こんにちは。行政書士の名倉武之です。
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さて、パブリック・コメント(意見公募手続)
という言葉をお聞きになったことがあるかと思います。
パブリック・コメントとは、
「国の行政機関が政令や省令等を定めるにあたり、事前に案を公表し、国民からの意見・情報を募集する」行政手続のことを言います。
これは、
行政手続法 第39条(意見公募手続)
に基づく「法的義務」になります。
- 第39条第1項 命令等制定機関は、命令等を定めようとする場合には、当該命令等の案(命令等で定めようとする内容を示すものをいう。以下同じ。)及びこれに関連する資料をあらかじめ公示し、意見(情報を含む。以下同じ。)の提出先及び意見の提出のための期間(以下「意見提出期間」という。)を定めて広く一般の意見を求めなければならない。
このパブリック・コメントは、
e-Govパブリック・コメントにて確認できます。
ここを確認すると、どのような政令や省令等を定めようとしているか、幅広く行政機関の動きを知ることができます。
さて、このパブリック・コメントに、
2024年4月19日
が公示されました。これは、前回のブログ:日本の将来(世帯数の推計)とも関係があります。
このガイドライン案が公示された背景には、
・単身世帯を含めた高齢者世帯が増加
・高齢者を支援する民間事業者(以下、事業者)も増加
・利用者と事業者との間でトラブルを防止することが肝要
・一方、事業者を規定する法律はない
・そこで、関係機関で事業者向けのガイドラインを制定
という運びになりました。
ガイドライン(案)では、事業者のサービス内容を以下の3つに分類
身元保証等サービス
① 医療施設への入院の際の連帯保証
② 介護施設等への入所の際の連帯保証
③ 入院・入所、退院・退所時の手続の代行
④ 死亡又は退去時の身柄の引取り
⑤ 医療に係る意思決定の支援への関与
⑥ 緊急連絡先の指定の受託及び緊急時の対応
死後事務サービス
① 死亡の確認、関係者への連絡
② 死亡診断書(死体検案書)の請求受領、火葬許可の市区町村への申請、火葬許可証及び埋葬許可証の受領、死亡届申請 代行
③ 葬儀に関する事務
④ 火葬手続(火葬の申込み、火葬許可証の提示)に関する手続代行
⑤ 収蔵(納骨堂)、埋蔵(墓処)、永代供養に関する手続代行
⑥ 費用精算、病室等の整理、家財道具や遺品等の整理
⑦ 行政機関での手続関係(後期高齢者医療制度資格喪失届、 国民健康保険資格喪失届等)に関する代行
⑧ ライフラインの停止(公共料金(電気・ガス・水道)の解約、インターネット・Wi-Fi 等の解約、固定電話、携帯電話、NHK等の解約等)に関する手続代行
⑨ 残置物等の処理に関する手続代行(遺品目録の作成、相続人等への遺品・遺産の引渡し)
⑩ 墓地の管理や墓地の撤去に関する手続代行
日常生活支援サービス
1 生活支援関係
① 通院の送迎・付添い
② 買物への同行や購入物の配達、生活に必要な物品の購入
③ 日用品や家具の処分
④ 病院への入院や介護施設等への入所の際の移動(引っ越 し)及び家具類の移動・処分
⑤ 介護保険等のサービス受給手続の代行
2 財産管理関係
① 公共料金等の定期的な支出を要する費用の支払に関する手続代行
② 生活費等の管理、送金
③ 不動産、動産等の財産の保存、管理、売却等に関する手続代行
④ 預貯金の取引に関する事項
⑤ 金融商品の解約・換価・売却等の取引に関する手続代行
⑥ 印鑑、印鑑登録カード等の証書・重要書類の保管
⑦ 税金の申告・納税・還付請求・還付金の受領に関する手続代行
上記のように、事業者が各サービス内容を実施する上での留意点などが記載されています。
支援するサービス内容は多岐にわたりますが、「士業関係者(弁護士、司法書士、社会福祉士、行政書士等)」から見れば、特に目新しいサービス内容、留意点はないかと思います。
ガイドライン(案)では、上記のサービス内容を実施する上で、
「あらかじめ使用者には支援するサービス内容を明確に説明し、利用者との契約締結図ること」と、これも当たり前の内容が記載されています。
しかも、
利用者との間でトラブルが発生しないように
サービス内容等は「重要事項説明書」に
記載することが望ましい
とも書かれています。
これ、皆さんはどうお感じになられますか?
利用者は高齢者です
上記例示したサービス内容を見ても、内容が複雑。士業関係者ではない一般の方(しかも高齢者)から見て「どの手続きを、どのタイミングで実施し、実施費用はいくら」等、重要事項説明書に記載されていたとしても、
正確な理解と判断が可能か?
疑問です。
説明を受けても、専門的な用語、初めて聞いた用語の理解は難しいと思います。
最終的には、
重要事項説明書の内容に
合意し契約書に押印した
こちら(事業者)は
何の落ち度もありません!
になる恐れを感じます。結果、トラブル発生!
当事者間でトラブルを防止するためのガイドラインではなかったのか???
ガイドライン(案)には、ガイドラインの目的に、
『提供されるサービス内容等については、事業者と利用者の契約に基づき決定されるものであるが、本ガイドラインは、現時点において事業者が取り組むことが重要と考えられる事項等を取りまとめたものである。』※
と記載されています。
※『』書きの文言は、ガイドライン(案)P4より引用
事業者が高齢者支援を行うための指針・指標をガイドラインとして示すことは必要であり賛同いたしますが、
ガイドラインは示した!
あとは当事者間の契約の問題!
では話になりません。でも、このようになる恐れを感じます。
また、ガイドライン(案)には、
『高齢者等終身サポート事業者は、利用者との契約締結に当たって、民法で定められた契約の一般原則や消費者契約法に定められた消費者契約に幅広く適用される民事のルールに従う必要がある』※
と記載されています。
※『』書きの文言は、ガイドライン(案)P7より引用
そこで、
・事業者に騙された、詐欺にあった
・契約内容と違う
等とのトラブルにならないために、「契約締結行為や、契約に基づき問題なくサポートされているかのチェック(監視)を、法律に詳しい士業をはじめとする第三者に依頼する」という方法がありますが、これができるのは、
「すべての高齢者ではありません」
第三者がボランティアで無償で関わるというケースもありますが、
士業が個別に関わる場合には「有償サポート」が想定されます。
例えば、日々の生活だけで精一杯という高齢者の方の場合、生活を切り詰めてまで、果たして有償サポートを依頼するでしょうか?(有償でも負担にならないよう、金額や支払方法の工夫は考えられますが)
何らかの対価に基づき「業として有償でサポート」することを考えなければ、ボランティア活動だけでは限界があるということも理解できます。
なぜならば、今後、益々、少子化が進み、高齢者世帯が増加すると推計されているからです。
・サービスを受けられるのは一部の高齢者のみ
・事業者に騙されるリスクもある
・契約通りのサービスを受けられるのか?
・安心して任せられるのか?
では、絵に描いた餅になり、描いた理想の高齢者支援の実現は困難です。
すべての高齢者が、
安心して任せられる、託せる
と言えるような高齢者支援を実現するには、民間の事業者支援だけではなく、
地域・コミュニティをベースとした高齢者支援事業の必要性を感じます。
先日、NHKのニュース(2024年4月24日 16時09分)において、
民間組織「人口戦略会議」が、
全体の4割にあたる744の自治体で
2050年までに
20代から30代の女性が半減し
「最終的には消滅する可能性がある」
とした分析を公表(※)
との記事を見ました(※の文言は当該ニュースの記事を引用)。
4割の自治体が消滅とはインパクトがありましたが、これは推計です。
将来は変わる、変えられる可能性があります。(例)この自治体、地域・コミュニティは高齢者支援サービスが充実しており、単身高齢者世帯でも安心して暮らせる。また、自然に恵まれて子育てしやすい環境で、子育て支援も充実している。
となれば、<今すぐ、または、将来は〇〇に定住したい>と人が集まる可能性もあります。
そして、高齢者サービスが充実すれば、高齢者を支える人々も集まります。
人々が集まれば街は活性化します。
魅力ある地域・コミュニティを実現するにはどうすればよいか?
一人ひとりが考え、同じ志をもった仲間が集まれば、一人では難しいことも実現できる可能性があります。
法律に携わる一士業者として、地域・コミュニティ(行政、自治会・町内会などを含む)に対して、何らかのアイデア提案ができればと思う次第です。