ハプニング連鎖ツアー 10 | 添乗員のゆく地球の旅!

添乗員のゆく地球の旅!

メキシコ滞在とひとり旅とツアー添乗中に起こった体験話&
 首のくびれた保護犬・黒豆柴まるちゃんとの愉快な日常

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先ほど出発した他日本人ツアーバスに乗るはずだったのに、おいて行かれてしまった中年の男性、一方30分も前からどこに居るのかと気にかけているにもかかわらず姿の見えないひとみおばあちゃん。

「まさか、そんな訳はないよね?」

私だけでなく現地ガイドも同時に頭に浮かんだその考えを、打ち消すかのように二人してそう呟きました。

「あちらのツアーだってうちと同じような日程のはずでしょ。もう今日は出発日だというのに、まさか知らないお客さんが乗っていても気が付かないなんてこと考えられない」

「それに、あちらのガイドも添乗員も時々見掛けるベテランだよ」

現地ガイドも、真剣な顔をして私の考えに同意しました。

とは言え、ひとみおばあちゃんが見付からないのも事実。

そこで、ホテルに頼んで他ツアーのガイドか添乗員に連絡を試みてもらうことにしました。ホテルであればどちらかの連絡先を知っている可能性があったからですが、残念なことに個人で持っている携帯電話の番号はわからず、仕方がないので現地の手配会社へ連絡し、そちらからコンタクトを取ってもらうように要請しました。

「お願い、急ぐように言ってくださいね。こちらには重病人が居て病院へ搬送しなければならないんです!」

5分ほど待って、ホテルに電話が入りました。

「添乗員さんへ、あちらの添乗員からです」

受話器を受け取ると、事務的な口調が聞こえてきました。

「もしもし、どうかされたのですか?」

事の重大さが未だわかってないからこその、事務的で面倒くさそうな声なのでしょう。

「いや、あの、まだ会社から何も聞いておられませんか?」

「何だか積み残し(聞こえは悪いのですが、業界用語で「お客さんや荷物を乗せ忘れた」ことをこう言います)がどうとか聞いたんですけど、うちは数え直しても人数揃っていますよ」

意外と呑気な添乗員さんです。

「そちらに○○さんという男性一人参加のお客さん、おられますよね?」

少し考えて

「あ……はい、○○さんはうちのお客さんですね」

鈍いとしか言いようがない。

「ここに居られますけど。つまり積み残しです」

「……え!?」

「もしかしたら代わりにうちのお客様がお一人紛れているかもしれないんです。お名前をお伝えしますので、その方がおられるかどうか、車内で聞いて頂けますか?」

「え? え? 本当ですか? ちょっと待っててください!」

そのまま電話を切らずに1分ほど待っていると

「ひとみさん、居られました……」

力ない返答が。ああ、やっぱり。

車内であちらの添乗員が、ひとみさんはおられますか、別のバスと間違っていませんか、と尋ねても、ひとみおばあちゃん本人はそれでも気が付かず、その隣に座っていたお客さんが、そういえば見掛けたことがない方だなと思っていたのだけど、この人ではないかしらと言ってくれたことで、ようやくひとみおばあちゃんが乗っていたことが判明したのだそうです。

「顔で分からなかったんですか?」

あちらの添乗員さんに尋ねると

「うちのバス、人数が多くて1席しか余ってないから、1席空いてるのを確認して出発したんです」

と悪びれた様子もなく返事が返って来ました。添乗員の常識ではもちろん空席を数えるというのは最もやってはならないことのひとつなのですが。(普通は必ずお客さんの顔を確認しながら人数をカウントします)

それはさておき、次は互いのお客さんを交換して、二ノ宮おじいちゃんをできるだけ早く病院へ送り届ける手段を考えねばなりません。この間にすでに時間は出発予定時間を30分過ぎて午前9時になっていました。


☆ つづく ☆

コメントのお返事書けなくてすみません。まだしばらく時間の余裕がないので、ご訪問に換えさせて頂きます(^人^)