Saga/Images At Twilight
サーガ/黄昏のイメージ
1979年リリース
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キーボード主体の明朗で躍動感にあふれた
ドラマティック・プログレハードの傑作
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現在もメンバーを替えながら活動を続けているカナダのプログレッシヴハードグループ、サーガのセカンドアルバム。そのアルバムはサーガの発展において重要な楽器となるボコーダーキーボードが導入されており、曲にメリハリがついているほか、さらにメロディアスでドラマティックになったアメリカンプログレハードに近い内容になっている。本アルバムはカナダで初めてチャート入りを果たし、シングル『It's Time』がカナダのチャートで最高84位を記録。さらに他国のラジオでも頻繁に流れるなど、サーガの知名度が飛躍的にアップした記念碑的な作品でもある。また、収録曲の『You're Not Alone』はライヴの定番曲として有名である。
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サーガは1977年にカナダのオンタリオ州オークビルで、ソングライターであるジム・クライトン(ベース、キーボード)を中心に結成されたグループである。他のメンバーはピーター・レイション(キーボード)、スティーヴ・ネガス(ドラムス)であり、数か月後にジム・クライトンの弟であるイアン・クライトン(ギター)が加入したことで、最初はPockets(ポケッツ)というグループ名で活動を開始している。彼らはトロント近郊のバーを回りながらツアーを行っていたが、ちょうど地元のロックグループのトラックを脱退し、フリーになっていたウェールズ生まれのマイケル・サドラー(ヴォーカル、キーボード)をフロントマンとして迎え入れて5人編成となり、この時にグループ名をサーガと改めている。サドラーのヴォーカルスタイルは、彼らの革新的でありながらも折衷的なサウンドと見事に融合したという。間もなく彼らはメイズ・レコードの目に留まり、すぐにレコード契約を結んでいる。トロントのフェーズ・ワン・スタジオでポール・グロスによってレコーディングされたセルフタイトルのデビューアルバムは、1978年にリリースされ、そのタイトで洗練されたアプローチが瞬く間に絶賛されたという。シングル『How Long』はカナダのチャートでは振るわなかったものの、イギリスとドイツのラジオでコンスタントに放送され、海外では『Humble Stance』がヒットチャートを賑わせたと言われている。最終的にデビューアルバムはカナダではまずまずの成功を収め、ドイツでは輸入盤として3万枚以上を売り上げたという。こうした中、キーボード奏者のピーター・レイションがグループを離れることになり、代わりにグレッグ・チャッドが加入。この時にチャッドはムーヴシンセサイザーと合わせて、「機械的な」音を合成するエフェクターのボコーダーという電子楽器を導入している。こうして前作同様にプロデューサーはポール・グロスが担当し、1979年5月にセカンドアルバムである『黄昏のイメージ』がリリースされる。そのアルバムは前作よりもハードエッジなギターとプログレッシヴなキーボードのリズムが融合したメロディアスでドラマティックさが増したサウンドになっており、サーガの知名度が一躍広がった記念碑的な作品になっている。
【曲目】
01.It's Time ~Chapter Three~(イッツ・タイム~チャプター・スリー~)
02.See Them Smile(シー・ゼム・スマイル)
03.Slow Motion(スロー・モーション)
04.You're Not Alone(ユーアー・ノット・アローン)
05.Take It Or Leave It(テイク・イット・オア・リーヴ・イット)
06.Images ~Chapter One~(イメージズ~チャプター・ワン~)
07.Hot To Cold(ホット・トゥ・コールド)
08.Mouse In A Maze(マウス・イン・ア・メイズ)
アルバムの1曲目の『イッツ・タイム~チャプター・スリー~』は、シンセサイザーによる心地よいメロディとクールなギターソロが特徴的な楽曲。ニューウェーヴとハードポップの中間的なサウンドになっているが、マイケル・サドラーのパワフルながらも情感的なヴォーカルは素晴らしく、近未来的なイメージを想像させてくれる。2曲目の『シー・ゼム・スマイル』は、軽快なシンセサイザーの音色とタイトなリズムセクション、そしてメロウなギターリフによるハードポップ。新たに導入した電子楽器のボコーダーが使用されており、ちょっとしたエレクトロニックな感覚がある。3曲目の『スロー・モーション』は、愛嬌のあるシンセサイザー音とポップなヴォーカルが特徴の楽曲。ニューウェーヴ的な要素が強いが、後半ではストリングスシンセサイザーを用いたシンフォニックな展開が待っている。4曲目の『ユーアー・ノット・アローン』は、前曲とは対照的に力強いメロディを持った変化に富んだロックナンバー。ラテンの要素がありつつも中盤ではプログレッシヴ性のある展開があり、曲構成やアレンジの妙が見受けられる。この曲は後のライヴの定番曲となっている。5曲目の『テイク・イット・オア・リーヴ・イット』は、ベース音が強調されたシンセサイザーポップ。商業的ともいえるキャッチーなメロディで覆われており、非常に躍動感のあるサウンドになっている。6曲目の『イメージズ~チャプター・ワン~』は、美しいピアノの序曲で彩られた夢心地で叙事詩的なバラード曲。調和のとれたキーボードとギターは、プログレッシヴに装飾されたセミシンフォニックともいえる。7曲目の『ホット・トゥ・コールド』は、TOTOの流れを汲んだエネルギッシュなディスコ系ロックナンバー。ギターリフを強調したドラマティックな展開は、1980年代のネオプログレッシヴグループを予感させるサウンドである。8曲目の『マウス・イン・ア・メイズ』は、美しいキーボードの音色をはじめ、スタッカート調の楽器編成、そしてヴォーカルメロディが冴えたネオプログレのサウンドである。後のダークなトーンのキーボードや攻撃的なギターリフなどもあり、次世代を見据えた素晴らしいハードポップといえる。こうしてアルバムを通して聴いてみると、キャッチーなヴォーカルとコーラス、メロウなギター、そして躍動感あふれるキーボードを中心としたダイナミックなポップといえる。プログレッシヴな要素は少ないものの、『イメージズ~チャプター・ワン~』のような彼らのプログレッシヴなルーツを真に体現したサウンドがあるなど侮れない。
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本アルバムは再び批評家から好評を博し、収録曲の『It's Time』と『See Them Smile』はトロント周辺ではラジオで頻繁に放送されたという。アルバムの売り上げも前作同様に上々であり、シングルの『It's Time』はカナダのチャートで最高84位を記録している。リリース直後にキーボード奏者のグレッグ・チャッドが脱退し、代わりに英国スコットランド出身のジム・ギルモアが加入し、新たなメンバーで3枚目のアルバム『Silent Knight』を1980年にリリースし、『Don't Be Late』と『Careful Where You Step』がシングルカットされ、彼らの国際的な成功をさらに推し進めたという。そして1981年には4枚目のアルバム『Worlds Apart』がリリースされ、シングル『On the Loose』はトップ40内に入り、1982年1月にカナダのチャートで最高22位にまで上り詰めている。この時、サーガは「今年最も有望なグループ」としてジュノー賞を受賞している。また、1982年12月にはアメリカでもブレイクを果たし、1983年2月のビルボードチャートで最高26位に達したという。彼らは1982年にジェスロ・タルの北米ツアーのオープニングアクトを務めたこともあり、さらに人気を押し上げ、最終的にアルバムは1983年のアメリカでゴールドディスクに認定されている。1983年にリリースされた5枚目のアルバム『Heads or Tales』もまた成功を収め、1985年の6枚目のアルバム『Behaviour』でもシングルがチャートインする活躍を見せている。しかし、以前のようなヒットは見込めず、1986年にドラマーのスティーヴ・ネガスとキーボード奏者のジム・ギルモアは、マネジメント上の懸念からグループを脱退し、すぐにギルモア=ネガス・プロジェクト(GNP)という新しいプロジェクトを結成することを決定。1988年に彼らは唯一のアルバム『セーフティ・ゾーン』をリリースしている。一方、残ったサーガはマイケル・サドラーとクライトン兄弟に加え、セッション・ミュージシャンを加わてレコーディングとツアーを続けたという。1987年にリリースされた『Wildest Dreams』は、新レーベルのアトランティック・レコードからリリースされ、シングル『Only Time Will Tell』はゴールドディスクを獲得したが、彼らの復帰が真に評価されたのは、やはりヨーロッパであったという。1989年のアルバム『The Beginner's Guide to Throwing Shapes』は、以前のヨーロッパでの人気に再び焦点を当て、SF寄りのポップ要素を少し加えた初期のプログレッシヴスタイルに戻っている。1992年には脱退したスティーヴ・ネガスとジム・ギルモアが復帰。1993年に次のアルバム『The Security of Illusion』がリリースされ、カナダとヨーロッパのサーガファンに好評を博したという。その後もソングライターであるジム・クライトンとマイケル・サドラーは全てのアルバムに参加し、メンバーチェンジがありながらもコンスタントにアルバムをリリースしている。2007年1月16日にレコードレーベルであるInsideOutは、リードシンガーのマイケル・サドラーが個人的な理由により、2007年末でサガを脱退すると発表。また、同年の2007年10月、ドラマーのブライアン・ドーナーが心臓発作を起こし、その後は回復したもののツアーの予定をこなすためにキム・ミッチェル・バンドのクリス・サザーランドが務めたという。サーガはグループの活動継続のため、リードヴォーカルのオーディションを行い、大西洋とカリブ海諸国から20人以上の候補者がデモを提出。ロブ・モラッティが、新しいリードヴォーカリストとして加入し、2009年にアルバム『The Human Condition』をリリースしている。2011年1月28日にマイケル・サドラーがサーガのリードシンガーとして復帰し、2012年7月6日にサーガの20枚目のスタジオアルバム『20/20』がリリースされている。最近では2021年3月12日にアコースティックアルバム『Symmetry』をリリースしており、現在でもレコーディングやビデオクリップの作成など精力的に活動をしているという。
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皆さんこんにちはそしてこんばんはです。そして新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。というわけで今回はラッシュとはまた違ったスタイルでカナダのロックシーンを盛り上げた、サーガのセカンドアルバム『黄昏のイメージ』を紹介しました。4枚目のアルバム『Worlds Apart(邦題:パラレル・ワールド)』が、世界的にヒットしたので、このアルバムだけは知っている方も多いのではないでしょうか。サーガは2000年代まで多くのアルバムをリリースしており、その人気はアメリカやヨーロッパに轟き、40年以上のキャリアを持つカナダのベテラングループに位置していますが、なぜか日本ではあまりヒットせず、知名度もイマイチなグループでもあります。その理由の1つとして1979年に日本でもポリドールからレコードがリリースされていますが、その後、日本での再発はおろかCD化もされておらず、プログレマニアやアメリカンハード好き以外は、あまり知られることが無かったからだと考えられます。それでもハードエッジなギターサウンドとプログレッシヴなキーボードのリズムが融合したサウンドは素晴らしく、聴いてみると非常に明朗でメロディアスなハードポップになっていると思います。ちなみに初期の3枚のアルバムがプログレハードとして、現在でも高く評価されているようです。
さて、本アルバムですが、プログレッシヴな傾向を取り入れながら、シンセポップともいえるキャッチーでメロディアスなサウンドを強めた作品に仕上げています。これは彼らが後の10年を見据えて、プログレッシブな要素を残しつつ、ポップスと融合した独自のプログレと言っても過言ではなく、1980年代の彼らのアルバムは賛否両論を得ながらも、このスタイルを続けていくことになります。そういう意味では本アルバムは時代にうまく迎合したシンセサイザーによるポップサウンドになっており、これを皮切りにカナダ国内はもとより、アメリカやヨーロッパで人気となっていきます。聴き方によってはチープなサウンドに聴こえてしまう可能性もありますが、複数のシンセサイザーを巧みに使い、躍動感あふれるダイナミックさとドラマティックな展開は、やはりプログレッシヴのルーツを持ったグループであると感じます。特に6曲目の抒情性と幻想性のあるプログレッシヴな展開が素晴らしい『イメージズ~チャプター・ワン~』や8曲目のダークなトーンのキーボードと攻撃的なギターリフのあるハードエッジな『マウス・イン・ア・メイズ』は個人的にお気に入りです。彼らのサウンドはどちらかと言うとアメリカンプログレ、またはプログレハードに近いです。非常にキャッチーな楽曲が散りばめられているので、ぜひ一度聴いてみてほしいです。
それではまたっ!





























































