ハプニング連鎖ツアー 5 | 添乗員のゆく地球の旅!

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メキシコ滞在とひとり旅とツアー添乗中に起こった体験話&
 首のくびれた保護犬・黒豆柴まるちゃんとの愉快な日常

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ひとみおばあちゃんの行方が未だつかめないで頭を抱えている私に、二ノ宮のおじいちゃんが軽い笑顔を浮かべて体調の異変を訴えてきました。

「体がよろけるって……何か心当たりはありますか?」

内心、これ以上問題が重なるのは勘弁してほしいと思いました。

「二ノ宮さん、お酒飲んだせいだろ? 酔っ払ってるんじゃないの?」

二ノ宮おじいちゃんが返事をする前に、横から三平おじいちゃんがそう言うと、他のお客さんもくすくす笑いました。

「まあ、確かに日本から持ってきた日本酒をちょこちょこ飲んでんだけどさあ」

本人はみんなの笑いを誘ったことに悪い気はしないようで、照れ笑いを浮かべてそう告白しました。それを聞いてちょっと安心した私は、それでは少し様子を見てみましょうと声をかけて、それから今後のことについて現地ガイドと相談を始めました。そして、後10分だけこの場で待とうということになりました。

私たちのバスが停めてある場所までは少し離れているため、後10分待ってもひとみおばあちゃんが見付からなかった場合は、私だけがこの場に残ってお客さんたちはガイドにバスへと誘導して貰うことにしたのです。そこで、後10分を私は土産屋や食堂のあるエリアに集中して捜索することにしました。

集合場所はその土産屋などのあるエリア内でしたので、他のお客さんたちもお店を見ながら待っていてくれて、誰も文句を言う人は今のところいませんでした。むしろ、ひとみおばあちゃんの無事を願って誰もが労いの言葉をかけてくれるような感じでした。

さて、後10分という時間の制限がついて少し焦りながらも土産屋の中を覗いて回る私に、突然現地の男性が声をかけてきました。片言の英語でこっちに来い、日本人がずっと居るが大丈夫かと必死に訴えてくるのです。その彼に気おされ、促されて土産屋の奥にある小さな食堂へと入ると

「ひとみおばあちゃん!」

捜索対象人物が椅子に腰かけてジュースを飲んでいるではありませんか。

私の呼び声に気付いて振り向いたひとみおばあちゃんは、私を見て一瞬驚愕した表情をしたものの、急いで時計を見て

「あら、まだ集合時間まで20分ありますよね……?!」

と懇願するように尋ねました。この時、私はなぜひとみおばあちゃんの取ったメモを確認しなかったのだろうかと深く後悔しました。つまり、集合時間を1時間間違えてメモしてしまったようなのです。

必死で謝るひとみおばあちゃんを慰めながら、とにもかくにも事故や病気ではなく無事に見付かったことで心の底から安心し、二人で集合場所に戻りました。他のお客さんも多くは笑顔で「良かったね」と弾んだ声で温かく迎えてくれました。

危ういところで一件落着してほっとし、逆に全員の雰囲気は穏やかなものとなり、現地ガイドの引率でバスの駐車場まで歩き始めた一行。すると私の近くを歩いていた二ノ宮おじいちゃんが再度訴えてきました。

「ねえ、ローランさん、見てくれる? 酔っているにしても何だか変なんだよ、俺。ほら」

立ち止まって真っ直ぐ立とうとする二ノ宮おじいちゃん。ところが。

「ねえ、勝手に体が左側によろけちゃうんだ。それに何だか食欲もない。悪酔いしたにしても変だよな」

しかし、そう言われてもそれがどういう症状なのかが飲みこめないで困ってしまった私。ホテルに着いたら医者に診てもらいましょうかと尋ねても、言葉が分からないからと固辞する二ノ宮おじいちゃん。とりあえずはバスで休んでもらいながらホテルへと向かうことにしました。

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