ぼくたちの

ししょうの半蔵たんは

オヤツをつくる めいじんなんだ。

にんじゃのおかしを

たくさんつくるんだよ。


15名ばかりの園児に混ざって

達者なクチで しゃべっているのは

ふたごの志恩と礼恩。


町の幼稚園からバスに揺られて

遠足にやって来るのは

山遊びはもちろん

半蔵のオヤツが目的だ。


午前中に

ふたごの先導で

山道を歩いて森を散策するのを

引率の先生たちも

毎回の楽しみにしていた。


さえずる野鳥の観察に始まり

野草や樹木のみならず

足元に咲く小さな花やシダ類

キノコや小さな花すら

園児たちは興味津々だ。


あれはなに?という

園児たちの呟きでも

後方を守る半蔵は聞き逃さない。

分かりやすくかみくだいた

優しい物言いに

先生たちも耳を傾けている。


小1時間ばかりの散策を終えると

早めのお昼ご飯は

それぞれが持参した弁当を広げ

そのあとは、広い本堂で

短い昼寝をする。


目が覚めれば

境内にある、半蔵の手作り

ブランコや砂場や

四方の木に網を張った

ジャングルジムが目につく。


自慢げな顔をしたふたごが

遊びかたを教えてやると

夢中になって遊びだす。


いくつか縁台を並べ

子どもたちの休憩所にし

半蔵と加寿子がオヤツを運び

引率の先生たちが手伝うのは

すっかりお馴染みになった。


ふたごが

忍者のお菓子と呼ぶ

窯焼きのシュークリームは

生地がぷっくりと膨らむ様子が

まるで、忍術を使ったように

見えたからだ。


たっぷりの生クリームと

カスタードクリームを

仕込んだシュークリーム。

そこへ、加寿子のお手製

甘酸っぱいコケモモのジャムを

かけて見た目も良い。


コケモモのジャムを

ぺろぺろ舐めてから

シュークリームにかぶりつく

ふたごの真似をして

子どもたちも次々に

小さな舌を見せながら頬張る。


甘みをつけた麦茶は

ふたごの好物だ。

園児たちも、自分の水筒のフタを

コップ代わりにすると

加寿子が注いで回った。



今日はよく歩きましたね

これはご褒美ですよ

と、紙袋に入った

小さなシュークリームの

お土産を手渡されると

園児たちも先生たちも

嬉しさに声を上げた。


ぼくたちの

半蔵たんはすごいんだ。

わかった?


ふたごの

得意満面を眺める加寿子が

志恩ちゃんと礼恩ちゃんのも

ちゃんとありますからね。


とたんに弾かれたように

加寿子へ駆け寄る様子を見て

半蔵が思わず笑った。


さぁて、あわてんぼうの

忍者は誰ですかねぇ。

帰りのバスにはまだ時間が

ありますからね。

鬼ごっこをして

つかまらなかった忍者には

シュークリームを、もひとつ

オマケしますよ。


子どもたちが歓声を上げて

いっせいに駆け出した。

どうやら鬼は

先生たちらしい。


楽しそうな

子どもたちの声に包まれて

山の中の寺は

ひとしきり賑やかさを増す。


すばしっこい ふたごの

ひときわ甲高い声が

ニンジャは

つかまらないんだ!と

叫んでいる。


小さな忍者たち

それは、幸せな顔をした

子どもの遊ぶ姿だと

半蔵はひとりごちた。