Horizonte/Señales Sin Edad
ホリゾンテ/セニャレス・シン・エダド
1979年リリース
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シンフォニックロックの優雅さと
南米フォルクローレの郷愁が見事に融合した傑作
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当時、アルゼンチンでカルト的な人気を博していたプログレッシヴロックグループ、ホリゾンテのセカンドアルバム。そのアルバムはパンパイプやチャランゴ、ケーナ、ギタロン、コンガなどの民族楽器が導入されたアンデス地方由来のフォルクローレとロックが見事に融合した優美なシンフォニックロックとなっており、さらにラテンのリズムとカリブ海のフュージョンを大胆に取り入れた傑作となっている。本アルバムはすぐに廃盤となり、アルゼンチンロックの中でも極めて入手困難な作品の1つとなったが、1970年代のアルゼンチンロックのリイシューを手掛けるレーベル、フォノカルによって、45年ぶりとなる2024年に初のCD化を果たしている。
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ホリゾンテはロックとアンデスの民族音楽を融合させるというアイデアを掲げ、1975年にアルゼンチンのロザリオで結成されたグループである。当初のメンバーはウーゴ・フレデス(ヴォーカル&パーカッション)、マリオ・ヴァンニーニ(フルート、ギター、チャランゴ、木管楽器)、ルーベン・ブロワーズ(ドラムス)、フェルナンド・モウラ(ベース)、アレハンドロ・ティスコルニア(キーボード)の5人である。彼らはアルゼンチン国内の劇場やホールで積極的にライヴ活動を行い、さらに3年をかけて広範囲のツアーを行い、往年のセル・ヒランやアルコ・イリスを彷彿とさせるサウンドを特徴とする彼らは、多くのファン層を築き上げたという。1978年に彼らはアルゼンチンのレーベルであるミュージックホールと契約をし、同年にデビューアルバム『ホリゾンテ』をリリースする。そのアルバムはフォークリズムを積極的に取り入れ、パーカッションやケーナ、チャランゴといった伝統的な楽器も使用。音楽評論家はホリゾンテの楽曲を高く評価し、また、グループにはすでにカルト的なファンがいたこともあり、アルバムは比較的よく売れたという。1979年には、ルナパークで開催されたコンサートで、スーパーグループであるセル・ヒランと著名なプロテストシンガーであるレオン・ヒエコと共演。この成功をきっかけに、彼らはスタジオに戻ってセカンドアルバムのレコーディングを行っている。しかし、レコーディング時にメンバーチェンジがあり、ヴォーカルとベーシスト、そしてキーボード奏者が脱退。最終的にウーゴ・オジェダ(ヴォーカル、パーカッション、木管楽器)、マリオ・ヴァンニーニ(フルート、ギター、チャランゴ、木管楽器)、ルーベン・ブロワーズ(ドラムス)、ウィリー・カンピンス(ベース、アコースティックギター、コントラバス)、セルジオ・ヴァイニコフ(キーボード)の5人でレコーディングに臨んでいる。こうして1979年に本アルバム『Señales Sin Edad』がリリースされることになる。そのアルバムはデビューアルバムよりもキーボードの存在感が高まり、民族楽器やギターとの見事な融合を実現したシンフォニックロックとなっているだけではなく、さらにラテンのリズムを加味したフュージョン要素を取り入れた傑作となっている。
★曲目★
01.Señales Sin Edad(永遠のサイン)
02.Solo Espero Que Las Voces Canten(ただ声が歌ってくれることを願う)
03.Proximo Abismo(次なる深淵)
04.Viento De Las Cumbres(頂上の風)
05.Preludio A La Imaginacion(想像への前奏曲)
06.El Viejo Azul(オールドブルー)
07.Historietas De Verdad(漫画のような世界)
アルバムの1曲目の『永遠のサイン』は、英国のキャメルと同国のエスピリトゥを掛け合わせたようなサウンドになっており、哀感のヴォーカルと合わせたタイトなリズムセクションが心地よい内容になっている。後半にはメロウなギターが絡む美しいストリングスシンセサイザー、そして天上に響くヴォーカルが素晴らしい。2曲目の『ただ声が歌ってくれることを願う』は、アコースティックギターとアンデスの木管楽器による牧歌的な音色で始まる楽曲。その後、伝統的なマランボにインスパイアされた濃厚なクレオール調のメインモチーフが登場し、非常に土着的ながらも魅力的なサウンドに仕上げている。3曲目の『次なる深淵』は、ウェザー・リポートとアルコ・イリスを合わせたような心地よいフォークロックともいえるが、ベースやパーカッション強調されたラテン系のジャズ寄りのサウンドとなっている。彼らの様々なジャンルを組み入れた多様性のある音楽と言える。4曲目の『頂上の風』は、ピアノを基調とした美しいバラード曲。コズミックなシンセサイザーのレイヤーが荘厳な装飾となっているが、後に柔らかな民族的なパーカッションと木管楽器が加わり、シンフォニック調のサウンドに昇華している。5曲目の『想像への前奏曲』は、ピアノとアコースティックギターによる調べから、フルートを基調とした民族楽器を加味することでシンフォニックな味わいのあるサウンドになっている。6曲目の『オールドブルー』は、コズミックなシンセサイザーをベースに独特なリズムとギターを加えたジャズフュージョン的なインストゥメンタル曲。ジャズ調のエレクトリックピアノを加えたことでデビューアルバムとは一線を画している。8曲目の『漫画のような世界』は、リズム的なパーカッションとピアノによるトロピカルでエスニックな雰囲気を醸し出した楽曲。カリブ海ラテンジャズの官能的なエッセンスと、アンデスのフォークロアの祝祭的な側面を融合ささせている。こうしてアルバムを通して聴いてみると、前作の民族楽器によるフォークロア色の強い楽曲が多かったが、本作は多彩なパーカッションやストリングスシンセサイザー、エレクトリックピアノがフィーチャーされており、ラテン特有のジャズフュージョン的なサウンドが多くなっている。フォークロックやジャズ、そして木管楽器によるアンデスの音楽をしっかりと組み入れており、彼らの様々なジャンルをモノともしない多様性が感じられる。
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本アルバムはファーストアルバムほどの売り上げには及ばなかったものの、最終的に彼らの音楽スタイルを確立した作品となっている。その後も積極的にライヴ活動を続けていたが、メンバーは音楽的創造性の衰えを感じて、1981年に解散している。おそらく、当時流行していた1980年代の影響もあって、もはやプログレッシヴや実験的なサウンドにそれほど惹かれなくなっていったのだろう。メンバーのほとんどはスタジオミュージシャンとなって、多くのアーティストの作品に参加。唯一、キーボード奏者のセルジオ・ヴァイニコフは、テレビ音楽の作曲家となる一方、パブロ・ルイスやロドリゴ、ファン・カルロス・チリリアーノの作品に作曲兼キーボード奏者として参加している。その後、制作会社「ヴァイニミュージック」のオーナーとなっている。これほどクオリティの高いアルバムであったにも関わらず、リリース後に再発されることなく、長い間眠り続けることになる。本アルバムが陽の目を見ることになるのは、リリースから45年後となる2024年にアルゼンチンのレーベルであるフォノカルによる初のCD化である。
皆さんこんにちはそしてこんばんわです。今回はアルゼンチンプログレの中でも隠れ名盤に近いホリゾンテのセカンドアルバム『Señales Sin Edad(永遠のサイン)』を紹介しました。このアルバムは初リリースから45年間眠り続け、2024年にやっとCD化を果たしています。そのため、プログレマニアの間でも知る人ぞ知る作品とも言われています。ホリゾンテはロックとアンデスの民族音楽を融合させるというアイデアを掲げて結成し、2枚のアルバムを残しています。そのうち2枚目の本アルバムは、セルジオ・ヴァイニコフのキーボードを多く活用し、ラテンのリズムを取り入れ、民族楽器を組み入れた南米プログレの傑作と多くの批評家から絶賛されています。しかし、リリースした1979年といえば南米もディスコやフュージョンといった音楽が流行し、実験的なプログレッシヴな音楽は淘汰されていった時代です。非常に完成度の高い作品だったにも関わらず、フォークロア色の強かった前作よりも売り上げが低かったのは、時代と共に聴き手が大きく変化してしまったからだろうと思います。彼らもまた1980年代初頭にその風を感じて解散の道に進むことになります。
さて、そんな彼らが残した本アルバムですが、レコーディング時にメンバーチェンジが行われています。その中でもヴォーカルのウーゴ・オジェダがパーカッションを兼任しているなど、リズムセクションの強化がうかがえますが、一番大きいのはキーボード奏者がアレハンドロ・ティスコルニアからセルジオ・ヴァイニコフに交代したことだと思います。ヴァイニコフが加入したことで、前作よりも良い意味でキーボード色の強いアレンジが多くなり、ストリングスシンセサイザーによるクラシックアレンジやエレクトリックピアノによるジャズアレンジなど、非常に多様性のある音楽に昇華しています。ジャズエッセンス的な要素はエスピリトゥやアルコ・イリスといったグループを彷彿とさせますが、フルートなどの木管楽器の使い方はどこか英国のキャメルを感じさせます。それでもフォークロックをベースにジャズ、ラテンのリズム、民族楽器によるアンデスの音楽を巧く取り入れ、これだけ魅惑的なサウンドに仕上げたのは、彼らのプログレッシヴな創造性の賜物です。ホリゾンテは1970年代のアルゼンチン・フォークロックシーンにおいて重要な財産だと思います。
ホントにここ最近になって、1970年代に活躍した南米プログレのアルバムの再発が活発化していますが、本アルバム以外でも埋もれている作品が数多くあるのでは?と思ってしまいます。そういう意味ではこれからまだまだ名作が出てくる可能性がありますね。
それではまたっ!





























































