しまじろうの「はみがきソング」に合わせて、アゴがはずれんばかりに「あー」のお口をする薄毛ちゃん。


本番でもそのくらいの大きなお口をしてくれればパーフェクトなんだがな。頼むよ。


さて、わが家の寝室では、薄毛ちゃんとかーちゃんはダブルサイズのマニフレックス で、とおちゃんはセミダブルのベッドで寝ている。薄毛ちゃんが夜中に起きても、とおちゃんになるべく起きて欲しくない、仕事に差し支えることがないようにというかーちゃんの配慮からそうしている。


ところが先日、かーちゃんが、家族みんなが同じ目線で寝たいと言い出した。とおちゃんだけ高い所で寝ているのが家族っぽくない、薄毛ちゃんは離乳後に夜中に起きなくなったので、隣に寝てもとおちゃんを起こすこともないだろうということである。


確かにその通りだ。川の字で寝るのが日本の家族の正しいあり方であることに異論は無い。


夜中にふと目をさますと、隣に薄毛のわが子が小さい寝息をたてて眠っている。その向こう側には髪を振り乱して眠りこけているわが妻ことかーちゃんが、時々フガッとか言わせながらもぞもぞしている。あー、なんて私たちは幸せな家族なんだろう、そんな感じを味わうのもいいかもしれない。


ということで、さっそく布団をもう一枚出して、3人で川の字で寝ることにした。


薄毛ちゃんは夜中に起きることはないものの、フゴフゴと寝言を言ったり、ゴロゴロと寝相が悪いものだから、とおちゃんはそのたびに目が覚めた。というか、隣に小さい人が寝ているプレッシャーでとおちゃんが過敏になっていると言った方がいい。手が当たったらいけない、寒くないように布団をかけてあげないといけない、ケリをくらわないように注意しないといけないなど、1歳3ヶ月の子の存在感がとおちゃんに緊張感を与えているようである。


しかし、まあそれはそれで心地よい緊張感であり、家族一体感は何にも変えがたい喜びではある。


そんなことで、しばらくこのスタイルで行こうと決めたある夜。この夜は、諸事情で真ん中にとおちゃんが寝るという「変形川の字」で寝ることになった。(諸事情とは、説明すると長くなのるで省略しただけで、よい子のみんなに説明できない事情があったわけではない。念のため)


例によって夜中に何度も起きる。寝返りを打つたびに薄毛ちゃんの方に転がらないように気をつけている自分がいるらしく、そのたびに目を覚ました。そして何度目かの寝返りの拍子に、妙な感触のものをつかんだ。


一瞬、あ、いかん、薄毛ちゃんの頭をつかんだかと思ったものの、手のひらをグーパーしてみると、からみつく髪の毛の質感が重い。夏の草ボーボーの原っぱに手を突っ込んだような感覚だ。ちがうぞ、これは薄毛ではない。ではなんだ?!そうだ、隣はかーちゃんだった、これは剛毛だと気づくまでに数秒かかった。


そう、薄毛ちゃんとは反対側に寝返りを打ち、かーちゃんの頭に手を突っ込んだのだった。


寝返りという生理現象が引き起こす被害を考えた時、妻と子のどちらを犠牲にするかという究極の判断を無意識に行ったにしてはあっぱれな結果に、とおちゃんは自らを誉めたくなった(笑)えらいぞ、自分。


しばらく、わが妻ことかーちゃんの脳天の髪の密集感を楽しんだ後(かーちゃんは起きなかった)、わが子はどうしているかと反対側を見れば、頭を向こう側に押し付けて、とおちゃんの手の届かないところで寝ていた。


とおちゃんを信用せず、危険を察知し回避行動を取ったらしい。さすがはわが子だ。えらいぞ(笑)


そんな川の字スタイル、とおちゃんは気に入っていたのだが、かーちゃんがとおちゃんの寝姿があまりに窮屈そうにしていて、とても気の毒になったとのことで、昨日からベッドで寝るように言われた。


おかげで昨晩はよく眠れたよ。