巷でも話題になっている電子制御マフラーについて、個人的な考えを話してみたいと思う。
4輪の世界では当たり前のようになってきている電子制御の交換用マフラーであるが、最初これを知ったのはジキル&ハイドというメーカーのハーレー用マフラーだった。
ジキル&ハイドは欧州の電子制御マフラーシェア№1のメーカーで、ハーレー、トライアンフ、BMW、インディアンなどに対応したマフラーを販売しているが、今のところ日本で取り付けられるのはハーレー系のディーラーであることから車種は限られると思う。
このマフラー何が人気なのかと言うと、マフラーの音を手元の電子ボタンで3段階に変えれるのだ。
メーカーはドクタージキルモード・ダイナミックモード・ミスターハイドモードと呼んでいるが、ジキルモードは静かでノーマル並み、そしてダイナミック、ハイドモードになっていくと歯切れの良い重低音の効いたハーレーらしい音になっていく。
これはマフラー内に仕掛けられた可変バルブが開閉することでガスの抜けを調整し音が変化するようになっているからだ。
そしてこれ、なんと車検に通るJMCA認定の合法マフラーなのだ。
メーカーのサンプルサウンドを聞いてみるとハイドモードは少し疑問である。
ハイドモードのサウンド♪ ※音量に注意
これで合法ならハーレー乗りはハイドモードだけでいいのではないだろうか。
またハイドモードはバッフルを外したのと同じで、普通に考えれば爆音に近くなるはずだ。
どう聞いても車検には通らないような音をしているのだが、そこには巧妙なカラクリがあるようだ。
知っての通りバイクの騒音規制値は平成22年生産車から近接排気騒音に加えて加速走行騒音もパスしないと車検には通らなくなってきた。
近接排気騒音は車検で実際に検査するものだが、加速走行騒音はマフラーメーカーが事前に認定機関で検査を受け、承認を得た証明書を提示することになっている。
近接排気騒音の測定はニュートラルにギアを入れてアクセルを回して検査するが、ジキル&ハイドのマフラーは最初ニュートラルの状態だと自動的にジキルモード(可変バルブ全閉)になるようで、車検場で計測しても大丈夫なようになっている。
また認定機関で行われる加速走行騒音の測定では(車種によって速度は違うのだが)50キロ近くで走ってきて20メートルの間にフルスロットルをして計測するのだが、ジキル&ハイドはその特定の条件下でジキルモードになるように設計されているのではないかと思われる。
つまり悪い言い方をすると、うまく法の穴をすり抜けていると言えるのではないだろうか。
音を重視するバイク乗りからすると車検は通るしイイ音だし、みんなこれにしたいとおもうのだが、YouTubeでハンバーグ師匠が交換した例では60万以上していて、簡単に出せる金額ではない。
なぜこのように高額なのかは、このマフラーの仕組みを考えればわかってくる。
ジキル&ハイドはマフラー単体売りはしておらず、コンピュータと取付作業がセットになっている。
可変バルブでガスの抜けが変わるので、モードによってマップの入れ替えが必要になってくる。
そういった燃調マップの調整費用まで含まれているのだ。
またそれをすることによって、排圧調整も電子制御されるので、取付前後でまったく別のバイクになってしまうほどパフォーマンスが向上する。
つまり高額なのはマフラー単体だけではなくコンピュータ制御込みのマフラーシステムの購入価格であるからだ。
まだ高額であるがゆえに電子制御マフラーの普及率は少ないと言える。
しかし安価で提供されるようになると、車検の審査をクリアすることを目的にした爆音電子制御マフラーが増えるようになるかもしれない。
そもそも法の目的はバイクの騒音を少なくするためなのに、このような商品を作るメーカーも付けて乗る側もモラルを問われるとことにならないだろうか。
もしVITPILEN701にこのような電子制御マフラーがあったら付けるかと聞かれると、すぐには答えられない自分がいる。
還暦を過ぎたいいオジサンがこどもたちに大人げない姿を見せられないし、先輩ライダーとして見本にならなければならない立場であることを意識した立ち振る舞いが必要じゃないかと思う、今日この頃である。