今日のは
大寒卵だと言いながら
産みたての卵を持ってきたのは
縁起物を振る舞うのが好きな
森山という老爺だ。
もっとも寒いとされる
大寒の日に生まれた卵は
うまみが凝縮されて濃厚な味わいになり
昔から健康運や金運に繋がると
言われたものだ。
ウンチクを語りながら
冬の間は休むお寺カフェが始まるのを
心待ちにしている森山は
半蔵のお得意さまのひとり。
しんしんと
寒さが一日中続く日に
ありがたいのは火の回り。
囲炉裏の灰に埋めた
さつまいも、里芋、じゃがいもに
ほどよく火が入って
食べ頃になっているようだ。
お寺カフェが休みでも
参詣人や来客があれば
お茶をふるまい
囲炉裏端で出来た
オヤツを勧める。
囲炉裏はちょうどいいんですよ。
暖かさに集まって来る人たちへ
ひと休みしていただく。
それが寒い時期の
楽しみですからね
と、半蔵も抜かりがない。
付いた灰を吹き吹き
器用に皮を剥いて
きぬかつぎという
小さな里芋を頬張る森山は
塩を付けるのが好みだ。
いつのまにか
そばに座るふたごは
ちゃっかりと座って
さつまいもを
食べながら言う。
おじちゃんの
たまごさんは
オムレツになるんだよ、と
おしゃべりも達者だ。
灰から顔を出した
大きな芋を残して
小さな芋を手にして
皮ごと頬張っている。
さんざん
お兄ちゃんの邪魔をして
動き回ったようだから
お腹もすいただろうに。
ひと段落した勇太郎が
手を洗っているようだ。
お兄ちゃんの おいもさん
のこっているからね。
と、声をかけてから
二人で顔を見合わせる。
何も言わずとも
子どもたちは
分かっているのか。
ハイハイ
お夕飯はオムレツですね。
赤いご飯にしましょう。
と、半蔵が言えば
やったー!と笑う。
半蔵の目が
ことさら細くなって
いとまを告げる森山へ
手早く新聞紙に包んだ
里芋やジャガイモを持たせる。
懐にしまえば
温もりがあって
帰り道もあたたかい。
北風が強くなって
まだまだ冷える気配の
大寒の太陽は
心許ないほどに
小さく見える。
急ぎ足で
家路に向かう森山へ
見送るかのように
落ち葉がはらりと
宙に舞った。
