を全く新しい世代に知らしめている。最後のツアーは彼女が56歳となった2003年のドイツ公演だが、今なおソロアルバムの制作は続けており、最新のアルバムは2019年にリリースした『ミスティーク』である。
皆さんこんにちはそしてこんばんわです。今回は弟のマイクとのフォークデュオ、サリアンジーでも有名なサリー・オールドフィールドのソロデビュー作『ウォーター・ベアラー』を紹介しました。オールドフィールド家は音楽一家であり、次男のマイクはかの映画『エクソシスト』にも採用されたモンスターアルバム『チューブラー・ベルズ』の作成者であり、長男のテリーは映画やテレビ番組の音楽を手掛ける作曲家です。その中でも一番の年上である長女のサリーは、当時15歳だったマイクを引き連れてサリアンジーを結成するなど、姉弟の中でも一番早く音楽の世界に飛び込むことになります。当時、サリー・オールドフィールドを知る者たちは、何よりもその美しい歌声に惹かれたと言われています。1968年初頭にサリーは弟のマイク・オールドフィールドとデモ録音を行っていますが、その提案と監修はミック・ジャガーが行っています。残念ながらその録音したデモテープは不明ですが、彼もまたサリーの歌声に惹かれたミュージシャンの1人だったと言われています。その後はご存じの通り、弟のマイクのアルバム『チューブラー・ベルズ』をはじめとする数々のアルバムにコーラス隊として参加し、1975年のジェネシスのギタリストであるスティーヴ・ハケットの初ソロアルバム『Voyage of the Acolyte』では、ヴォーカルとして抜擢されています。そういった経験を経て彼女は作詞作曲だけではなく自身で全ての楽器を演奏し、プロデュースまで行うソロアルバムを作りたいと考えるようになります。そこには弟のマイクのミュージシャンとしての成功に触発されたことは間違いはないでしょう。
さて、そんな彼女の初のソロアルバムですが、まずジャケットが素晴らしいですね。ほとばしる滝の下の泉に佇む白いドレスの女性という幻想的な絵になっていて、オープニングはまさしく水の流れる音から始まります。ドラムスレスのアコースティカルな楽器とパーカッション、シンセサイザー、ピアノを中心に紡がれた楽曲が中心にとなっており、とにかく彼女の美しい歌声が映える楽器編成になっているのが特徴的です。彼女の幽玄な歌声はフォークというよりプログレッシヴな音楽にふさわしく、その高い歌唱力をベースにした声質はかのケイト・ブッシュを彷彿とさせます。彼女が現在ニューエイジ・ミュージックとして知られるケルト音楽の影響を受けた女性アーティストたちをはじめ、数々の著名なアーティストに貢献したという事実だけでも十分すごいですが、その発端となった本アルバムはもっと評価されてもおかしくは無いです。マイク・オールドフィールドのようなスーパースターを弟に持ったことで、サリーが独自の道を切り開くのは大変なことだったかも知れませんが、彼女は少なくともマイクに劣らない真摯な自己表現の才能を持っていた素晴らしいアーティストだと思っています。
彼女がプロデュースした本アルバムは、1970年代の音楽シーンの中でも特に独創的となった作品の1つです。その大自然をテーマにしたプログレッシヴな音楽をぜひ心ゆくまで味わって欲しいです。
それではまたっ!






























































