「IL TEATRINO DA SALONE(イル・テアトリーノ・ダ・サローネ)」(☆☆☆)
http://www.ilteatrino.jp/
「サローネドゥエミッレセッテ」
の樋口シェフが平シェフと西島君を連れて青山に凱旋を果たしました。
シチリアのエッセンスで素材の味と香りを昇華させた樋口流伝統芸能に、嫋やかな西島君のカウンターでの接客、派手な平シェフの個室での接客、サローネグループで初めてのパティシエの採用が折り重ねられます。
階段を降りたときから始まるアバンギャルドさ、カウンターの光の美しさは平シェフのセンス、素晴らしき皿の数々は樋口シェフのセンス。二人のシェフによる新しいサローネはまた新しい始まりの時を見せています。
住所:港区南青山7-11-5 HOUSE7115 B1F
電話:03-3400-5077
定休:日曜、第1・3月曜
営業:18時~23時(20時LO)
高樹町の交差点から歩いてすぐの場所にあります。
ビル1階に専用の入り口。黒塗りの竹を並べ金色のプレートがあり、階段が下へと続いています。
地下1階にはフロアがあります。白いソファが左に。天井にはつり下げられた照明。そして真正面にデザインされた女性のイラストが。かなりアバンギャルド。樋口シェフに聞いたところでは藤巻さんに内緒で平シェフが独断でそのセンスのままに作ったようです(笑)。
お店自体の入り口は右に。レセプションのスペースを越えてスライドする思いガラス扉を開けて中へ。
そこは上品な木のカウンターしかないダイニング。グラスが並ぶガラス棚が背もたれ側にあります。
席は白い個人用ソファ。
カウンターの上には金色のプレートです。名前が刻印され、丸い穴が空いたプレートにカトラリー。これが秀逸のアイディア。
照明がカウンター上にダウンライトで辺り、金色の模様が反射されて天井に映し出されているのです。皿がのればまたそれが模様になります。
カウンター内では西島君が自分の場所を得て手慣れた接客。樋口シェフも時間を作って料理やイタリアの話などをしに来てくださいます。
ちなみにカウンターがクローズアップされますが、実は個室が一つあり、来店2回目以降はそちらを使うことができるとのこと。そちらの接客はなんと平シェフが自らされるそうです。
最初が今年のダージリンファーストフラッシュ。サングマ茶園の茶葉。癖がなくさっぱりした口当たりで清涼感があります。柔らかな花のよう。
次は今年のセカンドフラッシュ。濃いめに入れてしっかりしたタンニンを感じる味わい。ファーストフラッシュとオータムナルの良いところを取った感じ。紅茶らしくて好きな味です。
最後に昨年のオータムナルです。
8500円
コースは1本のみ。1ヶ月半くらいで変わるそうです。
最初に樋口シェフ自ら供してくれたのは陶器の皿に焼きたてのパン。シチリアの塩とオリーブオイルを味わって欲しいとの主旨。エキストラバージンオイルはもちろんフラントイア。
小麦粉の配分はサローネと同じ。イーストの発酵時間などをいじっているのだそうで。表面香ばしく熱々。まずはその焼きたての小麦とオイルの香りがよい。塩が美味しくなれた香りで親しみがあります。
3 Piattini)
前菜は3品。
鮪のタルターラ
グラスでの提供。メインは塩を振り水を出してハムのようにした鮪の赤身。
その下には表面を黒くなるまで焼いた茄子。その皮を抜いて中のとろける部分だけ。
上にはザックリした食感のウイキョウにエストラゴンやディルなどのハーブミストのせています。
スプーンでいただくのですが、これがもう香りをすくって食べているかのようです。タルタルは白トリュフオイルで香りづけされ、トマトの旨味がさらに付加されていました。白トリュフに香ばしい茄子、ハーブの香りが口の中に広がり、混ぜて食べるとそれがまた渾然一体となって味わいに昇華されます。
素晴らしいひと皿。
蛸のインウミド
次は金縁の青いガラスの皿で。サローネとは食器にもこだわりの違いを感じます。8席だからこそできるのでしょうか。
日本の桜煮と違い、パレルモの市場でやっていたタコの茹で方を現代風に再現。現地では小さなガスコンロで巨大な鍋を茹でるのだそうです。その温度が65度くらいになるのだとか。同じようになるよう低温調理で蛸を65度で3時間茹でたそうです。これに魚のブロードを加えたじゃがいものピューレと和えています。
これもタコの香りが皿から流れ出しますね~。
タコの弾力がとても好ましく、その香りが移ったジャガイモのピュレもとても旨味が濃い。
上にはイタリアンパセリ。フラントイアもやはりかけられていました。
食べてしばらく口にタコの旨味が残ります。
ハンバーガーのようなひと品。
シチリアのパンに見立てたシューです。ホロホロと崩れるサクサクのシューには白ごまがたっぷり。
中にはバッカラを牛乳とニンニクとオリーブオイルで煮て柔らかくほぐし、ジンジャー、シナモン、ローリエで香りづけしています。その上には黒オリーブ、刻んだセロリ、ラルドです。
Pesce)青柳とクスクスのインサラータ
火を加えずに素材の味を上品に重ね合わせたひと皿。
樋口シェフがシチリアで蛤を生で食べた経験から作ったものだそう。
新鮮で美味しい青柳、ザックリした食感のさいの目状に切られたウイキョウ、クスクス、唯一脂分を感じる松の実、そして柑橘系の爽やかな香りと甘みを感じさせるオレンジ。そして底には旨味あるトマトのピュレ。どれもがしっかりと自分の特徴を味として発揮しています。
上にはバジル、ミント、セロリの葉の千切りです。爽やかな仕上がりのこのソースにはぴったりの組み合わせでした。
2つめのパンはより厚みがあります。ふっくらしたパンで発酵時間が違うとのこと。天然酵母なども現在試しているので、そのうちに結果が出るかもしれません。
Piccola Degustazione di Pasta)
グラミーニャ 白身魚のラグーとケッパーペースト
ここでお皿が変更。派手好きな平シェフらしい黒い燦めく皿に模様も美しいダークブラウンの艶やかな布。この布、個室のテーブルクロスと同じだそうです。
グラミーニャは牧草という意味。エミリア・ロマーニャのショートパスタらしいのですが、くるんとカールしたものがネット上では多いけど、ここではキタッラの短いものといった感じ。パスタマシーンの設定をうどんサイズにしたのだとか。
今回は黒鯛のスープを取り、その身を入れて煮詰めたラグー。ここにシチリアの塩漬けケッパーを塩抜きしてパセリを加えてペーストにして加えているとのこと。まるで海苔のような感じ。そうでなければならないと樋口シェフは力説されていました。これが魚の旨味たっぷり。ここに皮をむいたアーモンドです。この香り使いも好みですね~。
ああ、この味、根底に流れる美味さは樋口シェフならではのものです。ここまで来た甲斐がありました。
小さなかかとという意味のパスタ、タッコーニ。平たく伸ばしたパスタ生地をザックリ切った南イタリアのパスタです。これがソースをしっかりのせてきますよ~。
ソースは仔牛のスネ肉白ワインと野菜と一緒に煮込んだソースで。いつもながらのたっぷりの旨味。
下には花ズッキーニのソテー。砕いた黒胡椒を振りかけ、上には塩気の強いリコッタサラータ、周辺には削ったペコリーノです。スパイシーな口当たりでチーズがとても香ります。
Pietanza)仔羊のストゥファート
ストゥーファとはイタリア語のストーブのこと。玉ねぎ、ローズマリー、トマトと煮込むこの料理ですが、80度くらいで部位ごとに最適の時間別々に低温調理してあわせたものだそうです。仔羊の背肉、ロース、モモ肉などが混ざり、ゼラチン状の弾力ある部位もありました。臭みはなく羊とは思えない肉の仕上がり。トロトロだったり、肉らしくあったりと美味しい。上にはタイムと胡桃。
手前には柑橘系の香りと苦みのあるレモンのジャム。
奥には野菜のペーストをパン粉でつないだクッキーのような付け合わせ。
Formaggi Misto)チーズの8クッキアイーニ +2000円
これは実はコース外です。デザートの前に供されました。ガラスの皿に8本のスプーン。すべてが一口でいただけます。それぞれ凝りに凝ったチーズと添え物の組み合わせ。
左からペコリーノ ディ フォッサとマンダリンのモスタルダ。
ブルー デル ティローロ ヴィナッチャとバルサミコのコンディメント。添加物を加えず若くして味わう高いクオリティのバルサミコのコンディメントに葡萄の絞りかすを貼り付けて熟成させた青カビチーズの強い味わいのブルーデルティローロです。
ラグサーノとサボテンのジャム。もさっとした食感のラグサーノチーズに軽い柑橘系を感じさせるサボテンの花のハチミツ。
タレッジョと黒胡椒オリーブオイル。まずオリーブオイルの香りが口の中に広がり、その後に黒胡椒の辛みがスパイシーに響きます。柔らかな印象のタレッジョにはこういう強いものがよいのかも。
リコッタサラータとオレンジの花のハチミツ。塩気の強いリコッタサラータとほとんど砂糖であろうというオレンジの花のハチミツが合います。
フロマージュブランとトライトマトとバジリコ。最初にいただいたのが実はこれです。サローネでもおなじみ、プチダノンのような柔らかな口当たりの山羊のチーズ、ルーラルカプリ牧場のフロマージュブランに自家製のドライトマトとバジルの葉を合わせることでカプレーゼを意識させる味わいに。
ゴルコンゾーラ ピッカンテと林檎のカンティーティ。林檎のカンティーティはザクザクした食感の林檎で甘く、ゴルゴンゾーラピッカンテは逆に辛みを感じる強い香り。
クレモーゾ ディ ブッファラとピスタチオ。ミルクのコクがあるとろける白カビチーズのクレモーゾティブッファラに香りよいピスタチオ。シンプルによい組み合わせでした。
「サローネ」のチーズの集大成のような出来映えです。これはここに来たら一度は食べて欲しいひと皿ですね。
Dolce)クレマコッタとインパナート ギアッチャート
これもガラスの皿に。手前には砂糖で描かれた店のロゴと店名。
左にはパン粉に包まれたセミフレッド。その手前に甘くて酸っぱい桃と苺にミントです。
奥はキャラメリゼしたヘーゼルナッツ。周辺に散らされているのはオレンジピールです。
メインのクレマコッタは半分凍らせたムースのようなデザートです。ブラッドオレンジベースでしたでしょうか。上には
デザートは樋口シェフではなく、サローネの系列初のパティシエによるものだとのこと。
Espresso
食後の小菓子はタルトのパローネ。洋なしとアプリコットを塗っているそうです。
2つあり、最初は出された直後の冷たい状態で、次は冷たさがとれたところで食べます。
樋口シェフの根底に流れる激旨の伝統芸能を最初から最後まで味わい尽くすことができました。
立ち位置を得た西島君も生き生きとしています。
次に訪れることができるのはいつでしょう?
IL TEATRINO DA SALONE
(イタリアン
/ 広尾駅
、表参道駅
)
★★★★★
5.0